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私の視点 うつ病列島ニッポンへの処方箋

2007-10-11 11:53:05 | Weblog
 私の周りを見渡すと、うつ症状を見せている大人たちが多い。ただ、それと同時に顕著に見られるのが、うつ状態に苦しむ子供たちの姿だ。成人のうつ病も深刻な問題だが、子供のうつ病にはより強い心の痛みを覚える。

 うつ症状に苦しむ子供たちに共通するのは、親たちが現実にきちんと向き合おうとしないことだ。この場合にも、罪を犯した子供の親がそうであるように「ウチの子に限って」という言葉がよく聞かれる。また中には、「そんなことを言われたら私の気がおかしくなる。ほっといてください」と言う親もいた。その母親は教師である。

 これまでに行なわれた各種のアンケート調査によると、小中学生の約1割がうつ症状を訴えている。ただ、これは、本人を対象にしたアンケート結果で、一般的に高めに出る傾向があると言われ、専門家の間では、全体の数パーセントと言われている。高学年ほど数字は増える傾向にあり、中学生になると、大人の有病率とほぼ同じではないかという説もある。

 そんな中、北海道大学の伝田健三准教授を中心とした調査ティームが文科省の資金援助を得て、札幌市内の小中学生5千人を対象にした、国際基準に基づいたアンケート調査を行なっている。

 また、それとは別に、同ティームは、中学校2校の1年生122人を対象に学校の健康診断に合わせて精神科医の診断に基づく調査も行なっている。

 その結果の一部を見ると、これまで私たちが心配していたことが現実であることが確認できる。詳細は、12日から二日間開かれる日本精神科診断学会で発表される予定だが、これまでに明らかにされた情報では、中学1年生の4.1%がうつ病と診断されたとのことだ。これは、大人の有病率が約5%と言われているから、やはりほぼ成人並みであることになる。

 この状況を放置しておけば、この国はとんでもない状態になることは間違いない。書店では今、うつ病の本がよく売れているが、これ一つを見てもニッポンはとても危ない状況にある。文科省は、“はした金”でお役目御免などと逃げずに、このアンケートなどに出されてくる実態に目を向け、対策を急ぐべきだ。

 ただし、すべて役人に任せるだけで状況が改善されるような単純な問題ではない。我々一般市民のうつ病に対する理解と環境作りも不可欠だ。うつ病は早期に適正な対処をすれば治る可能性がある病気だ。有病者を特別視したり差別することなく、社会全体でぎすぎすした今の競争社会を変えていくくらいの気概があって初めてこの問題に明かりが見えてくる。マスコミには、センセイショナルに扱うのではなく、読者や視聴者とこの問題を共に考えていく環境作りをしてもらいたい。

 そういった国全体で取り組む姿勢がなければ、今や“国民病”となったと言っても過言ではないうつ病のこれ以上の広がりを防ぐことは出来ないのではないか。特に、かわいい子供たちのことを思うのであれば、私たち大人の責務としてこのことに今こそ向き合うべきだ。