華氏451度

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改憲賛成65%? 冗談は休み休み言って欲しい

2006-03-06 03:38:35 | 憲法その他法律


アッテンボローさんから「毎日新聞世論調査に異議あり」のエントリをTBしていただいた。

【3月5日付毎日新聞の一面トップに「改憲賛成65%」という世論調査の結果が掲載され、分析結果と併せて5ページにわたる憲法特集が載っていた。今まで毎日新聞を愛読してきたが、この世論調査の設問方法と報道のあり方には憤りを感じる】(アッテンボローさんの記事より)
(http://rounin40.cocolognifty.com/attenborow/2006/03/post_a227.html)

レッツらさんも、この調査に対する異議申し立ての記事を書いておられる。(小泉内閣の支持率が一桁台になるまで・http://brilliant.air-nifty.com/nikki/2006/03/65_4d4e.html)

私が見落としているだけで、おそらく他にも大勢の方がブログで同様の意見を述べておられるのではないだろうか。

私はこの情報を知らなかったので、驚いてインターネットで検索した。改憲賛成は65%、反対は27%。新聞の記事によれば、「04年4月から過去3回行った改憲の賛否を二者択一で聞く調査では、賛成派はいずれも60%前後。単純比較はできないが今回、賛成派は最高を記録した」という。

【賛成派に理由を聞いたところ「今の憲法が時代に合っていない」が53%と最多で、「一度も改正されていない」(18%)、「自衛隊の活動と憲法9条にかい離がある」(13%)が続いた。(中略)反対派の理由は「9条改正につながる恐れがある」が54%と圧倒的に多く、9条改正反対が大きな論拠となっている。「国民や政党の議論がまだ尽くされていない」が26%、「改正するほどの積極的理由がない」が11%などだった】(毎日新聞の記事より)

私はこの「世論調査の結果」をあまり信じていない。と言うより、まともに受け取っていない。理由としては次の3点が挙げられる。

1)まず、電話による調査であるということ
2月10日付けのエントリ「世論調査のいかがわしさ」で、電話による世論調査という安易なやり方に思い切り皮肉を言った。のんびり休んでいるところにいきなり電話などが掛かってくれば、軽い気分で答えてしまいがち。そして「軽い気持ちで」答える場合、「反対」よりも「賛成」に回るのが人間の心理である。なぜならその方が精神的エネルギーの消費が少なくてすむからだ。反対するには確固たる理由がいるが、賛成の場合は「ま、いいんじゃない?」程度ですむ。いやしくもジャーナリズムを名乗るなら電話による世論調査などはおこなうべきではなく、おこなったとしても参考程度にとどめるべきである。それを麗々しく発表するとは……頼むから、少しは恥ずかしいと思ってくれ。私は心の底から恥ずかしいのだが、私が恥ずかしがっても何も動かないのだ。

2)二者択一の危険性
3月4日のエントリ「世論調査の陥穽ということ」で、安易な二者択一の危険性に触れた。その矢先の毎日新聞の発表。正直なところ、情けなくてアホらしくて涙も出ない。他の方が詳しく書いておられることを私がなぞっても仕方ないので、別のことを書こう。
【人が何かを選択する場合、重要なのは「なぜか」という理由である。理由抜きでイエスかノーかを尋ねた調査や、理由を聞いたとしてもそれを軽視して数字的な結果だけを発表した調査というのは、危険きわまりない】(華氏451度の記事より)
賛成の一番の理由は、「今の憲法が時代に合っていない」であったという。どこが? なぜ? 時代に合っていないのか。最も重要なのはその点である。もしかすると、「言葉が古風すぎる。もっと柔らかい表現を」と思っている人もいるかも知れない。あるいは「環境権など、時代に合わせた新しい権利も入れるべき」と思っているのかも知れない。私は憲法は学校で言えば「建学の精神」みたいなもので、時代?に合わせてころころ変えるものではないと思っているが、時代に合わせて変えた方がいいと考える人もいることは認める。ただ、何が時代に合わないのかを問うことなく十把一絡げで扱うのは、あまりに乱暴過ぎるのではあるまいか。

3)80%は現憲法を積極的に評価
これも他の方が書いておられるので今さら言うのは気が引けるが、毎日新聞の記事によれば、「戦後日本の平和維持や国民生活の向上に現憲法が果たした役割」については「かなり役立った」と「ある程度役立った」を合わせ、合計80%。つまり8割の人は、現憲法を評価し、肯定的に捉えているのである。そのことを考え合わせれば、「改憲に賛成」の多くは「憲法の精神を変えたい」と思っているわけではなく、「時代に合わせて、ちょっとした手直しぐらいはしてもいいんじゃない?」というノリなのではあるまいか。

だが、いくら私が「信用していない」と力みかえっても、「65%が改憲賛成」と発表されれば、それがスポット・ライトを浴び、一人歩きするのは眼に見えている。私がぶつくさ言うのは、所詮は負け組庶民のゴマメの歯ぎしりに過ぎない。しかし――である。ゴマメにはゴマメの切実な願いと意地がある。飾り立てた言葉や上から目線にうさんくささを感じ、人と人が憎しみ合わない社会を希求している、すべての友人達よ。今こそ私たちは連帯しなければならない。「改憲」にまつわる美辞麗句を剥ぎ取り、立ち上がらなければならない……。
(……と言って、二人は立ち上がらない。などと、『ゴドーを待ちながら』の世界になりませんように……)


コメント (12)
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