日記

Hajime

Houkyo

2008年05月11日 | Weblog

今、ってなんだ
輝こうとすることに一体何の意味がある
何かをあきらめないことに一体何かの価値があるか


そこに言葉にならない大切な時間が待っているのなら
きっとあるに決まってる


意味などなくても
言葉になどならなくても
走れるなら、ただ走ればいい
まだやれるなら、やりぬけばいい


........

それからまた会えたなら、ただ笑えればいい


2008年05月08日 | Weblog

何かしらの答えを探そうと進みますけども
いずれにしてもそれは掴み取ろうとしても、掴めるものではなくて
答えの多くや、そのヒントが全て己の中にある
ということを知る為のトレーニング

鍛えられた脚と、開いた目を
ふとした瞬間に自分に向けると

こころの中にしっかと答えがある
それがあまりに懐かしくて
そして恥ずかしいほどみずみずしいものであるので
あぁ、こんな身近にあったのね、と
改めて目を細め、それを見つめるのであります

いくらあがいても、自分を迎えに行ってあげられるのは自分なのだから
その内にあるものを大切にしてあげていいのだと思います




おはなし 4

2008年05月06日 | Weblog
電車に乗るとなぜだか先ほどと同じで、席には黒いカラスと目を腫らしたウサギが乗っていました。
それからごっとしごっとし列車は走り出しました。
川のほとりを走り抜け、深い谷のトンネルを過ぎた頃、アイガーは黒いカラスに言いました。
「やぁ、カラスさん。ここで会ったのも何かの縁です。あなたはどこへ行くおつもりなのですか。」
黒いカラスは言いました。
「山のてっぺんの蛇城までですよ。そこへ毎日その日一番きれいに咲いた花を持って行くのです。ほら、今日はすみれです。谷の底に咲いておりました。」
「ふうん、でもあなたはホラ吹きカラスだって有名ですよ。あの蛇の王さまがおっしゃってたって。なにしろ蛇の王さまはこの辺りじゃとってもかしこくて真面目だというのだから。」メンヒは言いました。
「そうですかそうですか。」黒いカラスは嫌な顔ひとつせず言いました。

てっぺん城の駅でメンヒとアイガーは黒いカラスについて降りることにしました。
ごつごつした岩の駅を降りるとてっぺん城ではもう蛇の王さまの今日の演説が始まっておりました。
「えー、大衆の者々結構結構。今日まずは山の経済云々カンヌン。」蛇の王さまはしゃべり続けます。
そこへ、あわてて黒いカラスが谷のすみれを脇からさっと王へ渡しました。どうやらその日の花を持って話すのが王さまのやり方のようでした。
「このようにして本日も谷底に咲くすみれがきれいに咲いているわけであって、民の者たちもこれにみならって精をだすように。」
野ネズミやたぬきたちの歓声がどっとわき上がり、その中を王は城の中へと姿を消しました。
そしてつまらなそうに谷底のすみれをふんと投げ捨てうろこのついた腹でへっつぶして黒いカラスの前を通ってゆきました。
外では未だ王さま!と叫ぶ声がやみません。

しばらくして黒いカラスはころころと岩の城に涙を落とし谷のすみれを拾いました。
メンヒとアイガーも散らばった紫の花を拾っては黒いカラスに手渡しました。
遠くから再び列車の汽笛が響きました。しらじらとてっぺん城に明かりが差し込んできましたので、メンヒとアイガーは急いで列車に乗り込みました。
二人とももう黒いカラスのことをホラ吹きカラスだと呼びませんでした。
正面の席に座ったウサギは「優しいホラ吹きカラスのお話し」を読みながらいまだ目を真っ赤に晴らしておりました。
辺りは夜明けの陽が差し込み始めました。



おわり




おはなし 3

2008年05月06日 | Weblog
ヒグマが慌てて降りていったものですから、隣に座っていた猿は驚いて奇声をあげ、手すりによじ登りました。
ドアが閉まり、ゆっくり列車は発車します。
手すりにぶら下がったままの猿はするりメンヒとアイガーの前までやって来て、よじれたネクタイを閉め直し言いました。
「これはこれはお二人様、山の古屋のメンヒさんとアイガーさんじゃありませんか。よろしければぜひ私の学校においでませんか。いや、私はこう見えて山の猿学校の教師でして、こうして通勤がてら広告を見上げては本日の授業内容を考えておるのですよ。さあぜひ、おいでくださいな。」
「いいでしょう。ね、アイガー。」
メンヒは言いました。

山の学校駅に着いたのはとっぷり夜もくれた頃。
プラットホームにはあちらの山、こちらの山からやってよこした小猿たちがお互いにつっつきあって降りてきます。
駅を出るとすぐ目の前は広い草っぱらになっており、ところどころでは銀のススキが揺れておりました。
一つめのススキの群の前に集まった小猿の生徒たちの前にネクタイをしめた先生猿が進み出ました。それからうやむやしく咳払いをひとつやってみせ授業が始まりました。
「えー、それでは月のこよみ、上弦の月の日の授業を始めます。」
小猿たちはじゃれあうのをやめ猿先生の話を真剣に聞いています。
「それでは皆さんお月様の勉強の続きですが、全体お月様とは一体なんだったでしょうか。分かるものはいますか。」
しばらく静まりかえった小猿たちは、うーんと頭をひねりまたざわつき始めました。
百姓の尻だとささやくものや、いいや先生の尻だとささやき合う声がざわめき合います。
すると東の大山の小猿、猿道がすくりと立ち上がり答えました。
「あれは目です。くろおいお空の目です。起きてる時は満月で、眠たい時は三日月です。」
一同から完成とともに拍手がわき起こりました。
「そうですね猿道さん。よくできましたね。」
猿先生もメンヒとアイガーを見ながら満足そうです。

「さあ、それでは今夜は上弦の月でお月様も眠たいようなので今日の授業はおしまいです。皆さんすすきの葉っぱに手を切らないようにして気をつけて帰るのですよ。なにせ私たちは木はつかめても、すすきの葉っぱはつかめないように手のひらには毛がないのですから。」
最後のあいさつに小猿一同、はーいとあいさつするやいなや皆飛び回ってメンヒとアイガーのところへやってきました。
しばらく小猿たちと野っ原で遊んだ二人は、遠くからブオーっと聞こえる列車の音に気がつき駅へと向かいました。
それからすぐ列車は駅に大きな停車音で止まり、二人はまた列車に乗りました。






おはなし

2008年05月03日 | Weblog

油の沢山ついたクマは新聞を読みながら、黒いからすの羽ペンで何やら手帳に書いておりましたが、隣の隣の席のカラスがおほんと咳払いをしたため
「いや、こりゃあまたカラスさんがいるとも知らず」
と手帳とペンを革の鞄にしまいこむと次の駅でばつの悪そうに降りてゆくのでした。

それを見ていたメンヒとアイガーは、くすくすと笑いながらカラスが黄色い目でじろりとこちらを向いたのでしばらく黙っておりました。

おはなし

2008年05月02日 | Weblog

山の奥、静まりかえった夜でした。
メンヒとアイガーは眠れず、二人の部屋の東向きにあるぎしぎしと音を立てる木製の窓からくらあい夜の明るい星を眺めていました。
星はあちらからこちらへ、ひとつふたつと流れます。
メンヒもアイガーも何も言わず白い月の明かりに照らされる向こうの山裾を眺めておりました。
するとふたつの星がそろいそろってこちらへむかってやってきました。
どうやら機関車のライトのようでした。
機関車は二人の部屋の窓へがっしゃりがっしゃり車輪をまわしやってくるのです。
メンヒとアイガーは驚きましたが、回りを見渡しますとそこは見渡す限り続く石のプラットホームになっているのです。
二人ともぎしぎしと窓を開け、もっくもっくと煙をはいて近づいてくる黒い機関車を喜んで待ちました。
高い音と低い音の混じった、ぎぃぃという音が鳴り、黒い機関車はゆっくりとちょうど窓へと止まります。

窓から見える機関車の中は明るく、それはちょうど山のふもとのお祭りの夜の灯りに見えたので、迷わず乗ることにしたのです。
メンヒとアイガーは入り口のすぐ隣の座席に座り、窓から家がゆっくりと遠ざかるのを二人して眺めました。
「ほうら、もうあんなにおうちが小さい。」
メンヒがいいました。

しばらく窓の外を見ていた二人は今度はきちんと席に座りました。
向かいあった席の方には、桃色のシャツをきた猫が何やら目をつむり、ヒゲをさわってにやりにやりと笑っています。
その横には毛に油をとぷりとつけた大きなヒグマが黒い革の鞄を膝にのせ、くしゃくしゃの新聞をまぢまぢと見ていました。
そしてその横には両足を前へ投げ出し上を向いて腕を組み、何やらうなづいている猿がおります。
彼は時々に、ひらひらと揺れるつり革の広告の「週刊山の事情」の見出しを読んではうなづき、また目を閉じてはうんうんと感慨ぶかく何やらにひたっておる様子でした。
猿の横には真っ黒なマントを着て黄色い目をしたからすがおり、その横にはスカートをはいた毛の長いうさぎが何やら本を片手に目を赤くはらしておりました。
メンヒとアイガーはじっとそれらを眺めておりました。
最初の駅に着くころ慌ただしく猫が爪を立て、座席の上の鞄をひっかけると中から切符をしっ、と出し、ふかぶかと帽子をかぶった車掌に、深々と頭を下げて切符を渡したかと思うと足早に機関車から降りてゆきました。