犬と猫、皆さんどちらが好きでしょうか。
ちなみに私は大の猫好き。
物心着く前から猫に囲まれた生活だったからだと思います。
とはいえ飼っていたわけではなくて、港町なのでいたる所に猫がいたというかんじ。
一人山へちゃんばらにこもる時も猫が着いてきて、野球の素振りを電柱の照明の下でする時も猫が話し相手。
代々うちに住み着いた猫は僕が記憶する限り、シャム、クロ、のら、次郎やサスケなんて名前でした。
家の裏で魚をさばく祖母にしてみれば、隙あらば魚を狙うあくどい存在で、どの猫も「バカ」という立派な名前を命名していました。
それでも祖母は勝手口から家に入る時にきまって魚のアラを残して猫が食べれるようにしたり、いつも大きい猫にエサをとられたりする弱い猫にはアジの頭なんかをこっそり投げてやっていました。
だから祖母がどの猫を「バカ」と言って怒っても、猫たちはにゃあ。
あっちいけバカ!でもにゃあ。
そんな日暮れ前の風景が懐かしく思えます。
ということでやってきたのはフリブール/フライブルク。
何を隠そうここには『猫の塔』なるものがあります。
うひょー、テンション上がる上がる。先日のバーゼルでのハードな日程(しかもここに来る前に早起きしてソロトゥルンという街の取材もしてきた)も忘れるくらい期待してるよー猫の塔!
と、思いきや猫の塔は下の写真の城壁の左端にあるものと真ん中の塔のことをいうようでちょっとがっくり。
もっと猫をちょうだいよ、もっと猫の形とかさ、猫の顔のモチーフとかさ。
でも猫の塔の周辺で猫にも会えたし、猫の塔に寄りかかって寝そべる羊(上の写真)も見れたし、猫の塔の隣にある家にはすごい大きい犬がいたし、有意義な時間を過ごせたと思う。
フリブール/フライブルクはドイツ語とフランス語の境目のためビール/ビエンヌと同じように街の名前が両方の言語で表記されています。
街自体は1157年からあるもので、ヨーロッパでも1、2を争う古さ。
サリーヌ川が街の中心を流れていて、とにかく坂が多い。
というのも川の岸壁の上と下に街があり、駅は崖の上にあるのだけど、こじんまりした民家などの多くは崖の下にあるのです。
だから駅を出て、崖の上を一通りまわりそれから下の街へ。
下の写真は下の街にあるサリーヌ川にかかるミリュウ橋から。
崖の上の街や、街で一番大きい教会「聖ニコラ聖堂」もきれいに見えます。
崖から降りて下の街へ、それから崖の反対側にある丘の上へ。ここからはフリブール/フライブルクの街の眺めが最高です。街の中心からはかなり歩かないと行けないし、登り坂も大変だけど丘の上に街を眺めるベンチなんかもあって古い街並をゆっくりと見渡すことができます。
でも喉からからな僕はここまでやってくるのにだいぶ苦労しました。
それでも歩かないときれいな景色は見れないということで、かかってこいや坂!とぶつぶつ独り言を言いながらがんがん登る。
それから丘を下り、再び下の街へ。しばらくぶらぶらして上へ上がるためのケーブルカー乗り場へ。
下の街と上の街を結ぶこのケーブルカーの動力は水力で、約15分おきに上と下を行き来します。
この旅で出会ったある人は「日本人はドイツやスイスの人の3倍働いているから、ほんとは日本人は3倍豊かじゃないといけないはずなんだけどな。」と言っていました。
「豊か」という定義が曖昧でとても難しいし、日本人がスイス人より豊かじゃないとも思わないし、スイス人が日本人より豊かだとも思わないけれど、ゆったりと登って行くケーブルカーに乗りながらふとそんなことを思い出してフリブールの町を眺めてみた。
ふとした時の優しさや、微笑みというものをスイスで見る度に、人間の持っている素朴な愛情を自分自身に思い知らされたのは確かです。
それから上の町をぶらぶらまわって撮影して、何人かの優しい地元の人から道を聞いて駅へと向かう。
ちなみにさっき登った丘へは、下の写真に写っている右から左上にあがる道を歩いて登りました。
猫の塔のある街で、だいたい優しく道を教えてくれた人は犬の散歩をしている人たちでした。