SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

MARCIN WASILEWSKI TRIO 「January」

2009年03月04日 | Piano/keyboard

この一週間はほとんど家にいなかった。
週の前半は岩手まで出かけていたのだが、片道だけでも優に半日は列車に揺られていた。
以前は長時間列車に乗っているのが苦痛だった。じっとしているのが耐えられなかったからだ。
しかし今は違う。それなりに楽しめるようになってきた。
好きな本を取り出してはそれを読み、眠くなったら寝る。駅弁も楽しみの一つだし、iPodを聴きながら移りゆく外の景色をぼんやり眺めるのもいいものだ。

出かけるときは秋田経由で岩手県に入った。
秋田までは海が見える景色が続く。私はiPodの中から最近手に入れたこのアルバムを選びスタートボタンを押した。確か鳥海山の麓に差しかかった頃だったと思う。
マルチン・ヴォシレフスキーの何とも静かで穏やかでピアノが、海沿いのひなびた風景によくマッチしていた。
彼のピアノはキース・ジャレットから灰汁を取ったような清々しさだ。
或いはトルド・グスタフセンのピアノをちょっと暖めたような優しさだ。
若いのにとても才能のあるポーランド人だと思う。
事実彼が参加しているアルバムはどれもこれも水準以上の出来に仕上がっている。
トーマス・スタンコのアルバム然り、シンプル・アコースティック・トリオ然りである。
彼が出す音には、メロディやテクニック等を超えた不思議な「想い」が入り込んでいる。
上手くいえないが、何か心の奥底から沸き上がってくるような感情が彼の指に伝わって、それが音をつくり出しているような感じさえするのである。
それがECMの魅力なんだよ、といわれればそれまでだが、もしそうだとしたら、これはECMの中でも最高の作品と言っていいかもしれない。

遠くまで来たという感覚と、これから大勢の知らない人たちと会うという期待とが入り乱れて、このアルバムの印象はますます強くなっていく。
これだから一人旅はやめられない。