冷たい雨に撃て、約束の銃弾を



ジョニー・トー杜峯監督作品は
前作の《スリ(原題:文雀)》があんなことになってしまい
《冷たい雨に撃て、約束の銃弾を(原題:復仇)》も心配していたが、
単館公開ではなく、都心以外でも観ることができて嬉しい。
管理人が観た館はスクリーンも割と大きく、座席もゆったり、音もいいので快適。
午後から行くつもりだったのに諸事情で朝一の上映に駆けつけると、
レディスデーなのに男性が多いのも作品の性格上わかるような気がする。

冒頭、幸せそうな4人家族の家にやってきた3人組は
いきなり一方的な銃撃で家族全員を殺してしまう。
家族の中で妻アイリーン(シルヴィー・テステュー)だけは奇蹟的に助かる。
父親のコステロ(ジョニー・アリディ)はパリからマカオの病院を訪れ、
娘から家族の仇を討ってほしいと請われる。
3人の見知らぬ男たち、一人は娘に耳を撃たれてけがをしている、
それだけの情報を元にコステロは犯人を探すことになる。

クワイ(黄秋生)、チュウ(林家棟)、フェイロック(林雪)の3人は
ボスのファン(任達華)からの殺しの依頼でホテルを訪れる。
殺しの後で同じフロアに宿泊していたコステロと遭遇。
コステロは3人に犯人探しと復讐を依頼する。

現場を訪れた4人、冒頭では半分飛ばされていた銃撃の詳細が
次第に明らかになっていく。
ちょっとした推理サスペンスの様相。
アメリカのプロファイリングドラマみたいだった。
リーダー格の男の「クロゼットのドアは開けるな」の一言が
この後の展開に効いてくる。
ここのところの演出がとてもよくできていて、3人が推理している間に、
映画冒頭で娘が料理を作っていたのをなぞるようにコステロは娘の残した食材で
トマトソース(たぶん)のパスタを作りその匂いにフェイロックが最初に反応(笑)
これがうまそうなんである。

コステロはパリでレストランのオーナーシェフであること、
仇を討ってくれたら
持っていた現金と時計の他、パリの店と屋敷を報酬とする、と言う。
店の名前は「レ・フレール(兄弟)」
そしてコステロは昔頭に銃弾を受けて記憶が消えてしまう病に冒されていた。

ここからマカオ・香港を舞台に
フランス・香港の男たちが復讐のために動き出すのだが…

マカロニウエスタンという映画のジャンルが、かってあったけれど
この作品もかっての西部劇の復讐ものと香港映画のノアールものをミックスして
エキスを抽出したような感覚がする。
ストーリーが進むうちにいくつものしかけがあって、
ファンはそれを見つけては心が躍るのである。
それは今までの杜峯監督作品を観ている者にとっては記憶に残るシーンであったり、
登場人物のキャラクターであったり、ロケされている街の記憶だったり、
そのすべてが映画と結びついている。

ただ今絶賛上映中なので、これ以上のストーリーは書かないでおくが
とにかく見ていてほくそ笑むシーンがたっぷり。
もし香港映画初心者とか初めてトーさん映画を観る、という方は
事前に《ザ・ミッション 非情の掟》《エグザイル/絆》を予習に、
観た後は《PTU》《スリ/文雀》を観ていただくと、
観た方はなるほど~とほくそ笑むことだろう。
そしてかっこ良くてユーモアのあるトーさんワールドにはまってください。
レンタルやセルDVDはたくさんありますから。

さていろいろ感じた事柄を少し。
※ジョニー・アリディ、年齢を重ねて渋くなってステキ。
※雪ちゃんが吹き替えでも英語喋ってなんかかっこいい(爆)と最初だけ思ったけど
いつもの食べ物大好きお茶目な雪ちゃんだった。
※ヤムヤム、あのキスシーンとその後はいかにもいやらしいキャラ全開でw
※とにかく料理や食事シーンがたくさん出てくる映画。お腹が減る映画。
※マカオで3人が乗るバスは澳門新福利公共汽車 (TRANSMAC BUS)
あのビーチはあのあたりかな?
※月夜の林の銃撃戦は素晴らしい。トーさん映画の夜の銃撃戦で印象に残る作品多数。
※羅永昌監督が俳優として出演、チョイ役ですが
《ザ・ミッション 非情の掟》の時のようなボスに忠実な配下の役どころだった。
ところで特別鳴謝には羅永昌監督の横に鄭保瑞監督の名前もあったような?
出てたような気がする。DVD買ってないから映画館でもう一度確認しなくては。
※脇を固める役者さんたちも秀逸。日本の俳優に物足りなさを感じたら
ぜひこの作品を観てほしい。素敵な役者さんが揃っているのでオススメ)

公式サイトはこちら 音が出ます。



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