夢のあと

釣りには夢があります。夢を釣っていると言っても過言ではありません。よって、ここに掲載する総ては僕の夢のあとです。

秋あまご

2014年09月15日 09時56分00秒 | 渓流釣り
秋。それは‘ヤマメ・イワナを釣りの対象とした釣り人’にとっては特別な季節です。
大物が釣れる確立が高い時期なのです。
特に大物狙いの釣り師たちが一年を通してもっともときめく季節です。‘あの場所に大ヤマメが入ったのではないか?’とか‘あの淵の大ヤマメは移動したのではないか’などと思案にふける日々を間近に迫った禁漁期が煽ります。
‘ヤマメ・イワナを釣りの対象とした釣り’、特に‘ヤマメをメインに狙う釣り’は大きく二つのカテゴリーに分けられます。山岳渓流に分け入ってヤマメを釣る、昔から『渓流釣り』と言われるタイプと、『本流釣り』と言われる里山から河口までをテリトリーとして大ヤマメを狙うタイプの釣りです。

“本流釣り”はまさに本流の大物を狙う釣りです。小さな支流よりスペース的にも充分で餌が豊富な本流は魚が大きく育ちやすい環境です。今は過剰放流の時代ですから、尚更本流に落ちて巨大化したヤマメが多くなり、ヤマメでも40㎝・50㎝時には60㎝をも超えることがあります。しかし、そのほとんどがパーマークは消え去り、尾ビレ回遊魚的な形に変化した、つまりはサクラマス的な魚体であることが多く、その魚体にヤマメの片鱗を探せと言われても、ほぼ見当たらなくなってしまいます。まるでヤマメとは別の魚のようです。こんな事から『ヤマメ』と『サクラマス』、同じ魚なのに別の名前が付いているのが私的にすんなりと受け止められてしまいます。


一方、支流に棲息圏をもつヤマメたちはサクラマス的な変化はしません。彼らは秋が迫ると産卵に向けて体を変化させます。オスは吻が尖り、俗に言われるハナマガリとなり凄みが出ることは一緒ですが、その他にも体色は紅が濃くなり、体表のヌメリも多くなる所為かパーマークが奥まって見えるようになります。・・・こんな魚を目の当たりにすると嵠師たちは秋を感じるのです。

 先日、大物狙いの会員から某河川の大アマゴを狙いたいとの意向があり、その案内役として同行させて頂きました。本流の大物は勿論ですが、この時期になると本流の大物が産卵のために支流に入ってくるので(このような魚は『差し物』と呼ばれます)釣りやすくなるのです。勿論、その本籍地は本流ですからヤマメと同様アマゴ(ヤマメの亜種)もパーマークは消え、サツキマス(アマゴの降海型)化した魚です。僕自身、過去にこの川の差し物を狙って釣行を重ねた時期がありました。釣技の低い僕ですから一日で何匹も釣れることはなく、釣れて一匹、でも釣れない日がほとんどという釣りです。でも、一匹でも釣れるとその感動は筆舌に尽くしがたい物があるので相当の日々をこの川で費やしたものでした。差し物狙いですから秋限定の釣りですので今時分が丁度その時なのです。
 現地について釣り服に着替えているとさやさやと流れる風は肌寒ささえ感じました。いいタイミングかもしれません。しかし、いざポイントに向かう僕の足にまだ温かさが残る水の流れを感じました。ここは僕が過去に一番実績を上げているポイントなので、同時に今日一番の本命ポイントなわけです。同行した彼に是非釣ってもらいたいので僕はカメラだけを手に向かったのですが、ポイントは昨年から今年の雨で砂利が入って小さくなってしまいました。合わせて底床も浅くなってしまっていました。もっとも、差し物はポイントの大小はあまり関係ないので、早速彼に竿を出してもらいました。しかし超小物の魚信があっただけで不発。まだ差し物の時期に入っていないことを理解しました。そこで、差してないのであれば本流に居るはずですので本流釣りに変更。僕が過去に実績を持つポイントを次々と移動しながら釣って行きました。彼の釣りに邪魔にならない規模の場所では僕も竿を出しました。ひとついいのを掛けましたが最近低迷している僕ですから案の定のバラシ。掛けた状況からして多分ニジマスでしたが、サイズ的にはまぁまぁだったように感じました。またある場所(ここは定員1名の狭いポイント)では同行した彼が化け物を掛けがのですが、これまた痛恨のバラシ。その後は彼に一通りのポイントを探ってもらったのですが残念な結果に終わりました。
 そしてまだ時間があるので最後に差し物は諦めて魚の顔を見に支流に入りました。この支流は綺麗なアマゴが釣れるので僕の一番のお気に入りの沢です。僕は彼の釣りを見たかったので一緒に釣ろうと思ったのですが、彼が『分かれて釣りたい』とのこと。きっと何か魂胆があるのでしょう(笑。小渓ながら過去に何匹も尺は釣っている沢ですのであなどれません。今年生まれのオチビちゃんに邪魔されながらもポツリポツリと釣れてきます。そしてそんな中で釣れた一匹が画像のアマゴです。ぴったり尺というなんともおめでたい魚ですが、秋色の魚体、そして顔。特筆すべきは側線下に朱点がないことです。勿論放流魚ですが、天然物を髣髴とさせるようなこの魚に出会えてとても嬉しく感じるとともに、渓に佇みながら『秋だなぁ・・・』と感慨にふけってしまいました。
 そんな彼らに出会える年に一度の季節。あと残りはわずかですから皆様も是非出かけてみてください。