美しい夕焼け

美しい晩年を目指して

「新世界より」

2023-05-30 13:21:26 | 本・映画


今から1000年後の日本、思春期を迎える子供たちが、昔の世界を知ったことで、今の自分たちの世界の不可思議に気づいていき、世界のもろさや人間の弱さなどを知っていくSF、そしてミステリーでもあります。

1000年後の日本は、小さな集落のなかで、平和に暮らしています。人間は、呪力を持ち、バケネズミという知能の高い動物を使役して、暮らしています。

主人公の五人の子供たちは能力の高い子供たちで、呪力が目覚める年齢に達し、いろいろな不思議にめぐり合います。そして、五人は一人ずついなくなるのです。この世界に住めない人間は、消滅するということが決まっているのです。

残った二人の子供たちが、バケネズミの反乱を抑え、人間の世界をかろうじて持ちこたえさせます。

人間は、呪力を持たなかった人間を、バケネズミという動物に換え、呪力の力で支配していました。その中の頭脳の高いバケネズミの人間への復讐を、二人は命がけで戦い、勝つのです。

私たちの生きている時代は先史時代と呼ばれ、人間は戦争と暴力で、世界を破滅させるのです。そして、生き残った人間の中で、呪力を持つものと持たない者との争いが起こり、呪力を持つものが残り、小さな集落の中で、今の世界を持ち続けようとしているのです。

人間はそういった集落の中で、自分たちの世界を外敵から守ることに、大変な力を使っています。少しでも、集落の調和を乱すものは消滅させるのです。

それでも、どんなに守りを固めていても、型破りのものは現れ、人間の世界が壊されそうになることがあります。それにバケネズミの陰謀が加わり、人間の世界は今にも壊れそうになります。

そこで、二人の主人公が命がけで戦い、人間の世界を守るのです。そして、二人は、やはり、人間の世界はいつ壊れるかわからないと思いながら、力を尽くして、今の世界を守っていこうと思うのです。

人間は、暴力で世界を滅亡させ、わずかな力を持った人間の小さな世界を守っていくことでしか、人間の世界を存続させることができないという考え方に、少しショックを受けました。わずかな人間による管理で、危なっかしい人間の世界を守るということにも、とてもショックを受けました。

人は、自由でなければなりません。そうすると、人の世界は滅びてしまうかもしれないというのです。それなら、わずかな人間の管理で、世界を守る方が幸せなのでしょうか。それでも、人は、自由を求めて動き、争いが起こるのかと思うと、理不尽な気持ちになりました。

構想、30年、想像力と創造力の大きな力を感じさせる小説です。貴志祐介 作の、文庫本では3冊の大部の作品です。

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