日記

Hajime

ロウソウ

2006年06月30日 | Weblog

あいまいなものだった
まるで夜の月の時間にそれがカーテンを通してヒラヒラと泳いでいるような淡い明かりだった

リョウトはそのぼんやりとした明かりに近づこうとそれを追いかけていた
後ろの方はどうなっていたかは分からないが、前にはその明かりに続く道はなかった

ただぼんやりとした明かりに近づいて届こうとしていたが、まるで全く届かないような距離があるようにも感じていた
リョウトと明かりの間には果てしない距離と時間のズレがあり、空間自体同じ中にあるようにはないと思われるほどだ


それに近づこうとすればするほど、次第にその明かりに近づくために向かっているのではなく、何か後ろから追いかけてくる影のようなものから逃げているのではないかという不安にもかられたのだ
その後ろの影は果てしない闇で、冬の夜の海の様に静かに黒く、恐ろしい空間の広がりだった

もはやリョウトはそれから逃れることに必死であり、一度立ち止まりそこに座り込んでしまうとその影にのみこまれ、再び出てくることもなく、その一部になってしまうのを恐れた

しかし、それに気づいてしまった時にはもはや走り続けるのは困難で、その影が追いかけてくるのを拒む為に命を少し削ってはその影に放り投げてやった

けれどもいつの間にかその黒い海の一番目の波はリョウトの肩にしがみつき、次の瞬間には彼を丸ごとのみこんでいたのである



一体どれくらいの時間が彼を追い越していったのだろうか
眠っていたのか、起きていたのかも彼には分からなかったが、気がつくと我にかえっていた
そこには何か懐かしい空気の匂いが漂い、彼の肩には一匹のネズミのようなものがのっていた
それはまるで深い山の中の一本の木の足下に永遠に隠れていたかのようにひどく怯え、震えていた
それは確かに彼の肩をつかんでのみこんだ影そのものだと彼は気づく

それは恐ろしく悲しい闇の魔物ではなく、一匹の弱々しい存在で、それ自身はひどく孤独そのものを恐れていたしリョウトにはそれがとても愛おしく思えた


そしてリョウトはそれからゆっくりと歩き出しぼんやりとした月明かりのような明かりに近づいていった
今度はその一匹のネズミを肩に乗せて

 福間 一
 Photo by 志保

手と手

2006年06月27日 | Weblog
例えばこの左手に
隠しきれない矛盾を握りしめて
例えばこの右手には
恥ずかしいくらいの愛をつめこんで

僕ら生きているとして

あなたとこの両の手をつなげるだろうか
向き合って2人で手をつなげるだろうか


想いを言葉に、形にするのは難しい
手をつなぐことも本当に苦しい

時に拒んだり
自分から離したりするんだろう


例えば左手に
隠しきれない矛盾を握っていて
例えば右手に
恥ずかしいくらいの愛をつめこんで

僕は左手を差し出せるだろうか
このどうしようもなく恥ずかしい泥のような矛盾を
わかってもらえるだろうか

そしてその前に
僕は右手を差し出してあげられるだろうか
あなたを許してあげられるだろうか



そしていつの日か いつの日にか
知らない誰かともつながれるだろうか
国境も偏見もなくつながれるだろうか
大人も子どももつながれるだろうか
その左手と右手でつながっていけるだろうか
体でも言葉でもなくつながれるだろうか

愛なんてものは与え、与えられるものなんかじゃないとして
ただそこにあるものだとして

つながりはきっと本当は
何より

何より

何より


何より簡単だ


その手をどうか離さないでほしい
僕はどうしようもない僕のどうしようもない手を
決して離しはしない

福間 一

風の中

2006年06月24日 | Weblog
さあ、動き出そう。楽しみながらお気に入りのチャリで☆
大きい公園にバケツを3つ抱えてわくわくしながら。
ここ何年かバケツドラムを叩こうとあれこれ試行錯誤したんだけど最近やっと心地良い音がでるように改良できたの。

よし!やっちゃうよ~☆

叩き始めて15分くらい。
気持ちよくなってきた。
それが体の外に音になって響く
どこかで手拍子が聞こえる
う~ん、たまらん☆

がしかし20分くらいして
チャリで近づいてくる気配が
「兄ちゃん、ここは打楽器禁止なんだよ。バケツは楽器じゃないけど、ちょっとね~」

分かりました。警備のおじちゃん仕事やしね。
うん、聴いてくれる人もいればうるさいと感じる人もいるしね。

しょうがないね..............などと思っている場合じゃないっす!
次のポイント探すっす!周りはギターやらサックスやらなんやらかんやら、でも打楽器はダメみたい。
そしてバケツはダメみたい。でもね、いい音するんだよ。だから次の場所では音は少しおさえて叩こう。
それでも充分いけるはずっす。


池の対岸に移る
乳母車の家族連れ、赤ちゃんがリズムに乗って乳母車を叩く。
かわいーーっす!!
えへへ、一緒に写真撮ってもらったっす。

がしかし20分後。
また違う警備員さんが。
「バケツはちょっとね~」

うん、しょうがないよね。
音はちっさくしたんやけどね。
悲しいね.........などと思っている暇はないっす!
叩ける場所探すっす!


ギター弾きに貸す部屋はない
ドラム叩きに叩く公園はない
と思ってる場合じゃないっす!


だんだん公園の隅に追いやられてきた
でもいい音になってきた☆
なんだ、みんな楽しそうに踊ってるじゃん。

10分後。来た。3度目。
さすがにもう無理だ。

タ~ラ~ララ~ ラ~ラ~ララ~
向こうでバイオリンさんが「蛍の光」を。
痛い。痛いっすそれ!

感じ方は人それぞれやしね。
うん、悲しいね...................などと思っている場合じゃない!無駄にくじけない!


ひとまず少し離れよう。

おっ、ここはいいかんじ☆という場所を見つけた。
というより何より警備員さんが見当たらない。

叩き始める。


内側から放たれるエナジー
溢れ出る音
喜びも悲しみも全部混ぜて
届け 届け 届いて  
響け 響け 響かせろ

もはや言葉では到達できませんでした。
気持ちよさとそれを内に留めず
外に絞り出す  放つ

目を開けると目の前で誰か踊ってる
男か女かわからんかった不思議な人
ただ笑顔が最高☆
楽しそう☆
楽しい☆

互いに研ぎすませて
心で感じる
冗談みたいなつながりだけど
それを信じてしまう本気で
やわらかくて優しくて嘘のような本当の繋がり


結局2時間2人でその人はボンゴ
僕はバケツでジャムる
たまに民族ダンスみたいなのをその人は踊る
僕はひねり出す。音。
人も犬も猫も蝶もカメムシも木も風も楽しそう。

その後「また!」と言い合って分かれた。
交わした会話はそれだけだったけど。
良かった。

楽しければいいじゃん。ま、そうなんやけどね。
でもなんか違う。「良かった」という感じっす。
いや~良かったっす。僕はその感じが大好き。
また出没するっす。

 福間 一

キヅカミ

2006年06月23日 | Weblog
タン タタン タタン タン
彼は薄明るい海岸を歩く
波打ち際に腰掛ける

左手の少し前方 海面には
無表情に笑いながら踊る者

その右側には
無表情に泣きながら踊る者

ああ そうか ここは彼の感情の波打ち際
時に激しく波をうち
時に穏やかに波はよせてくる

「戻ってきなさい」
誰かが後ろから叫ぶ

「さあ海の中にお行きなさい」
誰かが肩をたたく

感情の波打ち際に座り見つめる
美しくもあり 悲しくもある
暖かくもあり 冷たくもある


そのどちらもが踊る


全力で振り返り 走って遠ざかる
それは彼のあさはかな「欲」か
彼なりの「真理」だったのか




タン タタン タタン タン
公園でバケツドラムを叩く
目の前でおばあさんが手を叩く
微笑みをくれる

タン タタン タタン タン
子ども達に囲まれて
あれこれ話しかけられる
叩かせてくれとせがむ子ども
ダンゴムシを大量にくれる子ども
微笑んでいる


心が体に戻ってくる




いつでもただ真っすぐ歩けるか


タン タタン タタン タン
おばあさん、子ども達に
最高に感謝

物事をシリアスに捉え、考えることが
答えに近づくとは限らない

けど繰り返し、性懲りもなく繰り返し
感じ、考えた後で
そしてたまに誰かから力をもらって
また生きて明るくハッピーになれる

明るさも、そして暗さも繋がっている

よし、8歳の子どもにもらったダンゴムシに名前をつけてやる
最高にハッピーなやつをあげよう☆
うん、オスかメスか... 分からん
誰かダンゴムシのオスメスの見分け方を教えてください。

 福間 一

2006年06月20日 | Weblog
夕日の美しい島だった
雨の3日目  少しだけ西に陽が顔を出す
正直迷っていた 今にもまた向こうから雨が降り出しそう
天気予報では明日は久々に快晴になるという

おばあが僕の泊まっている部屋の隣の納屋で何か作業しながら一言
「もしかすると夕日見れるかもよ。明日という日はないさ~」


もうね、ダッシュ。そらもう相棒のぼろぼろのビーサンでダッシュですよ。
何かね、無理して力入れて今日を必死に生きろ!
というよりは今走りたいなら走ればいいさ、それも自分次第さ~。
みたいに聞こえて刺さったど真ん中
それは喝というより励まし
もうねまっしぐら。夕日が見れるかどうかなんか忘れて、ただダッシュ。


そしたら見れたの雲の隙間から少しだけ、沈む陽。
海ほたるも見れたりなんかして

速攻でOrionビールで乾杯ですよ
おばあに


晴れた次の日、朝一番
部屋の前の石垣の前をおじいが歩いている
話しかけてみる
急にその辺のアロエをむしるおじい

「これ食ったら病気全部治るさ~、俺の朝飯はいつもこれさ~、日本中の学者が俺の話聞きにくるさ~。」

ほんとかよ。すごいな。
とにかく食わずして味も分かるまい
やらずしてとやかく言えますまい


苦っ!  アマゾネス....

でもわくわくした。むずむずした。



今朝、冷蔵庫のごぼうを食ってみる
食わずして味は分かるまい
やらずしてとやかく言えますまい


苦っ!  アマゾネス....

わくわくむずむずするのに理由なんてないじゃない
アロエでもごぼうでもスッポンでも


そうだ、今日は公園の池にスッポンを見に行こう
むずむずするのに理由なんてないじゃない



「明日という日はないさ~」
無理することなく、時には必死に、むずむずには正直に

心はいつも自由さ

東京Blue Weeps 福間 一
  Photo by 志保

ばきゅんと胸をうつ

2006年06月19日 | Weblog
スタジオでドラムの修行を終えた後
いつもは晴れたら近くにある鉄橋の階段の一番上で野外練習のようなことをするんだけど
あまりに天気が良いので突然、いえ半分は計画的に僕のお気に入りのチャリ(チャリなのになぜか木目なんです一目惚れで購入)でぶらつくことにあいなりました

最初は何も考えずただ風と空気を気持ちよく吸って、雲や親子連れや猫を眺めながらぶらぶら
そして僕は知らない路地にいつも心奪われるためついつい、ほいほいと入っては迷い
迷っては開き直り、その後少し焦る。
まったく誰かの人生みたいなもんです(はい私です)

と考えていると、ちょっとした川にたどりついて少し眺めていました
先日、ある番組でとある川に大量発生したカゲロウを特集していました
カゲロウの体内の栄養素のほとんどは人間の流した汚水なのだといいます
それを食べたカゲロウは大量発生したのです

人はそれを必死に駆除する
駆除?

カゲロウは生きている
人間の流した汚水を食べ

カゲロウは川の汚れを浄化させるかのように汚水を食べる
川の汚れを食い止めるかのように食べる



どちらが正しいとか、どちらが間違っているとか
そんな答えは僕にはよっぽどでないと出せません
考える難しさや考える喜びを超えて
物事を言い切ることは僕にとって困難を極めます




けれど想いはあるのです こんなところにも

自分のことをたなにあげているのかもしれん
しかし想いはある
胸はうたれる



僕が今何をしたいか、何をするべきか
ということと今何を感じるか
それらをどちらも大切にしたい
自分のしていることに関係ないようにみえるけど
それもまたつながっている 
なぜならそれはたとえささいな出来事でも
自分の出す音やそれ以前に僕という人間がどう生きるのか、どう生きたいかということにつながる
感じ、考えることを忘れたくはないな

そして今日もドラムをうちます
今日もまたドラムをうつのです

  福間 一

ハイテンション ブルース

2006年06月18日 | Weblog

僕は今が一番楽しい
あの頃は楽しかったなどと思いたくはない


たとえどれほど離れていても
きっと 今も あなとたとつながっていると信じている


そんな保証も  つながりの答えなどないのだけれど

この空で  海で  この月夜で
僕達は今もつながっていると信じたいのです



僕は今が一番楽しい


それでも時に公園のベンチに腰掛けて
今日の全ての出来事を燃やしてゆっくりと西に落ちてゆく
大きく赤い火のしずくのような夕日を見つめあなた想う

僕は今が一番楽しい

いつかまたあなたと笑顔で会えるその日まで



ハイテンションブルースにのって
進め しゃくとり虫のように早く!

  福間 一
  Photo by 志保

うかれた僕は聴いたことのない歌を歌う

2006年06月16日 | Weblog
今、久しぶりに太陽が顔を出したと思ったら
雲の障子が優しくやぶれてその間から見せてくれたような青空の姿があった



すごい!
言葉にならん!



こんな出来事で全てがすがすがしく
心がむずむずして
思わず外に飛び出して
一人スキップをきめる

その姿を見る親子が僕から遠ざかる
でも気にしない
むしろ誘いたい



道にはあじさいが咲いて
頭の上ですずめが鳴いて



僕は一人スキップをきめる
あざやかに するどく!
楽しそうに!


網戸から顔だけ出してる猫に
話しかける
ニョーウ!ニョーウ!

でも向こうからは話しかけられない
むしろなめてるなお前は!


猫のため息が聞こえてきても一人スキップをきめる
右足を高く
自然に感謝しながら
できるだけうかれて!
空を見上げて!
勝手なリズムの勝手な歌を歌う!
へいお姉さん僕の沸かした麦茶を飲まないかい!といったかんじの



一人スキップをきめる
口をとんがらせて口笛を吹きながら!
できるだけ気持ち悪い笑顔で!
息切れしても心はむずむずさせたまま!



うひょー!
また会えたね青空さん
雨も、雲も、雷も、雪も風も好きだけど
たまには君も顔を出さないとさみしいんだよ


僕は君に会いたい!

   ふくま イチゴ☆


逆立ちして反対の世界を眺める

2006年06月16日 | Weblog
美しくありたい
僕なりに

どうしようもない自分が
どうしようもない場面で
本当にどうしようもなくからまわり
どうしようもない悪循環におちいる
それも自分だと受け入れる
時に素直に受け入れることもできるが

時にその答えがひねくれるのに大きな助けをくれる


心の奥で声がその答えに疑問符を投げつける
今美しくあれと


弱さであれ 
したたかさであれ 
とまどいであれ
全て笑いとばす強さであれ
島のガジュマルのように
校庭の隅の銀杏のように
安売りに出されてしまった賞味期限ぎりぎりの野菜のように
真っすぐでなくても自分なりの美しさ



芸のない犬 走る
不細工でぎこちなくとも
自分なりの美しさで
日々生きる

生きたい


芸のない犬 走る
みっともない憧れを夢みて走る
夢は正夢



美しくありたい
自分なりに
あくまで挑戦し続けるのは自分自身に対してで
世界が変わるのは
自分の感じ方次第
世界が変わるのならば
ぎこちない美しい世界で生き
僕なりの美しさで世界をとらえたい



繰り返し振り出しに戻って
もう少しで感情の何かが繋がりそう

東京Blue Weeps 福間 一

一瞬の出来事

2006年06月14日 | Weblog
永遠に続くことなんてない
限りないものなんてない

幼い頃、隣のお寺の門に登って遊んでいた
幼い頃、父にはよく怒られた
「危ないから登るな」「バチがあたるからそこであそぶな」と

僕は見た
そのお寺の門に登ってこっそり見つけてしまった
幼い頃の父がそこに登って柱に書いた父の名前を


永遠なんてないと思う
限りなく続くことなんてないと思う

だけど僕は確かにそこに永遠を感じた
その一瞬に時の流れの永遠をみた

永遠とは物事が続くことではなくて
その一瞬に過去と現在と果てしない未来につながる想い
それをその一瞬に閉じ込める

瞳を閉じると風を感じます
その匂いも、その色も、その音も全て一瞬の出来事
その一瞬に想いを馳せます

そしてその想いを抱いて未来に輝きを放つ想像を
繋がった全てに想いを馳せて未来に輝きを放つイメージを

       福間 一