昨年2/9にチェット・ベイカーのシングスの話をした時に、これもお気に入りと云っていましたので少し紹介しておきます。
■1)その頃のチェット・ベイカーとメンバー
ロスでパシフィック・ジャズに最後の吹き込みをした後チェットは衰退していきつつあるウエストコーストジャズと麻薬(ヘロインとマリファナ)から逃れる為と云われていますがニューヨークに移り住みます。そこでリバーサイドに吹き込みを始めます。その第2作が今回紹介する「CHET BAKER IN NEW YORK」です。
第1作はチェット・ベイカー・シングスの再演ともいえるアルバムで、この第2作はジョニー・グリフィンの参加やマイルスのリズム隊のチェンバースとフィリージョーの起用などパシフィック・ジャズ時代とは違ってハードなチェットが聴けます。ジョーニー・グリフィンは、当時ブルーノートからリバーサイドへ移った頃で看板アーティストの一人です。一度聴けばすぐわかる独特のトーンと節回し、このアルバムでも彼の特徴が良く出ています。ジョーニー・グリフィンは時としてオーバー・ブロウ気味になることがあるのですが、ここでは共演者として押さえたやや控え目なプレイですが奥底に秘めた熱いソウルも垣間見えます。ピアノのアル・ヘイグの優雅な美しいプレイとグリフィンのよくスイングするプレイもチェットのイマジネーションをかき立てているように思えます。
リバーサイドの当時の方針もあったのでしょうが、マイルスの”SOLAR”が収録されていることからも、当時のチェットが、マイルスのオリジナル・クインテット的なプレイに心引かれていたということは容易に想像されますが、この次の作からはパシフィック・ジャズ時代の耽美な雰囲気のアルバム作りに戻ってしまうので、チェットがハードバップの洗礼を受け、最もハードにプレイしているのがこのアルバムです。逃げのハードバップかもしれませんが、ポルカドッツで魅せる繊細で深みのあるアドリブが聴き物です。
■3)”CHET BAKER IN NEW YORK”
ジャケットは、

チェット・ベイカー・シングスで”バット・ノット・フォー・ミー”にノックアウトされたが、”同じチェット・ベイカーのトランペットも聴きたくなって、菅野邦彦のフィンガーポッピングでお気に入りになった、また、京都ブルーノートの店じまいの直前にスガチンがライブに来た時にリクエストした”ポルカドッツ・アンド・ムーンビームス”の入っている”イン・ニューヨーク”が欲しくなってを手に入れた。この曲はビル・エバンスも良いですね。
チェットのアドリブは、リー・モーガンのような一瞬の閃光でもなく、ブラウニーのような全てを照らす陽光でもない、春の縁側にさす日光のように暖かく人を包み込む優しさを感じます。実際の彼は女性マネージャーがウンザリする程の自己中心的で嫌な性格だったようですが、人間性と芸術性は必ずしも一致しまないのかもしれません。またハードバップに最も傾いている彼の充実した熱演が聴けます。
■4)”CHET BAKER IN NEW YORK”の各曲とメンバー
この中では、やはり、”ポルカドッツ・アンド・ムーンビームス”が一番です。歌詞はハッピーエンドですが、人生の楽しさ、辛さ、悲しみを全て知ったような哀感溢れるアドリブが聴けます。しかし”HOTEL49"や、”SOLAR”や、”FAIR WEATHER”もなかなかいいです。
パーソネル :Tp Chet Baker Ts Johnny Griffin(1.3.5.のみ) P Al Haig
B Paul Chambers Ds Philly Joe Jones リズムセクションなのにちょっとやり過ぎというご意見もありますが彼としては普通。
録音日 :1958年9月?日 Reeves Sound Studios, New York City・・・・やはり1958年はハードバップの全盛期ですね
1.Fair Weather (Benny Golson) 06:55
アップテンポの軽快な曲。飄々とした感じのチェットのトランペットが心地よい。アップゴーイングな気分に誘ってくれる。ソロは、ベイカー~チェンバース~グリフィン~ヘイグ と続くが、皆さん良くスイングして唄っている。
2.Polka Dots And Moonbeams (Burk-Van Heusen) 07:57
これが一番のお気に入り。チェットのアドリブは、凄いシンプルなのに何故か奥深いものを感じる。星の中を漂い、彷徨うようなアドリブが何とも趣きがある。ベイカーの人生がにじみ出ている。ソロは、ベイカー~ヘイグ~チェンバース と続くが、ヘイグのソロは格調高く美しいし、チェンバースのソロも良く唄っている。
3.Hotel 49 (Owen Marshall) 09:52
これも結構お気に入り。ユニゾンのイントロより、ソロは、グリフィン~ヘイグ~ベイカー~チェンバース~フィリージョー と続く。グリフィンの良くスイングするホットなソロ、ヘイグも流れるようにホットで変化もあって飽きない。ベイカーは適度な緊張感を伴った素直でシンプルなお気に入りのアドリブを聴かせてくれ、チェンバースの弓弾きも良くスイングして唄っている。
4.Solar (Miles Davis) 05:49
Miles は ミュートでしたが、チェットはオープン。ミディアムテンポのテーマからアドリブに入る。ソロ順は、ベイカー~ヘイグ~ベイカーとなる。ヘイグのソロは軽く流しているように聴こえるが適度なリラックス感もあって良い。最後はフィリージョーとの交換の後、ヘイグでエンディング。
5.Blue Thoughts (Benny Golson) 07:35
ホーンのアンサンブルのイントロのテーマから入る。ソロは、ベイカー~ヘイグ~グリフィン~チェンバースと続く、ベイカーは心情を吐露するかのようなバラードを聴かせ、ヘイグのソロも美しい。グリフィンは、クールさの中に時折熱いものも魅せる。チェンバースのソロは落ち着いた心にさせてくれる。アンサンブルで厳粛にエンディング。
6.When Lights Are Low (Williams-Carter) 06:54
ベイカーのテーマから入るが、この軽快な曲をベイカーは実にハッピーな素直なアドリブでプレイしていく。こっちの心もリラックスしてしまう。続くヘイグやチェンバースも流れるようなタッチでスインギー。チェンバースのピチカートも乗り乗りでユーモアたっぷりに唄ってくれる。
7.Soft Winds [Bonus] (Benny Goodman) 06:29
重厚なイメージのイントロより。ソロは、ベイカー~ヘイグ ~チェンバース。ベイカーはスローテンポのこのバラードをアンニュイなムードで適度の緊張感も伴って美しくアドリブする。続くヘイグはファンキーでスインギー。チェンバースのソロも重厚で静かに重く唄う。少し重厚な16小節のブルースをウォーキング系のファンキータッチでコミカルに料理してプレイしている。
■5)You Tube
今は全曲上がっています。
■1)その頃のチェット・ベイカーとメンバー
ロスでパシフィック・ジャズに最後の吹き込みをした後チェットは衰退していきつつあるウエストコーストジャズと麻薬(ヘロインとマリファナ)から逃れる為と云われていますがニューヨークに移り住みます。そこでリバーサイドに吹き込みを始めます。その第2作が今回紹介する「CHET BAKER IN NEW YORK」です。
第1作はチェット・ベイカー・シングスの再演ともいえるアルバムで、この第2作はジョニー・グリフィンの参加やマイルスのリズム隊のチェンバースとフィリージョーの起用などパシフィック・ジャズ時代とは違ってハードなチェットが聴けます。ジョーニー・グリフィンは、当時ブルーノートからリバーサイドへ移った頃で看板アーティストの一人です。一度聴けばすぐわかる独特のトーンと節回し、このアルバムでも彼の特徴が良く出ています。ジョーニー・グリフィンは時としてオーバー・ブロウ気味になることがあるのですが、ここでは共演者として押さえたやや控え目なプレイですが奥底に秘めた熱いソウルも垣間見えます。ピアノのアル・ヘイグの優雅な美しいプレイとグリフィンのよくスイングするプレイもチェットのイマジネーションをかき立てているように思えます。
リバーサイドの当時の方針もあったのでしょうが、マイルスの”SOLAR”が収録されていることからも、当時のチェットが、マイルスのオリジナル・クインテット的なプレイに心引かれていたということは容易に想像されますが、この次の作からはパシフィック・ジャズ時代の耽美な雰囲気のアルバム作りに戻ってしまうので、チェットがハードバップの洗礼を受け、最もハードにプレイしているのがこのアルバムです。逃げのハードバップかもしれませんが、ポルカドッツで魅せる繊細で深みのあるアドリブが聴き物です。
■3)”CHET BAKER IN NEW YORK”
ジャケットは、

チェット・ベイカー・シングスで”バット・ノット・フォー・ミー”にノックアウトされたが、”同じチェット・ベイカーのトランペットも聴きたくなって、菅野邦彦のフィンガーポッピングでお気に入りになった、また、京都ブルーノートの店じまいの直前にスガチンがライブに来た時にリクエストした”ポルカドッツ・アンド・ムーンビームス”の入っている”イン・ニューヨーク”が欲しくなってを手に入れた。この曲はビル・エバンスも良いですね。
チェットのアドリブは、リー・モーガンのような一瞬の閃光でもなく、ブラウニーのような全てを照らす陽光でもない、春の縁側にさす日光のように暖かく人を包み込む優しさを感じます。実際の彼は女性マネージャーがウンザリする程の自己中心的で嫌な性格だったようですが、人間性と芸術性は必ずしも一致しまないのかもしれません。またハードバップに最も傾いている彼の充実した熱演が聴けます。
■4)”CHET BAKER IN NEW YORK”の各曲とメンバー
この中では、やはり、”ポルカドッツ・アンド・ムーンビームス”が一番です。歌詞はハッピーエンドですが、人生の楽しさ、辛さ、悲しみを全て知ったような哀感溢れるアドリブが聴けます。しかし”HOTEL49"や、”SOLAR”や、”FAIR WEATHER”もなかなかいいです。
パーソネル :Tp Chet Baker Ts Johnny Griffin(1.3.5.のみ) P Al Haig
B Paul Chambers Ds Philly Joe Jones リズムセクションなのにちょっとやり過ぎというご意見もありますが彼としては普通。
録音日 :1958年9月?日 Reeves Sound Studios, New York City・・・・やはり1958年はハードバップの全盛期ですね
1.Fair Weather (Benny Golson) 06:55
アップテンポの軽快な曲。飄々とした感じのチェットのトランペットが心地よい。アップゴーイングな気分に誘ってくれる。ソロは、ベイカー~チェンバース~グリフィン~ヘイグ と続くが、皆さん良くスイングして唄っている。
2.Polka Dots And Moonbeams (Burk-Van Heusen) 07:57
これが一番のお気に入り。チェットのアドリブは、凄いシンプルなのに何故か奥深いものを感じる。星の中を漂い、彷徨うようなアドリブが何とも趣きがある。ベイカーの人生がにじみ出ている。ソロは、ベイカー~ヘイグ~チェンバース と続くが、ヘイグのソロは格調高く美しいし、チェンバースのソロも良く唄っている。
3.Hotel 49 (Owen Marshall) 09:52
これも結構お気に入り。ユニゾンのイントロより、ソロは、グリフィン~ヘイグ~ベイカー~チェンバース~フィリージョー と続く。グリフィンの良くスイングするホットなソロ、ヘイグも流れるようにホットで変化もあって飽きない。ベイカーは適度な緊張感を伴った素直でシンプルなお気に入りのアドリブを聴かせてくれ、チェンバースの弓弾きも良くスイングして唄っている。
4.Solar (Miles Davis) 05:49
Miles は ミュートでしたが、チェットはオープン。ミディアムテンポのテーマからアドリブに入る。ソロ順は、ベイカー~ヘイグ~ベイカーとなる。ヘイグのソロは軽く流しているように聴こえるが適度なリラックス感もあって良い。最後はフィリージョーとの交換の後、ヘイグでエンディング。
5.Blue Thoughts (Benny Golson) 07:35
ホーンのアンサンブルのイントロのテーマから入る。ソロは、ベイカー~ヘイグ~グリフィン~チェンバースと続く、ベイカーは心情を吐露するかのようなバラードを聴かせ、ヘイグのソロも美しい。グリフィンは、クールさの中に時折熱いものも魅せる。チェンバースのソロは落ち着いた心にさせてくれる。アンサンブルで厳粛にエンディング。
6.When Lights Are Low (Williams-Carter) 06:54
ベイカーのテーマから入るが、この軽快な曲をベイカーは実にハッピーな素直なアドリブでプレイしていく。こっちの心もリラックスしてしまう。続くヘイグやチェンバースも流れるようなタッチでスインギー。チェンバースのピチカートも乗り乗りでユーモアたっぷりに唄ってくれる。
7.Soft Winds [Bonus] (Benny Goodman) 06:29
重厚なイメージのイントロより。ソロは、ベイカー~ヘイグ ~チェンバース。ベイカーはスローテンポのこのバラードをアンニュイなムードで適度の緊張感も伴って美しくアドリブする。続くヘイグはファンキーでスインギー。チェンバースのソロも重厚で静かに重く唄う。少し重厚な16小節のブルースをウォーキング系のファンキータッチでコミカルに料理してプレイしている。
■5)You Tube
今は全曲上がっています。
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