薔薇を育てていた頃は、つる薔薇の誘引に追われていました。でも、それは楽しみでもありました。どんなふうに誘引して、どんなふうに見せようか、それは薔薇を育てる大きな楽しみでした。
ところが今は、つる薔薇が枝を伸ばしているのを眺めて、ああどうしよう、という焦りばかりが沸き起こります。
体力のない私は、もうつる薔薇の世話ができないのです。つる薔薇は、放っておくことができない薔薇です。どんどん枝が伸びて、無秩序に膨らんでいきます。邪魔になることもあり、危ないこともあります。

そんなとき、妹が声をかけてくれます。つる薔薇の誘引を手伝うよ、と。薔薇の枝のいらないものは根元から切り、新しい枝を誘引していきます。なるべく少なく誘引して、背丈も低く整えます。
妹が手伝ってくれなければ、薔薇はもう抜かなくてはならないでしょう。私の体力では庭仕事はとても無理なので、妹のおかげで庭が体裁を整えられています。
誘引したつる薔薇は、形も整い、美しい姿に変わります。それを見ていると、ああ今年も5月には花が見られるなあと心が弾みます。

誘引したつる薔薇の写真を載せました。上から、スパニッシュ・ビューティー、春霞です。
そんなちょっと嬉しいことがあったとき、もう一つ発見があったのです。妹が買い物に連れて行ってくれる時、お化粧した後に、香水の瓶を見つけました。
ああそうだ、病気になる前は、いつも香水をつけていたなあと思い出しました。今は病院がほとんどの外出先なので、香水はつけません。
今日は買い物なのだから、ちょっと付けていこうかと胸元に吹きつけました。その香りがずっと私を追いかけて、少しだけ幸せを感じたのでした。
こんな小さな喜びが今の私の心を動かします。本当に小さなことですが。