「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

122年前、日本で発行された露和辞典

2018-09-22 05:35:39 | 2012・1・1
退院して半月、やっと何かやる気が出てきた。中断していた屋根裏の書庫の整理を始めたら、戦前の雑誌に混じって明治36年8月発行(3版)の露和辞典が出てきた。東京の丸善発行で渡邉至君序,高須治輔著とある。ポケット大サイズだが、堅紙の表紙で、いかにも明治を思わせる立派な装丁である。亡父は明治17年生まれであるから、20歳前後、日露戦争(明治37年ー38年)の時代に購入している。父は生前、酔っぱらうと、”オーチン.ハラショウ”(有難う)と片言のロシア語を言ったりしていたが、正式に学んだことはない。

この辞書を見て興味深く感じたのは、初版が日清戦争(明治27年ー28年)直後の明治29年8月であること。そして、なぜか渡邉至輔氏が序文を日本語ではなく中国語(漢文)で記していることだ。日露戦争はロシアの朝鮮半島への領土的野望を阻止する狙いがあった。すでに、政府はロシアの南下を予期してこういった辞書の序文にも中国語を使用したのであろうか。この年、ロシアは清国との間に秘密防衛協定を調印している。

ロシアのプーチン大統領が年内に日本との間で無条件で平和条約を調印したいと公言している。領土問題を含めてなら大歓迎だがロシアには過去がある。先の大戦時の一方的な不可侵条約破棄をはじめ、この清露秘密条約もそうである。朝鮮半島をめぐる一連の動きの中で、プーチンの平和条約発言に騙されないよう注意しよう。古い辞書から推理した教訓である。