ベッラのブログ   soprano lirico spinto Bella Cantabile  ♪ ♫

時事問題を中心にブログを書く日々です。
イタリアオペラのソプラノで趣味は読書(歴女のハシクレ)です。日本が大好き。

ホセ・カレーラス、オペラを引退宣言

2009年05月08日 | オペラ
ホセ・カレーラスも60を超え、とうとうオペラから引退を宣言したようです。
カレーラスが初来日したのは、レナータ・スコット主演のヴェルディ「椿姫」の相手役。
老練なスコットと比べ、いかにも坊ちゃんという感じで「まだまだこれからですね」という批評でしたが、またたく間に世界的なテノールとして活躍、次に来日したのはチレア「アドリアーナ・ルクヴルール」でカバリエ、コッソットと共演、女性の母性本能をくすぐる、と大人気・・・まもなく白血病に倒れ、劇的な回復、このころから既にオペラはほとんど歌っていない、本人もコンサート中心にしたいといっていましたが・・・。

カレーラスのリサイタルは何度も行きました。
歌は律儀なまでにキッチリしていて、正確無比な上、言葉に対する感覚の鋭さは彼が憧れたディ・ステファノと似ていましたが、あの底抜けの明るさとは違って悩みや悲しみにひたる暗いトーンを持っていました。

あの頃、女性ファンはカレーラスに憧れ、「オペラのヨンさま」のように人気がありました。
ある年、カレーラスのリサイタルとクラウスのが一日違いであったのです。
私は両方聴きましたが、まだ40代のカレーラスはひとつひとつを緻密に歌っており、好感を持ちました。
次の日、アルフレード・クラウスのリサイタル、彼の歌も緻密そのものでしたが、
あの高音がスリリングで高貴なまでの魅力がゾクゾクさせ、たまに前奏よりはやく歌ってあとでつじつまをあわせたり、というハプニングもありましたが、アリアが生き生きしていて、緻密ながらも細かくはない、どこか大勝負しているかのような歌唱の魅力に、ため息の連続でした。

そしてさらに年上のベルゴンツイは70の半ばを超えていましたが、若いころの声が保持されており、端正な歌唱をベースに、りりしいヴェルディのアリアは度肝を抜くほどでした。

ベルゴンツイ夫人の隣へ勝手に席を移動し、「ご主人は世界最高のテノールです。
誰もかないません。カルーソと同じです。」とイタリア語で話しかけたら、夫人は「うちの主人はもう老人よ、もうすぐ80なんだから」と笑いながら、でも心から喜んで答えて下さいました。
私がブラーヴォを連発していると、大喜びで「今日はいい日よ!」って。

カレーラスさんはいつも「青年」、円熟のベルゴンツイやクラウスが年齢を経た魅力で驚かせるのとはまた違って、「青年度」を保持し、神経質にひとつひとつを歌っているのがよくわかりました。完璧主義!良くも悪くも・・・。

彼のオペラは東京で「アドリアーナ・ルクヴルール」(コッソット、カバリエ、ミー先生共演)、大阪で「トスカ」これはロイヤルオペラ来日公演でカバリエがトスカ、・・・予算上、このふたつしか観ていません。

カレーラスは声だけに頼らず、その言葉の活かし方が「詩的」で、ほかのふたり、ドミンゴやパヴァロッティとは全く別の存在感で活躍したようです。
でも、話す声はちょっと鼻声でしたっけね。
私は・・・やはり夢中にはなれず、どこかで覚めていました。

「三国志」で言えば、ベルゴンツイは関羽雲長、パヴァロッティは張飛翼徳、そしてカレーラスは周ゆ、というところでしょうか。ドミンゴは?です。
諸葛孔明はもちろん、カップッチッリですよ。
曹操はギャウロフです。・・・すみません、勝手なことを。
コメント (8)
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