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(旧:アヴァンの物語の館)ギリシア神話的世界観で人魚ナオミとヴァンパイアのマクミラが魔性たちと戦うファンタジー的SF小説

第三部闘龍孔明篇 第10章—6 孔明の妹

2019-02-08 00:00:00 | 私が作家・芸術家・芸人

 一匹の深紅の龍が、ナオミを睨み付けていた。
 孔明によく似た見事なたてがみ、背びれ、鱗を持っていた。美しいブラウンの瞳が、龍が雌であることを語っていた。
 マーメイドの感覚がよみがえってきたナオミは、易々と龍の攻撃をかわすことができた。だが相手もスムーズな動きをするので、打ち込んでも拳や蹴りを当てることができない。初めての相手のはずなのに、旧知の相手と組み手をしているような錯覚に陥った。
 そうだ。あの時は、孔明の逆鱗に触れてしまったんだった。
 孔明をつかまえて離さない憤怒を弾き飛ばすために、たしか・・・・・・
記憶がよみがえってきたナオミは、弓を引き絞るポーズを取ると、生体のエナジーをため込んだ。次に、身体を一回転半させて、得意の後ろ回し蹴りでミドルキックを打ち込む。あの時は、孔明にふしぎな表情が浮かんで、信じられないようなスキができた。同じように、蹴りを放った。
今回は、ナオミの後ろ回り蹴りを予測していたように、赤龍も全身を一回転させて回り蹴りで対抗してきた。4年前は、マーメイドの蹴りが決まって孔明の身体が数メートルも先のコンクリートの壁に打ち付けられた。
だが、今度は相打ちだった。
 幻視が終わった。ナオミはシャトル左端に弾き飛ばされていたが、チャイナ服の可憐な少女も右端に弾き飛ばされていた。

     

 立ち上がったナオミが近寄ると、彼女の顔色は人形のようになっていた。
 その時、頭の中に祖母トーミの声が聞こえた。
 ナオミよ、この龍、身体は眠っておるが、魂は起きてもおる。
 今は、動くためのエネジーが弾き飛ばされた状態じゃ。
 おばあさま・・・・・・本当にお久しぶり。
 ナオミよ、今宵はあまり時間がない。再び、トーミの声が聞こえてきた。
 ほんの少しでよい。この目を開いたまま夢を見ているお嬢ちゃんに、おまえのライフ・エナジーを打ち込むんじゃ。
 わかったわ。ポンと軽く肩を小突くようにすると、眠眠の目の焦点があった。
「ありがとう」
「ありがとう?」
「さすが、お兄ちゃんの最愛の人。試しがいがあったよ」
「最愛の人? 試しがい?」


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