ぶらっとJAPAN

おもに大阪、ときどき京都。
足の向くまま、気の向くまま。プチ放浪の日々。

『鴨居玲 死を見つめる男』

2015-12-23 22:20:15 | アート

 

伊丹美術館の展覧会は終わってしまいましたが、たくさんの方が『踊り候え』~鴨居玲展の記事を読んでくださっているようなので、関連本のご紹介です

著者は生前の鴨居氏と親交が深かった日動画廊・代表取締役副社長・長谷川智恵子さんです。

実際の鴨居氏は日本人離れしたルックスに上品な関西弁で、けれどちっとも気取らず腰が低く、誰もが会ったとたんに大好きになってしまう、魅力的な人だったとか。

ちなみにお兄さんもハンサムで、戦死した後のお仏壇には、本人の写真がないので、「似てるから」と代わりにアラン・ドロンのブロマイドが飾ってあったそうです

「指にタコのない画家は信用できない」と、ヨーロッパにいる時も、ひじが変形し腱鞘炎に悩まされるほど毎日かかさずデッサンの練習をしながら、デッサンをしたものに色をのせただけでは師匠と同じ絵になってしまうからと、作品に物語を強く求めた、みたいなことが書いてありました。確かに、描かれた人物の表情はとても豊かで、今回の展覧会でも、作品の人物の物語を掘り起こそうと試みるキャプションが多かったです。観てるとイメージが湧くのだと思います。描く時は、実際に目の前に鏡を置いて自分をモデルとして表情を研究したそうで、歯が痛くて顔をしかめるおじいさん(タオルを顎に巻いている)の格好をした鴨居氏の写真が載っていて思わず笑ってしまいました。

生涯のパートナーとなった女性がカメラマンだったので、いい表情のプライベート写真がたくさん残っていて、それもこの本の見どころの一つです。

展覧会の記事では、↑の絵を見て「こんなのを描いたらこのあと何にも出てこないのでは」という感想を書きましたが、実際は「最後の晩餐」をモチーフにした絵を描くという構想をもっていらっしゃったそうです。それは、ちょっと意外でした。生への欲求と死への憧れと恐怖が画家の内側には共存していたようです。

最後に、親交のあった司馬遼太郎氏の追悼の言葉が掲載されています。さすが作家。心にしみる手紙でした。

コメント
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