ぶーくん読書録

今まで読んできた本について、いろいろ書いてみる。
ほとんど、ネタバレ!!

津山三十人殺し 筑波昭

2009年01月31日 | 小説-日本-
1981年
草思社
☆☆



頭には懐中電灯を日本刀に猟銃をもち、足にはゲートルをまいて・・・
どこかで見た光景・・そう八墓村である。
この事件は、のちに横溝正史が八墓村のモデルとしたものである。

一時期、昭和初期の事件等に興味を持ち色々と調べていたところ、この本の存在を知った。

昭和13年岡山県内の農村で起こった惨劇である。
その青年は秀才であったが体が弱く、それゆえ徴兵検査には受からなかった。
村中からバカにされていると思い始める。
さらに、安倍定事件に興味を示す。

そして、事件は起こった。
彼は、まず電線などを切り外部との接触が出来ないようにした。
そして、その村をまったくの孤立状態にして村人達を襲ったのだ。
フィクションではなく、事実であるというところが壮絶だ。
このような状況は、現代社会ではないだろうが、
このような青年は今でもいるかもしれない。

文通 吉村達也

2009年01月30日 | 小説-日本-
1994年
角川ホラー文庫



主人公は気まぐれからペンフレンドの募集をする。
住所も年齢も性別も違う4人から返事がきたが・・
実はすべて一人の人間が書いていたものだった!
今は、ペンフレンドというのは少なくなったと思うが、
メールという手段がある。
今でもおこらないとは限らない恐怖なのだ。

仮面の義経 伊井 圭

2009年01月29日 | 歴史・時代物
2004年
イーグルパブリシング
☆☆



武蔵坊弁慶が五条大橋でであったのは、水干に薄衣を被った稚児であった。
しかし、その顔には伽楼羅の仮面が被られていた。

伽楼羅の仮面は遮那王であった。
仮面をとった遮那王はうつくしくやさしいが
仮面を被り戦場にでると、戦績を上げ平家に対して非情になる。

遮那王は元服し、義経として兄の源頼朝の元に向かうが、
頼朝に疎まれ、藤原氏を頼り奥州平泉に落ちていく

この本の面白さは、仮面を被る理由であった。
何故、仮面を被らねばならなかったのか、
何故、仮面の時と素顔では人格が違うのか
義経は、美しい顔だったとか実はそうでも無いとか
色々な説があるが、
こんな説もあってもいいのかもしれない。

黄泉津比良坂 血祭りの館  藤木稟

2009年01月28日 | 藤木 稟
1998年 徳間書店




とある本屋のオススメであった。
この作家を全く知らないので、店長のオススメというのに乗ってみたのだ。

片田舎の山の頂に、この一帯を統べく一族の館が建っていた。
天主家とはいわば1城の殿でこの一帯の住民は城下町にすむ天主家の家来とでもいおうか、
さらに、この天主家は血族婚を繰り返し血と財産を守っていた。
天主家の当主のみに、この家の財宝のありかを伝えられるのであるが、
この家には暗い過去と伝説をもつ一族でもあった。

そして、この本でもっとも重要な役割をもつのが、
天主家の館である。
文章の雰囲気からすると、たぶん昭和初期をイメージしているとおもうのだが、
その時代設定においてこの館は異彩を放つ。
この館の説明に何ページも費やし、
いちいち漢字での表記
たとえば、
湾曲真珠装飾(バロック)
中世欧羅巴(中世ヨーロッパ)
など、とにかくごてごてした擬洋館が舞台である。

そして、その当主の失踪事件がおこり、”探偵”加美が呼ばれる。
同時に、僧侶の親子もこの天主家によばれるのだが、
続き、長男も失踪する、そしてその母であり当主の正妻が殺害され、
次々に事件がおこる。

しかし、犯人は分からずじまい。
この家につたわる呪いの話、祟りだったのかと探偵が尻尾を巻いて逃げ帰り、
やけに物知りな小坊主も本名を”朱雀十五”と名乗って終了。
エピローグではまたもや事件が起きたと語られてる。

ええ・・・???なんなの?
って、感じであった。
館とおなじごてごてした文体、これはごてごて館の話なのでこうなのか、
この作家の作風なのかわからないが、若干辟易気味に読み進めてこんな中途半端なのか!と、憤りも感じながら調べてみると、
なんと、この作品「黄泉津比良坂」と言う作品の前編にあたるのだ。
黄泉津比良坂 暗夜行路で完結するとのこと!後編があったのだ。
しかし、この事実を知って
「マジで~めんどくせ~」と、思ったのでした。
別に後編読まなくてもいいかな・・と、思わせるミステリ作品というのもある意味すごいと思う。

ちなみに、この朱雀十五シリーズと言うのがあるらしい。

町 栗本 薫

2009年01月27日 | 小説-日本-
1997年
角川ホラー文庫


恋人を殺害しようとドライブへ連れ出した。
誰も知らないような辺鄙な町を探す為である。
しかし、たどり着いた町はたしかに外部と遮断されているようだが、
この世とも遮断された町だった。

この町では”生”をもった住人はいないのである。
死の迷宮に紛れ込んだ愚かな男の話である。

耶律楚材 陳 舜臣

2009年01月25日 | 小説-日本-
1997年
集英社文庫
☆☆

漢人でありながら、モンゴルのチンギス・ハーンに仕えたモンゴル帝国の宰相の話である。
そもそも、楚材とは他国で用いられる人材という意味であるが、
その通りの活躍をした人物である。
武将とは違い華々しい感じは受けないが、面白かった。

金閣寺 三島由紀夫

2009年01月24日 | 小説-日本-
1960年
新潮文庫
☆☆☆

この本は何度読んだか解らない。
簡単にまとめてしまうと、
金閣寺に対する青年僧の歪んだ愛情とうものだと思うが、
それが理解できなかったのだ。

とは言え、初めて読んだのが姉に言われて小学校5年生くらいである。
でも、なんだか気になって中学に入ってからもう一度読んだ、
やっぱり理解できなかった。

高校に入ってから読んでみると、なんとなくわかる気がした。
しかし、このときは興味がすっかり”金閣寺の火災”であったので、
水上勉の「金閣炎上」という本を読んだ。
こちらはノンフィクションの為、
事件に至る経過などが良く解るようになっていた。
そして、この本を読んでから再度三島由紀夫の「金閣寺」を読んだ。

火を放った青年僧の美しいものへの憧れと妬み、
自分の人生への嫌悪
煌びやかで美しい金閣寺が炎に包まれる姿は、
一人の青年を精神の彼岸へ到達させてしまうのには十分な要因であったのだろう。

叙情的で美しい本である。

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