ぶーくん読書録

今まで読んできた本について、いろいろ書いてみる。
ほとんど、ネタバレ!!

孤島の鬼 江戸川 乱歩

2009年10月23日 | 江戸川 乱歩
1987年
創元推理文庫
☆☆☆



最近、大乱歩展を見に行って、乱歩熱が再燃した。
そこで、読み返すことにした。そうなると、やはり孤島の鬼からでしょう。

蓑浦には、初代という恋人がいて、お互い結婚の約束も交わしていた。
ところが、そのころになり蓑浦の友人である諸戸道雄が好条件での求婚を初代はじめる。
初代はもともと、捨て子であるので、初代の養母は条件のよい諸戸との結婚を勧めようとしていた。
そんなある日、初代は何者かに殺害される。

蓑浦は、恋人を殺害した犯人を捜すため、
友人であり素人探偵でもある深山木幸吉に調査を依頼するが、
この深山木も何者かに殺害されるのだ。
しかし、この深山木はとある手記を残してくれたのだった。

先の求婚の話で、仲違いしていた諸戸とも和解し諸戸とともに、
この事件の謎を解くことになる。

そして、深山木が残してくれた手記には
ある島での、不思議な話が書かれ、さらにはその島について諸戸が関係していた為、二人でその島へ行く事になる。

人間の憎悪の極限と対極にある諸戸のいじらしいまでの想いが
ともすれば、グロテスクで醜悪な物語を魅力的なものにしているのだと思う。

最後の一行は、ちょっと泣ける。

孤島の鬼 (創元推理文庫)

鬼を斬る 藤木 稟

2009年10月17日 | 藤木 稟
2000年
祥伝社文庫
☆☆

明治初頭、とある村の架橋工事の監査役として内務省の立花が派遣される。
すると、その村では女児が相次いで神隠しにあうという事件が発生する。

立花はこの村で朱雀という男にである。
朱雀から
「心の中に陰をもつものは簡単に鬼になる」という言葉を聞く。
立花には”鬼”になる”心当たり”があった。

村の秘密と、立花がこの村にやってくることになる経緯など、
「人を呪わば穴二つ」という言葉がぴったりくる本である。

鬼を斬る (祥伝社文庫)

螺鈿迷宮 海堂 尊

2009年10月16日 | 小説-日本-
2008年
角川文庫
☆☆

留年を繰り返す医大生 天馬大吉はとある理由から
桜宮医院にボランティアとして参加する事になった。

大吉は、両親を事故で亡くしたが、その時の賠償金で不自由することなく生活をしてきた。

大吉のボランティアの目的は
桜宮医院の終末期医療についての調査と
桜宮医院に行ったきり行方不明になった人物の行方を調べる事だった。

ところが、そこには姫宮という看護士が居て、
大吉は次々と姫宮より怪我をさせられ、Ⅱ度の火傷を負うことになる。
そして、その火傷を見るのが、東城大から派遣された皮膚科の”白鳥”先生だった。

終末期医療をテーマに”医療”と”殺人”の境目が描かれているが、
最後についてはウルトラC的な人間関係による”不幸な人間”の連鎖が描かれている。

自分的には、終末期医療の話と”復讐”の話は別の話として分けていた方が良かった気がする。なんとなく、欲張ってしまったのでどちらも”軽く”なったような・・・

螺鈿迷宮 上 (角川文庫)

太平洋戦争がよくわかる本 太平洋戦争研究会

2009年10月12日 | 歴史・時代物
2007年
PHP研究所; 愛蔵版版
☆☆

ヒューマンドラマ、私情はまったくない。
冷静な中立な本である。
だから、涙がでた。

真珠湾の奇襲攻撃をかけねばならかなった経緯、
慢心と驕りが引き起こしたともいえる戦争。

玉砕という言葉の意味を
「玉のように美しく砕け散ることで、名誉や忠義を重んじていさぎよく死ぬ事」
と、さらに
「玉砕は、敵の弾丸が我が身にあたるようにわざと身をさらして最後の突撃をおこなう全滅のしかただった」
と書いてあった。
さらに、特攻は
「神風特別攻撃隊 敷島隊」
「神風特別攻撃隊 大和隊」
「神風特別攻撃隊 朝日隊」
「神風特別攻撃隊 山桜隊」
編成され、それは本居宣長が詠んだ
敷島の大和心を人問わば朝日に匂う山桜花
から取った名前であった。

どちらも、美しい日本の言葉でありながらむごい自殺行為である。

8回の大作戦の勝敗表が箇条書きで書かれていた。
1・真珠湾奇襲
2・インド作戦
3・珊瑚海海戦
4・ミッドウェー海戦
5・第二次ソロモン海戦
6・南太平洋海戦
7・マリアナ沖海戦
8・エンガノ岬沖海戦
その箇条書きはそれぞれ
参加空母
戦果
損害
意義
が書かれていたのだが、その中で参加空母と損害をみていると
ミッドウェーから空母の沈没が目立った。
このときは、赤城・加賀・飛龍・蒼龍の四空母沈没
ソロモン海戦では龍驤沈没
マリアナでは大鳳・翔鶴・飛鷹が沈没
エンガノでは瑞鶴・千代田・千歳・瑞鳳が沈没

何故か、この箇条書きで無性に涙が出てきた。
それはあきらかにもう戦えないにも係わらず、戦い続けていたことと
空母の名前が希望に満ちた名前が多く、
名前と現実とのギャップが戦争全体の姿に見えたからかもしれない。


太平洋戦争がよくわかる本(愛蔵版)

エンド・ゲーム―常野物語  恩田 陸

2009年10月11日 | 恩田 陸
2009年
集英社文庫
☆☆



以前、「光の帝国」を読んだ時
”しまう”というのは、なんとなく理解できそうだった。
そして、「蒲公英草紙」を読んだときに、”しまう”ことが
なんとなく理解できた。

しかし、”裏返す”はまったく理解できなかった。
文字通り、内側からひっくり返して皮が内側に入って内臓が外側にあるような
B級ホラーな感じを想像した。

そこで、「エンド・ゲーム」だが、
この”裏返す”能力を持った親子の話である。

そこで、”裏返す”が肉体的なものではなく、
オセロの白と黒のような精神的勢力図のような感じなのだろうか(そう理解した)

能力者の親子に、また”洗濯屋”という能力者が現れて・・・

ここで、失踪した父親の行方と理由が明らかになる。

さらに、
常野一族と能力を同じくした別の一族がいることもにおわせる感じで、
今後は、そちらも書かれるんでしょうかね?

蒲公英はどちらかというと、ファンタジー的であったが
こちらはSF的である。

私は、”しまう”一家が好きだなと思いながら読んだ。

エンド・ゲーム―常野物語 (集英社文庫)

毒草師 白蛇の洗礼 高田 崇史

2009年10月08日 | 高田 崇史
2008年
朝日新聞出版





“毒草師”の御名形史紋が活躍するシリーズである。

今回は、濃茶の席で殺人事件が起こる。
西田は編集長に茶道を習いに行き、あわよくば事件の取材をするように言う。
不承不承ながら、お稽古を始めるも、そのには素敵な女性との出会いが・・・・

ところが、その彼女に疑いがかかり、その疑いを晴らす為に調査を始める。
千利休はキリシタンであったという話が主軸にあり、
利休=キリシタンの謎解きと”毒体質”をからめて事件を解決する。

毒草師 白蛇の洗礼

化身―探偵朱雀十五 藤木 稟

2009年10月08日 | 藤木 稟
2008年
トクマ・ノベルズ
☆☆



朱雀がまだ目が見え、検事であった頃の話である。

朱雀が雇った探偵が無残な姿で殺された。
そこで、京都地方裁判所の検事である桂万治とともに、
探偵が死体で発見された馬耳村へ向かう事になった。

朱雀は軍港の監察長官、林田邦夫の邸に滞在する事になる。
この林田には美しい妻がおり、彼女はカメラマンでもあった。
朱雀たちが滞在を始めた頃から、
この村の祟り神である砥筍貢神が動き出す。

この本で、何故朱雀が失明したのか、母親のことや生まれについてが分かるのと、
人間味のある朱雀が読めて面白かった。

化身―探偵朱雀十五 (トクマ・ノベルズ)

直江兼続と前田慶次 

2009年10月04日 | 歴史・時代物
2009年
いずみムック
☆☆


兼続と慶次の話が交互に進められる。

兼続の生い立ちから始まり、景勝との出会い、
謙信から”義”の心を受け継ぎ
御館の乱を経て名宰相へと出世していく話と

慶次の荒子城を追われ、京にでて傾奇まくる。
その傾奇っぷりと、兼続との友情ぶりがよくわかる本である。

合間合間に、コラムがあり
お舟や仙洞(桃)院など女性達の話や
戦国時代のごちそうなど面白い読み物が挟まれている。

本の表紙には
「ドラマが100倍面白くなる」と、書いてあるが
残念ながら、ドラマに慶次は出ないようだ。

直江兼続と前田慶次―これを読めばドラマが100倍面白くなる!! (いずみムック 72)

夜のピクニック 恩田 陸

2009年10月01日 | 恩田 陸
2006年
新潮文庫
☆☆☆



高校の行事で夜を徹して80キロを歩き通すというイベントある。
貴子は高校最後のこの行事にある賭けをしていた。

なんだか、読んでいるうちに自分も高校生に戻ったような気がした。
自分の出身校では、毎年海でキャンプをしていた。
その時、テントを抜け出して真っ暗な海を見ながら友人とおしゃべりをした。
その時の事を思い出した。なんだか、特別な気がした。

融と貴子は異母兄弟である。
しかし、それは融の父が浮気をしていた女性との間に生まれたのが貴子であり、
良好な関係ではない。
貴子の母子は、何の見返りもなく融の父親と別れた。
ところが、その父親が亡くなり、融も母子二人暮らしとなった。

そして、二人は同級生として同じ高校に通う事となったのだ。

融は、貴子に対して憎しみを持つ、
貴子もそんな融に対して罪悪感めいた感情をもっていたが、
お互い気になる存在だった。

この歩行祭で、貴子は融に話をかけて答えてくれたら、
融と話し合おうと決めた。

80キロの道のりの中で、
それぞれみんなが、いろいろなことを悩みながら歩みを進めて・・

なんだか、懐かしい気持ちが一杯になる本だった。

夜のピクニック (新潮文庫)

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