「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

          ローソクの灯りと生活保護

2009-01-12 06:41:49 | Weblog
暮から新年にかけて老人をまきこむ痛ましい火事が多い。高齢になると、確かに
注意力が散漫になってくる。我が家でも時々老妻がガスをつけたまま他の仕事を
してやかんがカラカラ音を立てたりしている。二人とも「火の用心」には十分気をつ
けており、子供からも注意されているのだが。

一昨日、埼玉県熊谷市で起きた71歳、一人暮らしの女性宅の火事は、ちょっと事
情が違う。生活苦から電気料金を滞納したため、供給をストップされ、灯りにとって
いたローソクの火が衣装箱に燃え移って火事になったものらしい。女性は火事の前
市役所に生活保護を申請していた。

厚労省の資料によると、バブル期の1980年には全国の生活保護世帯は746,997世
帯だったが、崩壊後の2004年には944,877世帯に増え、2007年には1,1000,000
に世帯までなっている。特筆されるのは、そのうち1980年には高齢者世帯が30・2%
だったが、2004年には46・6%と半分近くになり、団塊世代の高齢化でさらに増加の
傾向にあるという。

専門用語で生活保護「補足率」という言葉があるようだ。生活保護水準以下の暮らし
をしている世帯のうち、どれだけの世帯が実際に生活保護を受けているのか、その率
のことである。日比谷公園の"年越し派遣村”村長の湯浅誠氏の本によると、全国で
600万人から800万人の捕捉できない生活保護世帯がいるとのことだ。熊谷のローソ
クによる火事を知り、改めて老後の社会保障について考えた。

             老人医療と異文化

2009-01-11 05:24:30 | Weblog
東北の山中の小さな町で老人医療に携わる知り合いの女医のRさんから年賀をかねて
気配りのある贈物を頂いた。その中に次のような手紙が添えられてあった。
「日本・インドネシア二つの故郷を持つ私は看護師、介護師の問題は心が痛みます。品
物ではなく生身、身体の弱い老人を相手にするには文化の違う人を使ってはいけません」

Rさんは戦争中バリ島にあった旧海軍民政部の軍属だったTさんと現地の女性との間で
生まれた。そして敗戦後、復員の父親と共に母親と一緒に来日した。廃墟の東京で教育
を受け、医科大学を卒業、博士号を得た方だ。そういう訳で彼女にとっては日本とインドネ
シアが祖国であるのだ。

僕も原則的には、Rさんと同様、老人看護は同胞がやるべきで、外国人のお世話になるべ
きではないと思っている。しかし、日本の現実をみるとそれが出来ないらしい。昨年日本
とインドネシア両国とのEDP(経済提携)協定に基づき、現在日本に看護師160人、介護師
131人が来て目下日本語を勉強中である。

Rさんから送られてきた老人医療施設のパンフによると、自然に恵まれたすばらしい環境の
中でお年寄りたちが生き生きとリハビリに励んでいる。この施設では「在宅復帰」「自立」を老
人医療の根本理念とされている。当たり前のことだが、家で家族と一緒に老後が送られるの
が人間にとって最高の幸せなのだ。しかし、現実にはそれができない。それでは、せめて外国
人のお世話にならない医療体制は出来ないものだろうかー。

         三連休 ”怠け者の国”日本

2009-01-10 07:13:45 | Weblog
松が明けたら早くも9日から三連休に入った。毎日か”日曜日”の僕らにとっては
どうということはないが、先日の新聞のコラムに”怠け者?日本”という在イタリア
数十年の坂本鉄男氏の記事が載っていた。坂本氏の記事によると、今年(2009
年)のイタリアの祝日は年間7日なのに対し、日本は15日で倍以上もある。三連
休もイタリアが3回なのに対し、日本は5回もあるそうだ。

意外だった。僕ら古い世代にはイタリア人は”遊び好き”で”怠け者”、逆に日本人
は”働き病”の重症患者といイメージを持っていた。例えば戦前の日本の祝日は
四大節=新年(1月1日)、紀元節(2月11日)、天長節(4月29日)、明治節(11月3
日)と神武天皇祭(4月3日)神嘗祭(10月17日)新嘗祭(11月23日)大正天皇祭(12
月25日)の合計8日しかなかった。そのほか東京の学校によっては地久節(3月6
日=皇后誕生日)や靖国神社の春秋の大祭が休みだったが。

法王庁のお膝元、イタリアでも昔はカトリックの祭日にあわせてやたらと祝日が多か
ったそうだが、経済危機に襲われた1977年に、打開策の一環として祝日が今のよう
に年間7日に”大鉈(なた)がふるわれた”のだという。

筆者は、僕の”友人の友人”で同世代であるが、コラムの中で”国が率先して祝日を
乱造し”ハッピーマンディ”制度などという他国民が知ったら、あっけにとられる制度
まで造り上げ国民を”怠け者”にした”と書いている。修身で二宮金次郎を学んだ同
世代の僕も”もろ手”まではゆかなくとも解らないでもない。



         民主党の”倒閣運動”国会

2009-01-09 07:46:47 | Weblog
昨日もテレビで衆院予算委員会の模様をみた。その感想を二つ。一つは民主党の
あいも変わらぬ国会戦術だ。この人たちは日本の現状を本当に直視しているのだろ
うかー。昨日も仙谷由人議員が、定額交付金の”法律違反”を追求したあと、またぞ
ろ、旧麻生鉱業の”戦争犯罪”(昨日の小ブログ)について触れた。60数年前の問題
をこの時期に持ち出して、なんの意味があるのかー。倒閣運動にすぎない。

質疑を通じて、初めて知ったことは、旧麻生鉱業に戦争中連合軍捕虜が働いていた
ことを報じた米国の新聞に対して、駐ロサンゼルス総領事館がHPで抗議、そのあと
厚労省の資料で事実と判ると、HPを削除したというものらしい。外務省がなぜ抗議し
たのか知らないが、答弁にたった中曽根外相の終始卑屈な態度が見苦しかった。

戦争を体験している世代は、捕虜が全国各地のいろんな施設で働いていたのを知って
いる。東京の当時僕の住んでいた町でも品川の収容所から捕虜が近くの青物市場へ
野菜を取りに来ていた。九州の筑豊地区の鉱山では、多分どこの鉱山でも捕虜や朝鮮
人鉱夫を雇用していたと思う。戦争に勝ち抜くためにそれが必要であった。いまさら、こ
れが国際法違法だとか、麻生総理の責任を追及したとしてもなんのプラスにもならない。

もう一つは政府の今回の”派遣ぎり”以後の政策のPRのまづさだ。国会中継の舛添厚
労相の答弁で”年越し派遣村”などについて国民が知らない対応策をとっているのを
初めて知った。新聞の片隅に「農業従事者379人募集」という記事があった。全国109農
業法人で椎茸、サツマイモなどに従事する正規、パートを募集している。これなどもっと
声を大きくしてPRしてもよいと思うのだが。


         旧社会党時代に戻った民主党?

2009-01-08 06:42:19 | Weblog
昨日のテレビの参院国会中継で民主党の山下八州夫議員が定額給付金の撤回を追及
していたが、最後にこれとは無関係の麻生総理一族が昔経営していた旧麻生鉱業の”戦
争犯罪”について質問していた。戦争中、この会社が朝鮮半島から労働者を強制連行し
てきて酷使してきたという問題だ。時間が村山内閣当時に戻った感じだ。

勉強不足で知らなかったが、昨年暮、外電(AFP)が旧麻生鉱業が連合軍の捕虜を強制就
労させていた、と報じたことから,朝鮮人の”強制連行”が蒸しかえされてきたものらしい。よ
く知らないが、捕虜の問題を麻生総理が外相時代否定していたからけしからん”朝鮮人連行”
にも”隠し事”があるのだろう、という事らしい。

僕は専門家でなくとも戦前、国民徴用令(昭和14年)以前から沢山の朝鮮人が筑豊炭田で
働いていた事は知っている。この人たちは半島から強制的に連行されてきたのでもないし、
強制就労させられたものでもない。連合軍捕虜の問題も同じである。戦争中は人手不足から、
どこの鉱山でも捕虜を使っていた。国際法に違反していたがやむをえなかった。戦後、日本人
もシベリアや南方各地でこれ以上の目にあっている。

民主党の議員の中には、近代史について勉強不足、偏見を持っている人がいるようだ。徴用
令は半島人、本島人だけを対象にして、強制的に拉致連行してきたものではない。北海道の
千歳市近くに「三軒茶屋」という地名があるが、これは戦争末期、東京の三軒茶屋商店街の人
たちが徴用令で入植した場所だ。北朝鮮のいう連行拉致とはまったく違う。旧社会党的史観で
外交に当たられると、国益に損することになるので一言。

     温泉旅行に行かなくても 定額交付金の撤回を

2009-01-07 09:36:22 | Weblog
新年5日から国会審議が始まったが、またまた与野党の意地の張り合いで空転の様相
を見せている。焦点は政府の出張する総額2兆円の定額交付金を第二次補正予算案に
盛り込むかどうかである。野党側は交付金の撤回を求め独自の修正案を提出した。

後期高齢者の僕に言わせれば、今の日本は本当に幸せな国だ。一昨日の野党議員の
質問によれば、国民の7割が定額交付金制度に反対だという。国が黙っておカネをくれる
というのに反対なのだ。一方、政府は交付金を高額所得者を含め全世帯に支給すべきだ
としている。昨年、この案が浮上した時は貧困世帯に対する家計支援だったはずだが、
今は景気上昇のための内需拡大が狙いだという。

経済"音痴”なので、交付金2兆円が支給された場合、どの程度の効果があるのかしら
ない。僕は高額所得者ではないので、夫婦二人分、4万円を有難く頂戴する。”お国”の
ために何に使うのか思案中だが、多分夫婦で温泉旅行にでも行く事になろう。

戦争中,銃後の小国民だった頃、僕らは煙草の銀紙を集めてボールにしたり、U型の磁石
で道の上を引っ張ってくず鉄を集め、業者にこれを売ってお国に献金した。今は国が国民
におカネをくれるといっているのに賛否両論。肝心の国の予算さえきまらない。このままでは
”日本丸”が沈没してしまう。僕は温泉旅行に行かなくてもよい。不人気の定額交付金制度
はいさぎよく撤回すべきである。


                春の足音

2009-01-07 07:14:15 | Weblog
東京区部のわが家の猫の額より小さい庭に、春の二草を見つけました。御形(母子
草)とはこべら(はこべ)です。ベランダの鉢植えの寒梅もほころびました。そして日
中の時間も長く感じられるようになり、老人の耳には春の足音が聞こえてきました。

 マノクワリからの津波 ”戦禍わすれるな”犠牲者の声

2009-01-06 06:47:53 | Weblog
インドネシアの西イリアン・ジャヤ州の州都マノクワリで4日M7・6と7・3の大地
震が2回続けて発生、日本にも津波が押し寄せるかも知れないと警戒したが、
幸い現地の被害も小さく、日本への津波も低くてすんだ。マノクワリは、さきの
大東亜戦争で、旧日本軍が砲火と病魔で大きな犠牲を出した地域である。
多少、このあたりの戦史を知っている僕には、津波が過去の戦禍を忘れるなと
いう犠牲者からの声に聞こえた。

マノクワリの当時の戦争については、戦後俳優の加東大介が「南の島に雪が降
る」の本や映画で紹介されているが、極限の生活の中で、加東らが戦友たちを
慰めようと作った劇団の話である。加東は生還できたが、この地域周辺で1万人
もの将兵が死亡している。

僕の手元に「西部ニューギニア横断記」(未刊)がある。著者のN氏は、陸軍中野学
校出の諜報機関長で、戦後のオランダ法廷(BC級裁判)で”住民虐殺”の罪で死刑
に処せられている。この本は法廷での弁論資料として自筆されたものである。連合
軍が再上陸する前の18年11月から19年3月まで島を横断、奥地の地形や住民の模
様を丹念に絵入りで描いている(写真)。

知人からこの本を預かって数年になるが、出版社が見つからない。60数年前の現地
を知る貴重な資料だ。マノクワリからの地震の津波が、僕にこの本のことを思い起こ
させた。出版先がなければ、元気のうちに現地のしかるべき施設に寄贈するのがN
氏の霊に応える道だと思っている。

         パレスチナ支援の再検討

2009-01-05 06:46:46 | Weblog
イスラエル軍が4日未明,4か所から国境を越えてパレスチナ・ガザ地区に侵入を
開始した。昨年暮れ27日からの空襲で、すでに500人を越す死者が出ている。侵
入の理由はガザ地区を支配しているイスラム原理主義のハマスがイスラエルへの
ロケット攻撃を中止しないからだという。現地からのテレビ画像をみていると、この
対立の構図は、すでに半世紀以上,前から見続けてきたような気がする。

麻生総理は正月3日、自宅から電話でパレスチナ暫定政府のアッパス議長(大統領)
へ電話して早期の停戦を求め、人道上の目的で1000万㌦を支援すると約束した。現
地からのテレビ画像をみていると、本当に痛ましくすぐに双方が鉾を収めて欲しいと誰
もが思う。しかし、両国ともフランスなどからの調停に耳を貸さない。それだけ対立の
根は深く歴史的なものだ。

わが国は1993年の細川内閣以来、歴代内閣がパレスチナへの支援をし、その累計は
9・3億㌦に上っている。最近でも2007年、麻生総理が外相時代、パレスチナを訪問し、
同国の"平和と繁栄”のために130万㌦をお土産として贈っている。確かにアッパス議長
のいるヨルダン川西のパレスチナ地区は、日本の援助によって病院や学校が建ち感謝
されている。

しかし、ガザ地区はアッパス議長の支配が及んでいない。逆に対立さえしている。果たし
てアッパス議長を支援しても効果があるのだろうか。日本のパレスチナへの支援額は旧
宗主国の英国やEUに並ぶものだという。イラクの時でもそうだが、あまり歴史的に関係が
薄く、影響力のない国への支援は検討すべきである。

(年越し派遣村)
人道的な問題です。とりあえず寒空の下で暮らすことがなく屋根の下で生活できほっと
しています。支援団体と関係役所のご努力に感謝します。

        総理の「安心活力」と"年越し派遣村”

2009-01-04 06:29:50 | Weblog
東京都心の日比谷公園に設けられた"年越し派遣村”への入村希望者は毎日ふえ、
400人に上っているという。公園のテントだけでは足りず、厚労省は労組・弁護士など
で組織している支援グループの要請をいれて建物内の講堂を開放した。天災を除け
ば、政府の建物や公園がこのような目的に使われるのは初めて。前代未聞の異常
事態である。

”日本丸”の舵取り麻生総理は年頭所感で"国民の景気や生活に対する不安を取り
除く"と断言、4日の年頭記者会見では、今年の目標として墨痕鮮やかではなかった
が「安心活力」という字を紙に書いた。僕は庶民の一人として、5日で期限がきれる"年
越し遣村」村民の、その後について総理から発言があり、記者からも質問があるものと
期待していたが、まったくなかった。

"年越し派遣村”は東京ローカルの次元の低い問題なのだろうかー。僕はそうとは思わ
ない。僕が今年貰った賀状の中には、総理ののいう「安心活力」とはうらはらに「不安落
胆」の言葉が多かった。「年越し派遣村」はいってみれば、国民がいだく象徴的な問題
なのだ。「年越し派遣村」が5日で閉村し、そのあと村民が厚労省の講堂から追い出され
路頭に迷うことになれば、麻生総理の支持率はさらに低下する。

明日5日から国会審議が再開する。多分第二次補正予算を通すかどうかの問題をめぐっ
て与野党間で"相変わらず”の審議が行われる。そして、解散総選挙がいつになるのか
が議員の頭にチラホラしている。”年越し派遣村”村民が、この寒空の下どうなるのかー。
3月末までには正規社員まで含めて10万人が解雇されるという説もある。口だけでなく
「安心活力」を実行に移して欲しい。