SENTIMENTAL JAZZ DIARY

感傷的ジャズ日記 ~私のアルバムコレクションから~

J.J.JOHNSON 「DIAL J.J.5」

2007年12月01日 | Trombone

全体にバランスのいい作品だといえる。
J.J.ジョンソンは、オレが主役だからといって決して大いばりしない。トロンボーンという楽器のせいかもしれないが、彼はむしろ他のメンバーの良さを引き立て完成度の高い作品に仕上げているのだ。
私が特に好きなのは5曲目「BLUE HAZE」以降の曲の配置である。
「BLUE HAZE」はマイルス・デイヴィスの作品で、いかにもマイルスらしいハードボイルドな仕上がりになっている。
J.Jはマイルスの替わりにトロンボーンを吹く。彼のトロンボーンがトランペットのように聞こえるのは彼の技量の高さもさることながら、トロンボーンをテナーと対等に渡り合えるクールな楽器にしたかったからだと思う。ここでの演奏を聴くとそれは見事に達成されていることがわかる。
しかし私は続く「LOVE IS HERE TO STAY」の音を聴いて安心する。トロンボーンがトロンボーンらしい音色で優しく響いているからだ。彼は挑戦的である反面、こういう歌心を忘れない人なのだ。
続く「SO SORRY PLEASE」はJ.J.抜きのピアノトリオになっている。このトリオを聴くことができるのもこのアルバムのもう一つの楽しみである。メンバーはトミー・フラナガン、ウィルバー・リトル、エルヴィン・ジョーンズだ。そう、この作品を録り終えたすぐ後にトミフラの名作「オーバー・シーズ」が生まれたのである。このトリオがリズム・セクションを形成しているのだからこの「DIAL J.J.5」が悪かろうはずがないのである。
そして続く「IT COULD HAPPEN TO YOU」では、これまたJ.J.抜きでボビー・ジャスパーのフルートが全編に渡ってフューチャーされている。トミフラの軽快なピアノに乗ったこのフルートの美しさはどうだ。思わずため息が出る。
そして「BIRD SONG」とラストの「OLD DEVIL MOON」になだれ込む。
ここでJ.J.が本領を発揮。「OLD DEVIL MOON」なんかは正にJ.J.のために書かれたようなメロディだと思わずにはいられない。彼にしか出せない音が確実にここに収録されている。

ジャズ通にはトロンボーンファンが多い。ニューオーリンズ時代からの花形だからだ。
しかしモダンジャズの時代になって急速にその出番が少なくなっていった。その理由を書いていると長くなるのでやめるが、J.J.はトロンボーンがモダンジャズの世界にもちゃんと通用する楽器であることを証明してくれた。彼の功績はとてつもなく大きい。


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