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華氏451度

我々は自らの感性と思想の砦である言葉を権力に奪われ続けている。言葉を奪い返そう!! コメント・TB大歓迎。

都知事と戸塚ヨットスクール(再掲)

2007-03-03 23:24:05 | 東京都/都知事

 喜八さんから「『戸塚ヨットスクールを支援する会』会長 石原慎太郎」というエントリのTBをいただいた。随分前だが私も戸塚ヨットスクールと都知事殿の話を書いたことがあるので、再掲しておこうと思う。(いつだったっけ、と記事一覧を探したら、何と去年の5月だった……その時のタイトルは「続・上からモラルのうさんくささ」)

◇◇以下、再掲◇◇

〈戸塚ヨットスクールと石原都知事・1〉

 前回のエントリで都知事が提唱する「心の東京革命」などに触れて「心の支配」への恐れを書いたところ、布引洋さんから次のようなコメントをいただいた。

【最近戸塚ヨットスクールの戸塚が刑務所から出所しました。彼の後援会会長が石原慎太郎です。戸塚のやった事は、石原慎太郎の教育方針を先取りした理想の教育です。戸塚宏によると、教育とは子供に恐怖を与えることだそうです。恐怖によって生徒の自主性を引き出すのだそうです。石原慎太郎が三選を考えているのは、都立学校を全部戸塚スクール風にしたいからです】(引用了)

 ここで簡単に「戸塚ヨットスクール」についてまとめておく。同スクールは家庭内暴力、不登校などの子供達を集団生活とヨット訓練によって「矯正、治療する」(スクール側の表現)ということで設立され、教育方針はいわゆる「スパルタ式」、というより「軍隊式」。規律に違反すれば過酷な体罰が加えられた。その結果として同スクールでは2名の行方不明者(合宿の帰路、海に飛び込んだ)と3名の死亡者が出、1983年に戸塚校長らが逮捕された。直接の逮捕容疑は当時13歳の訓練生をヨット上で角材などで殴り、死に至らしめたこと(傷害致死)。1審判決は執行猶予つきで、検察・弁護側ともに控訴。2審では執行猶予なしの実刑判決が下された。弁護側はそれを不服として最高裁に上告したが2002年に棄却され、全員の有罪が確定した。

 石原慎太郎はもともと戸塚宏の「畏友」だったそうで、1987年には「戸塚ヨットスクールを支援する会」の会長にも就任している。むろん今も同スクールの方針に全面的な賛意を表明しており、4月3日付産経新聞紙上で、次のようなエールを送った。

【生徒の死亡事故の責任を問われ服役していた戸塚宏氏がこの四月に刑期を終えて出所してくる。戸塚氏は服役中保釈を申請することなく、あくまで刑期を満了した上で悪びれることなく以前と全く同じ所信で、歪んでしまった子供たちの救済再生のためのヨットスクールを再開運営していくつもりでいるという。
(中略) 
 畏友戸塚宏の社会復帰は子供たちに関する今日の風潮の是正に必ずや強く確かな指針を啓示してくれるものと思っている。我々は我々の責任で、人間としての絶対必要条件である我慢について今こそ教え強いなくてはならぬ。失われつつある子供たちの数は戸塚氏を襲った事件の時よりもはるかに増えているのだ】(連載エッセイ『日本よ』)


〈戸塚ヨットスクールと石原都知事・2〉

 どんなに言葉を飾ろうと、戸塚ヨットスクールでおこなわれたことは「リンチ」である。「1銭5厘(徴兵通知の郵送料)」で軍隊に引っ張られた経験を持つ高齢者達の体験を聞くと理不尽な暴力沙汰の話がよく出てくるが、それと同様のサディスティックな行為に過ぎない。号令かけられるままの一糸乱れぬ行動を要求し、日常の細部に至るまで規則づくめで縛り、違反したり間違えたりした場合は容赦なく殴り倒す。戸塚ヨットスクールを擁護する人達は「多くの少年達が立派に立ち直った」と言うが、それは立ち直った?のではあるまい。ものを考えるいとまも与えられず、感性は鈍磨させられ、否応なく飼い慣らされていったのだと私は思う。

 それに共感する石原都知事は、間違いなく「他者に対する暴力的な支配」を是とする立場にある。それも単に「オレの言うことに従え」ではなく、「心からオレ(の考え方)の前に跪け」であろう。支配する者は常に「心まで縛ろう」という方向にいくのだが(※1)、その行き方の速度や激烈さには当然、差がある。石原都知事はかなり極端な方で、普通の感覚ではほとんど信じられないほどに牙を剥き出しにしてくる。

 君が代・日の丸に代表される「国を守る気概」の押しつけはそのひとつ。私は何人か小・中・高校教師の知人がいるが、そのひとりは久しぶりに会った時に、「石原都知事になって以来、息が詰まりそうだ」とぼやいた。ちなみにこの知人は、いわゆる左翼でも何でもない。日教組にも所属しておらず、いわゆる無党派層で時には自民党に投票することもある。子供が好きで教師になり、子供と接していれば幸せで、今でも政治状況にはさほど興味がないそうだ。天皇に対しては崇拝していないまでもそこそこの親愛の情を持ち、国旗国歌にも特に反発は感じていないそうだが、それでも、式典で国旗掲揚や君が代斉唱を無理無体に強制されることなどについて「息が詰まりそう」と小さな声でぼやくのだ。

※1/ごく単純に考えて、それはまあ当然だろう。支配された者達が面従腹背状態であっては、いつ背かれるかわからない。彼らを「唯々諾々と従うことに歓びを持つ」マゾヒスト(しかもそれを自らは意識しない)に仕立て上げなければ、枕を高くして眠れないだろうから。


〈モラルを奪い返そう〉

 こういう類の――人の心を縛り、支配することに快感を覚える人間(※2)に、我々の暮らしの生殺与奪権を握らせておくわけにはいかない。そして、「正義」だの「倫理」だの「思いやり」だの、あるいは「愛」だの「願い」だのといった言葉言葉を人質にとられたままにしておくわけにはいかない。こういった本来は人間の崇高さにつながるはずの言葉が、彼らが口にするたびに何と薄汚く見えていくことか。支配のためのモラルは、もう御免だ。我々が共生するために、モラルを奪い返そう。

※2/むろん、そういう人間は石原都知事だけではない。国籍・性別・年齢・職業・社会的地位や教育程度などはむろんのこと、実のところ思想的立場や信条ともあまり関係なく存在する。奴隷を欲しがる人間にNOを言うところから始めるのだという単純なことを、私は今ゆっくりと自分の中で反芻している。

◇◇◇◇◇

 

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石原慎太郎氏によると (布引洋)
2007-03-04 16:10:00
戸塚ヨットスクールは五百余名の情緒障害児(登校拒否、非行、家庭内暴力、無気力など)を更生させたそうです。
教育荒廃という名の文明病に病む日本にとって、かけがえのない価値を持つらしい。

慎太郎氏の主張?が100%正しいと仮定しても、500名に5名の犠牲者(死亡者)です。
そういえばNGOの試算ではブッシュの対テロ戦争の犠牲者(死亡者)は65万人だそうです。
ブッシュJrなら慎太郎風に64億人の人類にアメリカ型民主主義を広めることに成功した画期的出来事とでも言うのでしょうか。?
このお二人さん良く似ています。
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東京はいつから古代ローマに (あくつ真矢)
2007-03-04 16:42:18
こんにちは。
学校現場でのいじめなどは、実のところこのような権力による締め付けが原因になっていると考えます。
おそらく、日の丸君が代に関する規制が厳しくなったことといじめ問題はリンクしているのではないか。住み心地の悪くなった職員室が住み心地の悪い教室を作っているのではないかと思います。自身を守ることに精一杯で子どもの心を考える暇もないのが現状なのではないか。
息子が某都立高校1年生のとき、同級生の一人が先生のいやみに反発して椅子を投げ、停学処分になり留年、退学となりました。このとき、権力は一人の人生をぶち壊すことなどいとも簡単なのだと知りました。
上位にいるものが権力を盾に服従を強いることは、その構造が下へ下へと限りなく続く社会を生み出すだけなのです。

石原都知事は、「私立学校に教育委員会が指導する権限を与える」という地方教育行政法案に対し、「僭越」だと言い、結局この案は削除されました。これによって私立学校と公立学校の教育内容の不公正は続けられます。
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少年達のその後 (luxemburg)
2007-03-04 20:44:54
 話によると、ヨットスクールの卒業(?)生で結構暴力金融で取立をしている人がいる、と債務整理の仕事も結構やっている知り合いの弁護士が言ってました。もちろん数がどの程度なのか全体を調べたわけでもないのですが、それを聞くとやはり暴力で育てた子供のコミュニケーション手段というのは限られてくるのかなあ、と思ってしまいます。
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清々しい瞳の少年 (さちこ)
2007-03-22 13:40:35
戸塚校長が「直した」卒業生を先日直に見ることができました。
小6の男の子だったけど、その凛々しさに、心から驚いてしまいました。

すがすがしい瞳をしていて。

その子は「戸塚ヨットスクールは面白くなかったけど、行ってよかった」と話してくれました。
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Unknown (填葉文太)
2009-01-31 10:23:59
生徒が思い通りにならないと、女子だろうと鼻血が吹き出ても殴り続け、管理主義・全体主義教育を正義と言い張る教師が担任だった。その教師の口癖
「お前らの為にやってんだよ」

ある日、勇気を出して聞いてみた。
「なぜ為になると分かるのですか」
「俺や仲間がそうだったからだよ」
「先生や仲間の言う"為になる"が、なぜ皆に当てはまると分かるのですか」
「ならお前、社会に出て礼儀知らなくて困っても良いのかよ!あ?」
「礼儀を知らなくて困るかも知れない位なら殴られた方が良いとは思いません。そもそも、なぜ殴らないと礼儀の勉強が出来ないのですか」

こんな話をしていたら突然殴られ「舐めたこと言いやがって」「ガキのくせに」「殺すぞてめえ!」「普通にやるぞコラ!」と威嚇と脅迫を繰り返し「お前らもやれ」と集団リンチを命令し、鼻が曲がり前歯が6本折れるまで同級生から殴られ続けた。

さすがに当時でも問題になり、その教師は隣町の学校に飛ばされたが、一言も謝罪は無し。当然、感謝など一度もした事は無く、あの教師を永遠に憎んでいる。

経験者としての結論は「こうなるかも知れない位なら、こうする方が本人の為になる」と言う「自分」の価値観や「自分」のした事の責任を「本人」に押し付けておいて正義面するのは偽善であり、偽善の仮面が剥がされそうになると暴力・脅迫・威嚇で押し切る、と言うやり方を受けた事から体罰に断固反対。
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戸塚ヨットについて (hatu)
2010-07-26 06:53:10
戸塚ヨットスクールがまだ健在でなんと石原知事まで関与していると、知って驚き、私は戸塚ヨットスクールに3ヶ月間入っておりました、
そのとき受けたものすごいひどい行為はいまだもって忘れることができず、
日々うなされる毎日です。まず、一番ひどかったのは両足に重りをいくつもつけて、気が遠くなるまで何度も、何度も海に沈められたことです。それ以来、冷たい水も飲めず、お風呂にも入れません。雨に打たれることも怖いのです。ほぼ毎日3回ほど、沈めることを何度もやられましたので・・・・・・・。4年前の10月頃の、受講生が行方不になり、翌日知多湾にて水死体で発見されたとの事件は殺人ではないか?と思います。こんなこともありましたので、私は海の沖に連れ出されて、なにも、浮き輪もなにもないまま海の中に放置されました。泳ぎはできましたから、約3-4時間かかってやっと浜についたのです、浜には5人のコーチが待っていて、角材で死ぬほど殴られました。何の意味も何の悪いこともしていないのにコーチの気まぐれで!です、気まぐれは、それは、お前の顔が気に入らないということでした。3回ほど同じことをされたでしょうか。
この方も同じことをされたのではないでしょうか?????

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