日記

Hajime

ビール/ビエンヌ

2008年10月19日 | Weblog

~ビール/ビエンヌ~

ヌーシャテルを後にして向かったのがビール/ビエンヌという街。
ベルンから鉄道で30分ほどのところにあり、この街もビール湖という湖のほとりの街。
この街のビール(Biel)というのはドイツ語で、ビエンヌ(Bienne)というのはフランス語です。
ちょうど言語の境目にある街で、2カ国語が公用語になっているため街の名前も両方の言語で表記されています。
スウォッチやオメガなどの本社があり、精密機器産業でも有名な街です。

駅を降りて旧市街までは徒歩15分ほど。
駅前はビルやお店が並び、歩道も広いのだけど、なんだか閑散としていて昼間っから酔っぱらいとかもいるので夜の一人歩きはおすすめできない感じです。
その通りをずーっと進んで、やって来たのが旧市街。
リンクという広場があり、ここは11世紀から18世紀くらいまで裁判の場として使われた場所で、今は音楽の練習をしたり、カフェがあったり、とほのぼのした雰囲気です。

いたるところで楽器の音がなっていて、通りでは大所帯のジャズバンドがごんごん演奏し、超渋い!
この日、ベルン→ラ・ショウ・ド・フォン→ヌーシャテル→ビール/ビエンヌと周り、荷物も結構あり、噴水で水をペットボトルにくんで腹を満たしてきたのでちょっとすさみかけの夕暮れだったんですが、街角から溢れる音楽に癒されました。
近くで(この街でも)ジャズフェスが開催されていて、街ではうじゃうじゃ演奏者が楽器を鳴らしていました。
お酒飲みながら聞きたい、と思いながらライブを横目に街の中心部に向かいました。
トランペットやサックス、トロンボーンを演奏するサングラスにスーツの黒人のおっさん。
余裕を持って旅するのもいいけど、立ち止まったら死刑、と自分にわけのわからない取り決めをしてまわって逆効果だったかもしれないと思いきや、最後にいい音楽を聞けてとても満足できました。というか、そういうのが旅の醍醐味だ!とテンションも勝手に上がってしまうわけです。



リンク広場










旧市街はかなり渋くてかわいいです。









ヌーシャテル

2008年10月18日 | Weblog

ムルテン/モラに行った次の日はベルンから鉄道で50分ほどのヌーシャテルという街に行きました。
旧市街の真ん中に市場があってさまざまな屋台が軒を連ね、活気溢れる通りが並びます。
ヌーシャテルもムルテン/モラと同じく湖畔の街。けれどもムルテン湖よりもヌーシャテル湖は断然大きくてその分街も広くて大きい。
レストランや路地裏の露天は多くのお客でにぎわっています。

高台の参事教会では結婚式が行われていました。




教会までの路地はとても古くて、ほいほい入りこんでしまいます。







市場あたりはいろんな露天が出ていて歩いてまわるだけで楽しめます。




桟橋の先は恋人たちの特等席で、一人旅の方はちょっといらつくので気を付けてください。
うそです。お幸せに!





旅の話し 06

2008年10月16日 | Weblog

~ムルテン/モラ 01~
ベルン滞在中にムルテン/モラという街に行きました。
ベルンからblsという電車に乗って、35~40分くらい。
ムルテン湖というそんなに大きくない湖のほとりの街。
ベルンと違って日本人はほとんどいません。
こじんまりとして旧市街を抜けるとすぐに湖が広がり、ヨットやフェリーが湖上に並んでいます。

あまり天気がよくなかったのですが、フェリー乗り場辺りをぶらぶらしていると、どこからか楽隊の演奏が聞こえてきます。見回すと、湖を回る小さなフェリーの上でオレンジ色の衣装を着た20人ほどの楽隊があまりリズムの合っていない演奏をしていました。湖畔には地元の子どもや散歩中のおじいさん達がちらほら。
曇り空の中鳴り響くトロンボーンや太鼓、チューバやマラカス。
遠くで見ても分かるほど、楽隊の全員が飛んだり跳ねたりして楽しそうに演奏しています。
エサを与えられた犬みたいに、楽器を鳴らすのが楽しくて楽しくてたまらないー!
という演奏。それが空気の振動で伝わってくるんです。
まさか、そんなことはないと思いつつも楽しくなってくるんです。
指揮する人も含めて、オレンジ色の集団が湖の真ん中で飛び跳ねてラッパ吹いて、遠くの方へ去っていきました。

テンションなんて一瞬にしてどうにだってできるもんで、そうやって思うと楽しいことはこんなに近くに沢山あるんだなぁ、と嬉しくなって、一人で湖岸から大拍手していると、あっちからもこっちからもどこにいたのか拍手喝采。
遠くの岸辺からもブラボー!
向こうの林からも最高!
どこにいたのか沢山の拍手が聞こえます。
すると楽隊はもっと調子づいて、飛ぶ跳ねる。
どんどん船は遠ざかり、見えなくなったけど、音楽はいつまでも湖に鳴り響いていました。

なんだかやる気が出てきたぞ




旅の話し 05

2008年10月12日 | Weblog

~ベルン 05~
ベルン郊外にはスイス出身の抽象画家パウルクレーの美術館、パウルクレー・センターがあります。
12番のトラムに乗って20分(3.8CHF)、常設展20CHF。
館内は写真の撮影禁止です。
ベルンには美術館や博物館が沢山ありますが、クレー・センターは私が一番観たかった美術館です。
建築家のレンゾ・ピアノ設計の美術館はベルン郊外の小高い丘にあり、美しい曲線と、美術館の半分が土に埋まっているのが特徴的。
クレーが生涯残した1万点あまりの作品のうち4000点がここに展示・保管されているのです。

館内の撮影禁止なので、撮影の仕事は美術館の外観のみで、後は館内のロッカーにカメラをぶち込んでじっくりと見て回りました(この日は雨だったのでベルンに戻っても他の撮影ができないから余計にゆっくり)。

年代を追って絵を見ていると気づくのは彼の残した「押し花とその絵」が多いこと。
自然の成長形態に対しての強烈な好奇心と洞察力の凄まじさがノートの端くれやカンバスに残されています。
草花を収集してはそれを描く描く描く!
その断片や花弁のバランスを絵ではなくてまるで図のように描いているのです。

そういう図(幾何学模様)と抽象画って結びつきの薄いものに感じるのですが、むしろ逆なのかもしれないと思いました。
様々な生命に潜むその細胞の形作る模様は、自然ではあるけれど、それはイコール科学だ。
建築学であり、物理学であり、生物学であってそれを有りのままに描ききること、それは芸術だと思う。
それからそのなんらかの設計図(クレーでいうなら草花の)を自分なりのバランスで頭の中の世界と結び合わせた図に描き上げたらたまたま抽象的なものと言われる画になった、というかんじでした。
だから彼の抽象画は単なる想像の産物というだけではなくて、自然科学を突き詰めた一つの図のように思う。
1890年代後半のドイツで芸術を学んだクレーですが、それが当時パリであったならまた違うものになっていたかもしれません。
「もし西洋の人間が心の内なる世界を解明し、意識の最深層から表層に浮かび上がってくるイメージをを追求しようとすると、その場合には必ず」ドイツ観念論の精神が現れる、とさえ言われた19世紀後期においてクレーがドイツに傾倒したのは必然的なことなのかもしれません。
でもそういう評論は専門家の方々の分析に任せておいたほうがよさそうです。

感じたのは分析力と洞察力です。
つまり興味のある一つの対象に対して脇目もふらず、しかも自我をほぼそっちのけで没頭する(没頭する=したい、というのは自我かもしれませんが)ということ。
自分の中の事実を忠実に再現すること。
それだけなんだ、と思う。

そして全然なんの説明にもならない文を書いてしまった。

ようは谷川俊太郎氏がクレーの絵に詩をつけた本「クレーの絵本」が好きでよく読むんです

そこへゆこうとして
ことばはつまづき
ことばをおいこそうとして
たましいはあえぎ
けれどもそのたましいのさきに
かすかなともしびのようなものがみえる
そこへゆこうとして
ゆめはばくはつし
ゆめをつらぬこうとして
くらやみはかがやき
けれどもそのくらやみのさきに
まだおおきなあなのようなものがみえる


.........................
それらの絵を観に行きたかった、というただそれだけなんです。





旅の話し 04

2008年10月10日 | Weblog

~ Bern 04 ~
ベルン大聖堂の一番奥の像。
ステンドグラスはもちろんきれいだったけど、地味な色のこの像がこの教会の本尊なんだな、と思う。
すごく質素なんだけど、無駄のないたたずまい。
私はここまでシンプルになれないな。
無駄も多いな。
が、無駄があるから余計なものをそいでいけるのだな。
だとしたら無駄なことこそ無駄ではないのだな。
でもあれだな右肩に生えてる毛は無駄だな。
いや、これはこれできっと何か意味があるのだ。
無人島でボタンがとれたらこの毛をちぎってボタンを縫い付ける可能性だってゼロじゃないし。

でも針は持ってるんかな。

そういう考えですら無駄ではないのだな。





旅の話し 03

2008年10月08日 | Weblog

~Bern 03~
ベルン大聖堂が完成したのは1893年。
創り始めたのは1421年です。
450年以上もかけて完成したわけです。

ステンドグラスの数の多さ、美しさには唖然とするばかり。
でも近づいてよく見てみるとただきれいだけなんじゃなくて、1枚1枚のガラスに描かれた絵は人間のリアルな一面が描かれていました。
それが集まって、一つの大きな物語を完成させているように見えます。
生や死や苦悩、仏教で言うならば人間の煩悩を表現しているように感じました。
宗教に関する芸術はきっとそういうものなんだろうけど、いざ静まりかえった聖堂の中で面と向かって見てみると意味より先にその絵の情念のようなものを感じます。

静かなはずなのになぜか強く激しい感覚がそこにあるような気がします。
宗教を信仰する精神は私には皆無ですが、それでも信仰という精神から生まれた文化や芸術(新興宗教は除く)に念のようなものを感じるものもあります。
人の歴史は信仰の歴史なのかもしれないなとも思います。
アニミズムのように対象が霊魂であったり、聖人を偶像化するものであれ、実存する身近な人であれ、自分自身を信仰するであれ、国や大地やありとあらゆるもの。
少なくとも、それは神さまじゃなくても何か心の内でよりどころにしている存在が人それぞれあるのかもしれません。
その一つのよりどころという価値観を強要したり、それがあたかも正しい導きだというようなことをいううさんくさい教えではなくって、生身の人が苦悩し、決してきれいごとではない「生きる」ということを生々しく描き残したこの1枚1枚のガラスだからこそ人の足を止め、説得させるだけの力があるのだと感じました。




旅の話 02

2008年10月06日 | Weblog

~Bern 02~
ここはベルン大聖堂の見晴し台。
ベルンの街が一望できます。
やっぱりベルンは小さくて素敵な首都だ。
もちろん後ろにも街は続いているのだけど、それでもそんなに大きくはない。
今見えてる部分がベルンでも一番古い地区、1405年頃からの街並を残しています。
高い所が嫌いな私はもうこの時点でほぼギブ。
笑われるかもしれませんが、この高さでも写真撮るのがやっとです。
けど、まだこの頃はこの後に登る3000m以上の山々の高さをしらないのです。
5月にミュンヘンの展望台に上がった時はそれでも同行者が居たので怖いのもネタにもできたけど、今回はそれもできずちょっとずつ石の階段を登りました。

降りる時はもちろんダッシュです。







旅の話 01

2008年10月04日 | Weblog

~Bern~ 
ベルンはスイスの首都です。
チューリヒやジュネーブがよく聞く街の名前ですが、スイスの首都はベルンというところ。

見所や観光地は沢山ありますが、ブログなので個人的な感想を書いていこうと思います。
それからガイド的なものは本やネットなどたくさーーーんあるのでそういうのもやめてほぼ感想です。

今回は3週間ほどスイスの取材をして来ました。
本当はチューリヒに最初一泊したのだけど、あまりの時差ぼけで日記も写真もあまりなかったのでちょっと飛ばします。

ベルンは首都だけど、日本でいうと京都みたいな雰囲気です。
とにかく古い。建物も路地裏の空気でさえどこか歴史を感じさせる面持ちで、首都とはいえ東京のようなビルが建ち並び、満員電車でという感じではありません。
そして街として密集している地域はとてもこじんまりしていて、歩いて回るだけなら2~3時間あれば回れる大きさです。
ベルンには3日間ほど滞在したのですが、その中で印象に残ったのが噴水の多さです。
チューリヒについてから、1リットルのペットボトル水を買い、そのボトルを使い回していたのですが本当に噴水が多くて助かりました。
いたるところで水が沸き、水場の側で多くの人が集い、まるで変わることなんてないんじゃないかと思ってしまうような時間が流れています。

そこに変わらずに水があるということはどれだけ人を安心させるのだろう、と思います。
人も犬も。
安心するということが生き物の精神をどれだけ満たしてくれるんだろう。
そこに流れ続けていると信じて疑わないことのできるもの。
そこにあり続けてくれると信じて疑わないことのできるもの。
そしてそんなものは存在しないのだ、ということを知って初めてその有り難さを痛感すること。
と、すでにぼろぼろになったペットボトルで水~と歩き回り噴水を発見した時に思いました。



イカ弾きのポムさん。

2008年10月03日 | Weblog

世界で一番きれいな音を出す楽器はイカです。
そのためイカ弾きのポムさんはいかにイカの音色を引き出すかに真剣です。
よく晴れた朝一番に誰もいない、何もない空の下にポムさんはイカを干します。
イカはまるでイカ自体が音色のようにとてもデリケートです。
それをよく知っているポムさんは波打ちぎわで、イカがもっともきれいな音をしみ込ませることができる場所と時間を選びます。

すー と雲が すー の音をあげます。
からっ と太陽が からっ の音をあげます。
りんぴんりんぴん と波が 一番の高音をあげ、 
ぷわっつ と泡がはじける音をあげます。
ゆうぐれには ぐわっはっは と風が吹きました。

丸3日、イカは音という音を10本の足にしみ込ませてゆきます。
最後の晩、夜の調律師がやって来て静かに歌いながらイカに入った全ての音を合わせます。

4日目、ポムさんはやってきてイカの一つ一つの音を確かめるように10本の足に弓をあてて弾き始めます。
少しのゆがみや反りがないか確認しながらつやのある音で弾くのはイカのソナタ。
ポムさんは言わずと知れたイカ弾きの名人で、街の演奏会ではちょくちょくイカを持ってステージに上がります。
けれどもポムさんはイカづくりの名人でもあるのです。

そしてイカはこれから自然乾燥をさせます。
有名なイカのなかには100年も乾燥させたものもありますが、ポムさんはできたばかりのイカのみずみずしく柔らかい音が大好きで、ポムさんにとっては街の演奏会よりもできたての真っ白なイカを青い海を見ながら弾く方が好きなのです。
それは海の中を泳いでいるような音がするからです。