ぶーくん読書録

今まで読んできた本について、いろいろ書いてみる。
ほとんど、ネタバレ!!

イン・ザ・プール 奥田 英朗

2013年03月31日 | 小説-日本-
2006年
文春文庫
☆☆

注射フェチでマザコンの精神科医、伊良部 一郎が活躍(?)する短編集。
つい、ニヤニヤと笑ってしまうので、
電車の中とかで読むときは注意が必要だった。

「イン・ザ・プール」
体調不良のため、通院していた病院で、その病院の精神科を紹介された和雄は、
おおよそ、医師とは思えない精神科医の伊良部と出会う。
伊良部から、ストレス性の体調不良と言われ運動を勧められ
水泳を始めると体調不良が改善されてきたが、今度は水泳への依存がはじまる。

一見、適当なことをやっていそいで、
結果的に患者を治癒してしまう伊良部医師はやっぱりすごいのか、偶然なのかw


「勃ちっぱなし」
題名のような状況の田口が伊良部医師の元にやってくる。
言いたいことが言えない、
怒りを感じても抑え込んでしまう。
そんな中、浮気をして出て行った元妻に
一言ガツンと言ってやれ!と、伊良部が田口を連れて元妻の元へ行くが

「コンパニオン」
コンパニオンをやっている広美はストーカーに付きまとわれているという
ストーカーの人数が増えていき、
広美は仕事場に行くことも困難になる。
伊良部にまったく手の届かない人になればストーカーもあきらめるかもといわれ、
大手映画会社のオーディションを受けるが・・・

「フレンズ」
携帯電話を一時も離すことができない雄太。
携帯でメールを何百通も送らないと落ち着かない
打たないと手が震えてくる。
実際は、誰かとつながっていないと不安になる。
メールによって、たくさんの人とつながっていると思っていたある日、
携帯をなくしたことによって、
実際の自分の位置が見えてきて・・

「いてもたっても」
ルポライターの義雄は出かけるときにタバコの火を消したかどうかが気になるという。
気になりすぎて、仕事にも支障をきたし、伊良部の元にやってきた。
伊良部と話をしているうちに、
今度はガスがきになりだし、さらには漏電も気になりだす。
そんなある日、自分が記事にしたホームレス芸術家が自分が書いた記事を使て
女子高生にイヤらしいことをしてるという話を聞いて、心配になり・・

どの作品も、
伊良部がさらにひどい状況に陥らせているように見えて、
きっちり収束させていくところが、笑いながらも納得できる。

特に、私も
「いてもたっても」な人間だったので、
妙に共感できた。
なんど、指さし確認しても不安で、外から家の電話にかけて
ああ、大丈夫燃えてないと思っていた。

妖怪アパートの幽雅な日常7  香月 日輪

2013年03月30日 | 小説-日本-
2012年
講談社文庫




この本は、毎回、何かしらのテーマがあるように思う。
今回は、
想像力と性教育かな?
と、この二つを並べるとなんだか変な方向性にいきそうですが、
普通にまじめな話ですw

夕士の学校では、三年生追いだし会の準備がはじめられているのですが、
そこで、
人気の千晶先生に歌を歌ってもらおうと女子たちが画策していた。

前半は、千晶先生のカッコよさの話、ついでに言うと
最後のおまけストーリーも千晶先生がいかにかっこいいかという話になっていた。
千晶先生ファンのためのサービスの一環だとおもうのですが、
・・・・・
ここまでくると、
ドン引きですよ!
お金持ちで、かっこよくて(女子はみんな千晶先生が好きみたいな)
何でもできる、スーパースター、
なので、
歌を歌うと、惚れられて大変なことになるから予防線を・・

ちょっと、この辺、鼻につくんですが・・

ここで
一つ目の性教育
千晶先生が以前居た学校でもモテモテで
生徒の一人が、千晶先生と恋人同士であると妄想して
一悶着の上
千晶先生の手に5針縫うほどのけがをさせた。
ところが、その生徒の母親にも、問題がアリ
二人そろって”入院”してしまった。
妄想するのはかまわないけど、
現実と妄想をきちんと分けなければならいという話。


アパートでは、
妖怪の幼稚園につとめている
まり子さんが、預かっていた何かの卵を
くりちゃんが、夕士の部屋に持ち込んだところで孵ってしまう。
そして、その何かはすっかり夕士をお母さんだと思い込んでしまったため、
夕士がしばらく育てることになる。

そして、ここで
二つ目の性教育
まり子さんが生きていたころの話、
お金持ちのお嬢様として育てられて
やりたい放題、さらにお金持ちだから
良からぬ者たちが集まってきて
よからぬ遊びを教えてもらう。

遊びの一環でセックスをして、子供ができたら堕胎するを繰り返していたある日、
本当に好きな人と出会って、
その人との子供ができたときに、
今までの堕胎の影響で、
子供だけでなく、自分の命も落としてしまう。

未だに、まり子さんは自分がどれだけバカだったのかを後悔し続ける。

勉強は何のためにするのか、
頭の体操のためという言葉に、そうだと思うとうなずいた。

実際、理科とか数学で習ったことはそのまま、今の生活で使うことはないですが、
たとえば、
コップに入った水を見て、これってどれくらい入ってるんだろう?
って、いうのは数学の容積、実際、本当に測ることはないけど、
だいたい、これくらいかな?と、思うのは
昔習ったことの応用を知らず知らずしているのではないだろうか、
そうやって、何かの応用は、そのベースが無いとできないことで、
それはまた、想像力を鍛えることにもなると思う。

無免許で事故を起こして他人を死に至らしめる事件や、
飲酒運転でやぱり、誰かを不幸に貶める
ちゃんと、想像力を鍛えていれば、
ムチャな運転をした先に何があるのかを想像できる。

勉強(学校で習う教科以外でも)は、
頭を鍛えて、想像力を発達させることなんだと私も思ってるんですよ。

高学歴だとか、いい大学を出てるとかそういうのではなくて、
人間的に頭の良い人になるため、勉強が必要なのではないだろうか?

千晶先生の話は、なんだかもう、お腹一杯ですって、感じですが。
まり子さんの話は、そうだよな~って、思うところがあった。

今回は、長谷君はほとんど登場せず、
ただ、千晶先生と長谷君のキャラがかぶりすぎで
スーパースター見たいのが2人いると、
ちょっと、食あたり気味になる。

千晶先生持ち上げすぎで、
龍さんどうした?って、感じです。

人丸調伏令 加門 七海

2013年03月29日 | 小説-日本-
1992年
ソノラマ文庫


高校生の融は、宮司である兄夫婦と暮らしていた。

兄は亡くなった父親を継いで、人丸神社の宮司であり、
可那の血を継ぐ者だった。

融はある夜、呼ばれるように境内の中の小さな祠に向かう。
その日を境に、鬼が見えるようになった。
さらに、人丸という一見幼そうに見える、
額に角を持った美しい者にであう。

可那とは、
人丸という式を使役することができる資格のある者で、
人丸神社の当主が代々受け継ぐ。

融の父親も、可那であったが、
融の記憶にある父親は、酒におぼれて最後は命を落としていた。

そんな中
世間では、連続バラバラ殺人事件が起きていて・・

実は、この作者の「晴明。」という作品が
新しい解釈が面白かったので、
この作品を題名だけで、ネット購入してしまった。

かなり古い作品であったのと、
デビュー作であるとのこと・・

なるほど・・・それで納得・・

なんていうか・・拙い感じというか、
何だったんだ?感がハンパないです。

さっくりまとめると

人丸は、もともと山に自由に住んでいた、まつろわぬ神であったが、
融の先祖に恋をして、
融の先祖の式となる。

ところが、人丸と契ったものは人丸に溺れていきさらには
”鬼”となる。
鬼となったモノは人丸に喰われる・・

で、綿々とつづき
融の父親も溺れて鬼となり、
今は、兄が溺れて鬼となって・・

というもの・・

結局、人々を守るために人丸を使役するはずが、
すっかり溺れて自分が鬼となって、人を喰らうという・・

その連鎖を続けていくというのが筋なのですが・・


殺人事件がどうのとか、
鬼退治がどうのとかではなく、
単に人丸の壮大な恋物語のような感じである。
それも、ちょっと生々しいww

人丸に溺れるのは、血であるのか、
その特殊な”体”なのか・・

どちらにしても、
結局、何?でした。

伏(ふせ) 贋作・里見八犬伝 桜庭 一樹

2013年03月18日 | 小説-日本-
2012年
文藝春秋





南総里見八犬伝が大好きだw
もともと、八犬伝を知ったのは
子供の頃見た、NHKの人形劇。
基本的に、
「勧善懲悪」というのがとても好きだし、
読んですっきりする(*^_^*)

で、この作品が八犬伝をモチーフにしてるというので
読んでみたのですが・・・・・

しょっぱなの、
毛野のさらし首の段階で、ちょっとひいた・・・
私にとって、八犬士は”正義”であるので、
犬の血をひいているということで
犬人間(伏)を狩るということ自体が受け入れがたかった・・

そもそも、
犬の血をひいてる”人間”の段階で
この本は、ダメかも・・・と、思ってしまった。

この作者は、よほど
禁忌にさわることが好きなのか、
そういうのが、好まれる風潮であるのかわからないが、

こういった、
獣と人間の異種交配自体が、ちょっとダメだ・・

よく、異種間の恋愛モノとかよくあってそれは
嫌悪感を感じないのに、この作品に嫌悪感を感じるのはなぜだろう?

と、考えてみたが
伏姫の処女性とうことでしょうか。

本来の伏姫はもちろん、八房と関係はなく、
八房とともに山に入ってからは、
仏門に帰依して、亡くなるときも、
自ら割腹して、自身の潔白さを証明して果てて、
伏姫がもっていた数珠が、四方に飛び八犬士へとつながっていく
(と、たしか、そんな話のハズww←うろ覚えですみません)

伏姫が清廉であるからこそ、
里見家復興の為に、伏姫の犬士たちが団結できたのではないのかな~
と、勝手に思っているので(この辺の解釈は、私がおもっていることで
ほかの人に、押し付けるつもりは毛頭ないです。)

なので、
人間性をなくした伏姫が犬の子を宿して(←きっちり書いてないが、そう読める。もし、八房でなければ、相手は弟だよな・・・と、思った。)
と、このあたりの話で、ちょっともう
お腹いっぱいいっぱいに思ってしまった。

贋作・里見八犬伝
と、名を打っているが
贋作って
本物に似せたものという、意味だとおもうんですが、

登場人物の名前だけを使用した、まったくの別物ですよね・・
こういう場合は、
異説や新説とか名を打ってほしかったな~

そもそも、
八犬伝は「仁義礼智忠信孝悌」の八つの文字が重要な意味をもつのだが、
この作品には出てこないし、
そもそも、
道節という名前も八犬士の一人なのに、
ハンターとして描かれていて、その時点で八犬伝を使用することに対して破たんをしてるのではないだろうか?

そして、
この作品が何を言いたいのか、さっぱりわからないということだ。

本来の八犬伝は、勧善懲悪、そして、”義”というものが中核にあるので、
ハラハラドキドキしながらも、最後は正義が勝つんだという安心感がある。

しかし、
この作品で、一番私が嫌悪感を感じたのは
伏であるだけで、なぜ狩られなけらばならないのか?
偽善者と言われても仕方がないと思うが、
この作品を読んで、
差別や迫害ということばが浮かんだ。

南総里見八犬伝を知らない人がこの作品を読んで、
八犬伝というは、こんな作品なんだと思われるのが一番嫌だ。

ジェノサイド 高野 和明

2013年03月08日 | 小説-日本-
2011年
角川書店
☆☆



傭兵のイエーガーが肺胞上皮細胞硬化症の息子の医療費の為に
アフリカで行われる特殊任務を引き受けることになる。

そして、
日本では、薬学の院生である研人は
研究者である父親の葬儀に出席していた。

アフリカの傭兵と日本の院生がどうつながるんだろう?
と、思いながら読み進めていくと!!

研人の父親は生前、
とある研究をやっていた。
GIFTという、人類が考えることができない
高性能な創薬ソフトによる
「肺胞上皮細胞硬化症」の特効薬の創薬であった。
父親は自分になにかが起こり、
研究を中断することになった場合に
研人に引き継いでもらうよう準備をしており、
死後に、メールにより
ソフトや、研究に必要な器具、そして謎のパソコンのありかを知らせる。

一方、アフリカでの任務は
新種のウイルスに感染しているおそれのある
とある一族の虐殺だと知らされ、
任務終了後には、その中和剤である薬を必ず服用するようにと
クスリを渡され、任務を開始することになるが、
イエーガーはこの任務の真の意味を知ることになる。

研人は
「肺胞上皮細胞硬化症」を患っている
二人の子供の存在を知り、
さらに、その二人の命の期限を知り研究を急ぐのだが・・

この二つがつながらないときは、
ずっと、頭の上に「?」マークを乗せながら読み進めたいたが
二つが重なったときに、
止められなくなった。

後半は、一気に読んでしまった。

面白い!!と、思って
ふと、この作者を確認すると!!

私の好きな本、ベスト10に入る
「13階段」の作者でした!!

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