SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

ART TATUM & BEN WEBSTER 「ART TATUM / BEN WEBSTER」

2009年01月23日 | Tenor Saxophone

死ぬほど好きな一枚である。
アート・テイタムのイントロを聴いただけでぞくぞくする。
曲のほぼ半ばまでリラックスしたピアノトリオの演奏が続き、満を持したかのようにベン・ウェブスターのテナーが登場する。
この瞬間は、何度聴いても「ジャズが好きでよかった~」と思える瞬間だ。

この作品は、饒舌だがきらめくような輝きに満ちたテイタムのピアノと、とてつもなく大きな優しさに包まれたウェブスターのテナーの対比が一番の聴きものだ。
まるで風に揺れる大木の周りを小鳥たちがさえずりながら飛び回っているかのようだ。
テイタムのピアノはハイスピードの装飾音が多く、それだけを聴いているとやや単調にも感じてしまうのだが、ここにウェブスターのテナーが被ってくると、とてもいい具合に中和されていく。
このへんのコンビネーションが絶妙なのだ。まさにジャズの醍醐味がこれである。
ジャズピアノの父といわれたテイタムはこれまでソロピアノを演じる機会が多かったが、亡くなる間際にこうした見事なコラボレーションの妙技を残してくれたことは、私たちリスナーへの何物にも代え難い贈り物となった。

この二人の巨人の影で目立たないが、レッド・カレンダー(b)と、ビル・ダグラス(ds)の堅実なサポートも忘れることができない。
カレンダーのベースは思ったよりも強靱で全体を引き締める役目を果たしているし、ダグラスは終始優しいブラシでムードを高めてくれている。
曲はというと、どの曲もみんな味があって素敵なのだが、私は「My One and Only Love」が、インタープレイの極致のように思える。
メロディラインの美しさもさることながら、余裕たっぷりのアドリヴラインがたまらなく粋だ。
もう、何度でもいう、死ぬほど好きな一枚だ。