アンダンテのだんだんと日記

ごたごたした生活の中から、ひとつずつ「いいこと」を探して、だんだんと優雅な生活を目指す日記

どんな音色をご所望ですか?(調律)

2016年06月10日 | ピアノ
「とろとろとしっとりのどっちが偉いってわけでもない。それはただの好みだ。もちろん、かたゆでもだ。かたゆでを好む人が幼稚だというわけでもない」(「羊と鋼の森」より)

   にほんブログ村 クラシックブログ ピアノへ←まずはめるちゃんの持ち味をよく確かめたい

調律師さんに、音色の好みって伝えますか? そういえば、私は伝えたことがなかったです。なんとなくですが、そのピアノの「ベスト」を引き出してくれればよくて、その引き出し方を私が気に入ればまたお願いするし、そうでなければそれきり。みたいな。

だって、言葉でどう表現していいかわからないし…仮にあそこにあるあのピアノの音、と具体例を示したところで、ピアノが違うんだから同じになるわけないしねぇ。そういや美容院でヘアカタログ見せられても固まるんだけど私(だってモデルさんと私じゃ顔も髪質も違うんだもん)。

結局、「前回切ったときの、とてもよかったです。あの状態に戻してください」なんて言ってたり(笑)

近々、めるちゃんの調律をするんだけれど、特に注文をつけようとは思っていない。強いていうならば、私がめるちゃんと出会ったときの音、あの状態に戻してくださればOKです(なんだか美容院と同じだ)。それに私が惚れたんだからね。

しかし調律師さんによっては、何も注文をつけない客を軽く見るようなことがあったりするのかもしれない。ようやく「羊と鋼の森」を読んだんだけど、そこにはそういう調律師さんが出てくる。

「型があるんだよ」(略)「とりあえず音程が合っていてきれいに鳴ればそれでいいっていう人は多い。音色に注文をつける人のほうが稀だ。で、注文のないタイプと、あるタイプ。二つの型ってわけだ」(略)「求められてないところでがんばっても得るものはない」(「羊と鋼の森」より)

ここんとこ10年くらい調律をお願いしていた調律師さんは、私が注文しないからといって手を抜いた様子はない。初めて調律してもらったとき、「ああこんな音も出るのね」と感動するようなよい響きになったし、その後も誠心誠意メンテナンスしてくださっている。私が調律前に特に注文をつけることはないけれど、その後の試し弾きのときや、雑談の様子から、私がどのようにピアノと付き合っていて、何を求めているかは汲んでくださっているようでもある。

「羊と鋼の森」に出てくる架空の楽器店は、楽器店と併設の音楽教室があって、何人かの調律師が所属しているというよくあるスタイルのものだ。主人公は新米調律師で、そのほかに年配の「神」調律師と、面倒見よくお客さんの要望も丁寧に聞く先輩調律師、「型があるんだよ」のちょっとヒネた調律師などがいる。

冒頭のセリフは面倒見よい先輩調律師のセリフ。続いて
「蒸したアスパラガスに添えるのは、温泉卵に近いようなとろとろのゆで卵がいい。それをソースのようにからめて食べるとおいしい。だろ? お客さんはそれを食べたことがあって、その上で尚、かたゆでがいいと言っているのか、もしくは、ゆですぎた卵しか知らなくてかたゆでがいいと言っているのか、その辺の見極めが難しいんだ」とも言っているので、技術もあり誠意もある調律師さんだって、お客様とのコミュニケーションには悩むものらしい。

主人公は「神」調律師がたまたま高校の体育館のピアノの調律に来たところに居合わせ、それをきっかけに調律師の道を目指すことになるのだけれど、その場合、誰も音色に注文なんかつけないし、だからといって調律に手抜きなんかは1ミリもなかったわけで、だからこそ突然、考えもしていなかった世界の扉が開き(「音の景色がはっきりした」)十七歳の少年がその世界に転んだのだ。

ただ、手抜きをしないとはいっても、学校の体育館のピアノを調律するときと、世界的なピアニストが今日コンサートをするというピアノをチューニングしているときでは、違う調律をしているのだろうとは思う。

そういえば、我が家で調律後に私がちょっと弾いてみたときに、「このキーだけ音がちょっと柔らかいですね?」と聞いたことがあった。すると、フェルトがだいぶ固くなっていたので針刺しをしたということだったんだけれど、周囲の音と違う音色になってしまっているのはどうなんだろうとちょっと気になって…でも数日弾いていたらフェルトが落ち着いたのか、周りにしっくりと馴染んでちょうど良い具合になった。なんとなくだけど、当日ベストな状態でコンサートができるようにするのと、一般家庭で半年元気に鳴るようにするのとでは、調律の仕方も変えているものかもしれない。

うちに来ていた調律師さんは、「羊と鋼の森」に出てくる「神」調律師とイメージが似ている。穏やかで、でも静かな情熱を持っていて(ピアノらぶ)、コンサートやコンクールのチューニングもできるトップ調律師で、でも何の変哲もない一般家庭の調律もやってくれる人。

「神」調律師さんは、欲しい音を言葉で表現できない素人のピアノを調律するときも、ピアノの状態と、オーナーの言葉にならないリクエスト(というか状況)を汲み、ベストなチューニングを提示することで、「一歩先」を照らしてくれているのではないかと思う。

でも、この小説のメインは、「神」調律師さんイイネということではなくて、そういう人から影響を受けつつ新しい調律師さんが自分の行く道を発見していくところだ。私も、ピアノを新たに買ったことで、新しい調律師さんにめるちゃんのお世話をお願いしていくことになるわけで(めっちゃ若返り)、これはこれで、わくわくどきどき。とりあえずは、注文ナシでいく予定です。

にほんブログ村 ピアノ  ←ぽちっと応援お願いします
にほんブログ村 ヴァイオリン ←こちらでも
にほんブログ村 中高一貫教育


「はじめての中学受験 第一志望合格のためにやってよかった5つのこと~アンダンテのだんだんと中受日記完結編」ダイヤモンド社 ←またろうがイラストを描いた本(^^)


「発達障害グレーゾーン まったり息子の成長日記」ダイヤモンド社
(今回もイラストはまたろう)
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ヒラリー・ハーン、過去と現... | トップ | モチベーションアップに、ア... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ピアノ」カテゴリの最新記事