朝起きて顔面をきんきんに冷えた水で洗う
きょろきょろと部屋を見渡す
うろうろと部屋を歩き回る
ぐるぐるな頭をなんとか整理しようとしてみる
ぼくに今できることはなんだろう
そう思う一秒前には右手にカメラを持って部屋を出ていた
たった半年前までほとんど部屋から出れず
ただ、引きこもっては
ベクトルをぐさりと内につきさしてまたうろついて
そういう日々のおかげで今ここにこうしてぼくは立っていて
気がつけば反射的にカメラを握って無意識にぶつぶつと何やらつぶやきながら山の上に立っている
だから思えることは
捨てていい気持ちなどありはしないということ
あの山の向こうに行きたいなら、必ず行けるということ
その力を多くの人や出来事からもらっているということ
ひとはやっぱりひとりだけれど
それでもやっぱりひとりではないということ
強くないものへ
耐えて、そのままでぶっとくなれ
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ドイツ、ベルヒテスガーデン。
この国で2番目に高い山、ヴァッツマン(2713m)が目の前にそびえる。
美しい山というのはただ高いだけではない
その高さだけの深さや器の大きさを持っているものだ。
朝一人、遠くからヴァッツマンと対峙してみる。周囲はまだヤギと小鳥たちしか起きていない。
澄んだ空気の中、凛とたたずむ山へ静かに光が射していた。