・・・・・・あわぞうの覗き穴・・・・・・

気が向いたときに、覗いてご覧ください。
何が見えるかは、覗く方々のお眼め次第です。

古い言葉

2012年11月20日 | つぶやきの壺焼

「さぼす」という言葉は標準語か、という質問がFAQに出ていた。
浅才の恥耳、まだ聞いたことがなかった。
Kさんと同じ考えで、サボるの若者語ではないかと思っていたが、昔の言葉にあったそうである。

Fさんによると、岩波古語辞典に「さぼし」で出ているとのこと。

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  さ乾し・曝し  四段活用 《サは接頭語。一説、曝(さ)り乾す意》
  干してよく風を通す。
  「卯の花の盛りなるべし山里の衣さぼせる折と見ゆるは」<道綱母集>
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「曝(さ)り」 これも知らなかった。
しいたけなどを干すのを、さぼし、さり、とは言わないのだろうか。

卯の花の例歌は、湿気の多い花の盛りに衣を干すところを想像すると、時節はずれのようで、いまひとつわからないという見方もある。
卯の花には、花の名以外に「卯の花点前」というお茶の点て方があった。
そこで、茶会の催しにそなえ、晴れ間をみて、そろそろ衣を干しておかねばという気持を歌ったものということにしておいたらどうだろうか。

文字どおりに読んでいけばわかる歌は、これからどこに行きます、行ってきましたというだけのツイッターの書き込みに似て、それがどうしたとしか言いようがない。
読み解こうとすれば、あるときには迷い、あるときには惑う、迷惑な歌こそ面白みがあると思っている。


若者が勝手に作る新しい言葉には、ちょっと言い方を変えただけの軽薄なものが多いが、古い言葉は、使われた歌や文をたどっていくと、散歩の道すがらの発見のような楽しみを味わうことができるものである。


成語や古歌散策
畑 良次郎
東京図書出版会