今年最後の仕事である。
祖父の同級生、幼馴染であり僕の書道の先生である近所のおじちゃんがいて、そのおじちゃんがちょうど10年前から「黒松からのたより」という自作の小冊子を創刊している。
地元の方の俳句や短歌、書などの作品、その他一年にあった出来事(祭りなどの行事)等がまとめてある小さい冊子だ。
黒松町にいる方、またこの町で育ち他府県で生活している方に送り届けるためにそのおじちゃんが毎年一部一部手作りで作成している。
書道の先生ということもあり丁寧かつ味のある字で刻みこんである文章たち。
コピーせず一冊づつ作っているため年に数十冊しかつくれないし、おじちゃんも83歳になり「そんなに多くはもう作れないんだよ。」ともらしていた。
以前は妹の描いた絵なども掲載されていて、今年は僕が撮った写真のいくつかが載っていた。
祖父が逝った後、祖父の幼馴染でもあるそのおじちゃんにどうしても聞きたいことがあり一通の手紙を送った。今その文面が手元にない為、そして7年前でもあるため正確には書けないけれど、僕は祖父やおじちゃん達が育ってきた時代のこと、戦争という激しい時代を生きてきたことに対する想いや今感じることなど、祖父に聞き残してしまった様々な出来事をおじちゃんに手紙でぶつけてみた。
数ヵ月後、筆で書かれた一通の封書が届けられた。
そこには本当に様々な想いがつまっていた。
当時まだ20歳そこそこの若造である僕にちゃんと向き合ってくれた。
長く書かれた文章の最後に「私自身もこれを残しておきたいと思うのでコピーをとりました。今回このような記録が残せて私も大変うれしく思います。本当にありがとう。」というような文章でしめくくられている(東京の部屋に置いてあるため正確ではないけど、確かにそんな締めくくりだったと思います)。
その手紙のやりとりをして本当に良かった。自分の為にも、ひょっとしたらおじちゃんの為にも。
そんなおじちゃんが今日うちにやってきて、来年の冊子のために年越しの除夜の鐘の写真を撮ってほしいと言ってきたため今準備中である。
が、手元にカメラがなく実家のデジカメもすべて充電器がないというまぬけなハプニングのため大変なことになっている。
フィルムで撮ろうかと思ったが、もうフィルムのある店も閉まっている。おい田舎!!
そしたらおじちゃんがおじちゃんのカメラを使ってくれ、と手渡されたデジカメ。
それがまたちょっと大変なデジカメでね。
なんとかがんばります。
大好きなおじちゃんが残そうとしている想いとそれが形になる冊子。
何が何でも素敵なのを撮ります。
今年最後の仕事です。
それではみなさんよいお年を☆
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一番大切な人と一番大切な世界を見たい
波打ち際の光の調和や
森のしじま
そんな瞬間たちをあなたと一緒に見ていたいのです
好きな人と離ればなれということほど悲しいことはない
大切な人には愛を
ただそう思います
今日の夕暮れもとても繊細な時間が流れていました
白かった月が少しづつ光放つ様
その月を囲む空の青が深い紺に変化していく様
波の音
遠い海に映る黒い雲の影
そんなかすかな世界を一緒に見ていられたらなあ