きのうも東京は春を思わせる陽気であった。早くも隣家の沈丁花のつぼみがほころび、かすかな芳香をただよわせ始めた。庭の寒梅は散り、遅咲きの南高梅、雲南梅それに乙女椿さえ満開にちかい。東京での最も遅い初雪記録はいぜん更新中でこのまま雪なしの冬は去り、春が到来するかもしれない。 雪で想い出すのは敗戦の年の東京の冬である。この年東京では2月に4回も降雪を記録している。なかでも22日は記録に残る豪雪で、明治9年気象台が記録をとり始めて以来二度目の大雪で 38.1㎝も降り積もった。 当時僕は中学2年で、勤労動員先の多摩川近くの工場で”人間魚雷”回天のエンジン部品を作っていたが、この大雪をはっきりと覚えている。昼休み僕らは同じ年頃の養成工(見習工員)と雪合戦をしていたが、相手の1人が誤って肥溜に落ちてしまった。戦時中、東京でも下水処理ができず、町のあちこちに肥溜が掘られていた。 雪の日にはB-29の”定期便”の襲来はなかった。調べてみると2月東京では空襲警報は4回しか発令されていない。しかし、僕らは連日のように雪かきをした記憶がある。多分この頃になると、電力も不足し、未熟の僕らは雪かきに使ったほうが効率的だったのかもしれない。3月4日にも雪が降った。そして天候が回復した10日、まるで満を持していたかのようにB-29の大群が襲来した。年々歳々、梅も沈丁花も咲いたのだろうが,想い出はない。
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今年は桜の開花も早いそうですよ。
敗戦の年に、そんなに雪が降ったのですか。
まるで雪国並の豪雪ですね。
敗戦の混乱した状況で、こんなに雪が降るのは大変なことでしたでしょうね。
空も今よりキレイだったから、雪が降るとなったら容赦なく降るのかもしれませんね。
雪と空襲・・・
雪が降らなくなったら、空襲が激化したといのは、なんとも皮肉な展開です。
そうですよね・・・東京大空襲も3月ですものね。
今の世の中、雪は通勤や交通を麻痺させますから大敵ですけど、その状況なら雪を待ち望むかもしれないなぁ。
雪からそんな想像も出来ない今の平和は本当に有り難いですね。
亡父の日記があるので当時が回顧できます。勤労動員中は週に一回通学していました。豪雪でも五反田ー蒲田までの池上
線(当時)は走っていました。空腹の想い出ばかりです。本当に平和の有難さを感じます。