有田芳生の『酔醒漫録』

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菅首相「報道ステーション」出演の内実ーー視聴率をどう評価するか

2011-01-08 13:27:54 | 参議院

 1月8日(土)「総理は内閣支持率が上らないのは小沢問題と自分がやろうとしている政策の広報宣伝が不十分だからと本気で思っている」(首相周辺)。菅直人首相が新年になって積極的にマスコミに出るようになったのはそうした認識があるからだ。5日には「報道ステーション」、7日には「ニコニコ動画」である。政治記者から次のような話を聞いたのは6日のこと。「報道ステーション」は最低でも10パーセントの視聴率がある。ところが総理が出演するとグラフは8パーセントに落ち込み、さらに6パーセントまでになった……。たしかに視聴率は番組全体で6・9パーセントと「報道ステーション」では珍しい低水準を記録した。前4週間平均が14・7パーセントだから、なんと半分だ。しかし調べてみれば政治記者から聞いたことは大雑把な流れであって正確ではなかった。

「報道ステーション」がたいてい10パーセント以上の視聴率を獲得しているのは、基本的に「視聴習慣」があるからだ。その時間になれば「報道ステーション」を見るという生活習慣である。視聴率はグラフで1分ごとに表示される。私が「ザ・ワイド」に出ていたとき、前日の視聴率グラフを見て、どのコーナーの視聴率が高いかを見ることにしていた。VTR部分からスタジオトークに移ったところで視聴率が上がって行くならば、視聴者はそこで何が語られるかに関心があったということになる。「ときの人」が出演すればたいてい視聴率は上がる。典型的なケースはスキャンダルを起した人物だ。特定の番組に独占的に出演すれば、視聴率が上るのは当り前でもある。では菅首相が出演した「報道ステーション」の「6・9パーセント」をどう捉えればいいのか。

 21時54分に番組がはじまったとき、画面には司会者とともに首相の姿があった。そのときの視聴率は5・4パーセント。そもそも「入り」から低視聴率だったのだ。その原因はテレビがまだ正月体制にあったからである。日本テレビは午後7時から11時24分まで「ザ!世界仰天ニュース」、フジテレビは同時間に「超ホンマでっか!?」という特別編成だった。この2番組が高い視聴率をあげたことは翌日に明らかとなった。それに対抗した「報道ステーション」は、最初から苦戦を強いられていたのだ。菅首相の出演は2つのCMを挟んで22時40分まで続く。その間の最高視聴率は8・7パーセント、コーナー終了時は6・7パーセント。菅首相が出演したコーナーの平均は7・2パーセントである。

 そこから次のコーナーに移り視聴率が下がった結果が6・9パーセントという数字となった。菅首相が出演したから視聴率が下がったのではないことが、この流れからも明らかである。菅首相が出ていた同時間帯の日本テレビの視聴率は19・7パーセント、フジテレビが20・8パーセント。多くの視聴者が総理の話を聞くよりも娯楽番組にチャンネルを合わせていたということである。安倍晋三元総理がかつて「報道ステーション」に出たときは16・7パーセントだったと報じた産経新聞は、放送時期などの比較条件を欠いたため、いささか単純にすぎる。菅首相の出演についていえば、チャンネルを合わせた人の多くはコーナーの最後まで見ていたということが視聴率グラフから見えてくる。ただし首相が語ることを聞きたいという新しい視聴者が増えなかったと評価することもできる。

 私はかねてから、首相は予算編成など政治変化の時期に応じて国民に具体的かつわかりやすく語りかけるべきだと主張してきた。したがって菅首相がテレビやネットで語ることには賛成だ。しかし首相や幹事長が支持率が上がらない原因として小沢問題を前面に出すことは世間=生活現場を知らないと断ぜざるをえない。いま菅政権に何が必要なのか。2人の忠言を紹介する。「菅政権になると今度は冒険的な発言をまるでしなくなった。追われてばかりいて、押し返す力がない。あと1年くらい経てば、政権も3年目で、落ち着きと慣れが出てくる。そうすれば独自の戦略も生まれてくるかな。しかし首脳部の力量不足が目につく」(中曽根康弘元首相、「週刊ポスト」1月14日、21日号)。「菅さんと鳩山さん(由紀夫・前首相)の一番の共通点は、歴史を理解するセンスがないことだ。歴史的思考法の訓練を受けた痕跡はどうも感じられない。理科の人(理工系の大学卒)ということもあるのだろうか」(山内昌之東大教授、「アジア時報」2011年1、2月合併号)。

 私は民主党政権が確固とした基盤を築くことをめざしつつも、いかなる執行部体制にあっても北朝鮮による拉致問題早期解決と少子高齢時代に見合った医療・福祉・介護の「人間らしい」充実のために引き続き行動することを政治活動の基本とする。