1月27日 金曜日 那覇
朝、ディアーゴから「煎茶」をもらう。エスプレッソより緑茶が好きなんだそうだ。イタリア人なのに。
今日は那覇の海側を探検してみようと思う。
沖映通りをまっすぐ海側へ歩く。58号線を横切って那覇中学校の裏手に古本屋〈ちはや書房〉がある。なかなかマニアックなセレクトで、時間を忘れる。2冊ほど挨拶代わりに購入し、さらに海側へ。ガジュマルが見事な公園があった。
そのそばに 古本屋〈言事堂〉がある。美術・工芸関連が中心ということだが、あえて違う分野でまた2冊購入。こういうところで物欲を全開させると財布にとって大変危険なので、適当に切り上げる。
そのまま若狭中通りにぶつかるまで歩き、波の上ビーチに寄ってから旭が丘公園の山を越える。
このあたりには対馬丸記念館をはじめ、久米至聖廟(孔子廟)、波の上山護国寺、波上宮神社と見所が多いのだが、今日はすべてパスして先を急ぐ。
〈らあめん波蔵〉で塩とんこつ、替え玉無料、無料トッピングパスで煮卵を頼む。テレビでは寺田農が事実婚の内妻に訴えられていた。ちなみにこのそばの若狭緑地は樹林好きにはたまらない。
ロワジールホテル&スパタワー那覇の裏手に三重城(みーぐすく)がある。階段を上ると鳥居があり、奥には拝所が。海上保安庁の信号所があって、海保十一管区が管理しているようだ。
ここはかつて港を守るために岩礁から長く堤を岸までつないで要衝としたところだが、明治以降は埋め立てが進んで往時の面影はない。古い絵図や古地図を見ると、那覇港を守るように細長く突き出した長堤の先に城塞がある。
ホテルの前にはタクシーが列をなしていて、歩く私に声をかけてきた。
「にいさん、どこまで行くの?」
たぶん、行き先と交渉によってはかなり安くしてくれそうではあったが、今日の散歩は明治橋から奧武山公園あたりまで、あまりに近すぎる。
「近所の散歩なんです。また今度」ということで。
那覇港那覇埠頭はいまだ現役だが、荷揚げは安謝の新港、周辺離島への貨客船のほとんどはとまりん(泊埠頭)に機能が移っていて、ここを発着するのは奄美群島など鹿児島県方面へのフェリーなどになる。
この港から国場川をはさんで向こう側に御物城(おものぐすく)が見える。かつては港内の小島で貿易倉庫があり、戦前には高級料亭もあったそうだが、今は岸と地続きになり、米軍が管理する那覇軍港敷地内にあるため、立ち入りできない。
明治橋を渡りながら御物城を撮影していたら、橋のどこかにあるはずの国道58号終点モニュメントを探すのを忘れた。58号線の起点は鹿児島市で、種子島、奄美大島を経由して那覇まで続いている。沖縄本島の起点である国頭村奥のモニュメントは撮影してあるんだが。
奧武山の沖縄セルラースタジアム那覇は、今年から巨人がキャンプするというので盛り上がっているようだ。が、今日の関心はそこではない。
奧武山は総合運動公園になっているので、陸上競技場・野球場・テニスコート・武道館・弓道場・プールなどが整備されている。那覇に住む人にとってはオリオンビアフェスタや那覇マラソンなどのイベント会場として親しまれている。しかし、ここにある史跡はあまり知られていないようだ。
世持神社の方に登ると、ちらほら桜がほころびはじめていた。
神社では工事関係者がお祓いをしていた。
公園の中をめぐり、護国神社へ。この裏に回っていくと、山頂にいろいろな像や碑がある。このへんはまだ調べきれていないので、今後の課題である。
いったん下りて、遊歩道を経由して沖宮にのぼる。ここからはプールを見下ろせる。奧武山公園を一周する遊歩道はジョギング用に膝に優しい舗装がしてあるそうで、クッション性が高い。
と書いてあったので歩いてみればたしかにふかふかしている。北明治橋を渡る。この橋は歩行者専用で計4枚の史跡案内板があり、その内容が充実している。これを読むと、まだまだ史跡ポイントはあるようだ。宿題だな。
ちょうど雨が降り出してきたので、壷川駅からゆいレールで帰る。なかなか充実した史跡散歩であった。
月光荘に帰ると、ケイリン、シモン、ディアーゴらから「スーパーマーケット?」と買い物に誘われる。
実はディアーゴはイタリアンのシェフで、今夜の月光荘の夕食を作る約束になっていたのだった。財布係のまもるを連れて、多国籍チームでA-COOPとユニオンを回る。とにかくディアーゴは紅芋がお気に入りのようだ。
ディアゴはサンペイというミートボールの煮込みを作るらしい。キッチンには多数のギャラリーが詰めかける騒ぎになった。
とりあえず、大ちゃんから3種のつまみ(煮物、ワカメ、セロリ白和え)、豆腐、ポップコーン(チーズとチリ)と続々食卓に並ぶ。
いよいよディアーゴ渾身のサンペイがテーブルに。ミートボールスープに沖縄そばが入るグローバルなフュージョン料理になった。
さらにはるちゃんから餅のあんかけ鍋、シューマイが出て、今晩も豪華な宴に……と、思ったら大雨になり、ついに雨漏り。そんなこんなで大騒ぎ、こうしてまた月光荘の夜は更けていく。