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品質保証活動の実践活動(その4:5Whyによる動機的原因追求)

目的

事故を起こした原因には、引き金となった直接的原因と、その直接的原因を作り込むに至った原因、動機的原因がある。

直接的原因には、事故を引き起こした直接的な原因を言う。
一般的に「原因」と言われるもので、プログラムのロジック不良であったり、マニュアルの記載不良などがある。
これらの不良は、認識の誤りや、判断の誤りなどに基づいて作り込まれる。

動機的原因は、直接的な原因の背景にある本質的な原因を「動機的原因」と呼んでいる。
これを追求することで事故の真のポテンシャルを顕在化できる。
さらに、本質的な対策を講ずることが可能となり、これを「再発防止対策」と呼んでいる。
動機的原因を追求する目的は、認識や判断のどこが弱かったのかを明らかにして二度と同様の事故を起こさない再発防止策を求めることにある。

追求の手順

○問題の認識:事実確認は現場・現物・現実(三現主義)を見てやれ

事故には色々な問題の見え方(顔)がある。
何が問題かを誤ると、本当の問題に対する再発防止策にならない。
従って、事実確認は必ず現場・現物・現実を見てやること。これは刑事の事件に対する姿勢でも同じです。
ハードウェアと同じようにソフトウェアも現物確認は重要である。
ソフトウェアの場合の現物は、仕様書とソースプログラムが一般的である。
仕様変更の場合は、変更前と変更後の仕様書が必要。
ソースについても同様に変更前と変更後が必要である。
見逃しに関しては、テスト計画書、テスト項目(PCL)、テスト結果等が必要である。
他にも必要に応じてレビュー実施報告書等準備すること。
例えば、オンラインダウンと言う事故には、単にダウンをしたことが問題なのか、許容ダウン時間内に回復できなかったことが問題なのか、色々な顔があり、各々異なる再発防止策が必要である。

動機的原因を追求しようとするときには、お客様にとって、何が迷惑だったのかをよく理解してから、追求を開始すること。

○直接原因の特定

技術的に何が原因で事故が発生したのかを特定する。
原因は整理し、事故ポテンシャルの高いものに絞込んでから以下に展開する。

○追求の切り口

不良は作り込まなかったらよかったし、予め適切なテストを行い除去していれば良かった。
また、適切な指示をしていたら良かったし、確認すればよかったと、必ず作り込みと摘出と言うペアで、「たら」「れば」の反省がある。追求はこの作り込みと摘出を切り口として行う。

○動機的原因追求

直接的原因を作り込むに至った、又は摘出できなかったのはなぜかを「なぜ」、「なぜ」と追求する。
必ずしも5Wまで追求する必要はない。
3Wでも4Wでも動機的原因が明らかになったところでやめてよい。
逆に、5Wまで追求しても動機的原因が導き出されない場合は、さらに6W,7Wと追求を続けること。

○再発防止策

追求した動機的原因に対応した、二度と起こさないための再発防止策を求める。
自分の立場(管理者、担当者)で追求すること。
例えば、プログラム作成を外注先に作業外注しているプログラムで不良が発生した場合。
コーディングを有識者とレビューすると言った再発防止策になるケースがある。
これは、発注のやり方や、検収時の受け入れ検査のやり方、プロジェクト管理のやり方に問題がなかったかを追求すべきである。
外注先でのレビューが問題で避けられないのであれば、なぜレビューをやらせ、レビュー内容を確認する仕組みをつくらなかったという、自分の立場で追求すること。
顧客、外注先などの他人の判断や認識の誤りに基づいた再発防止策は他人任せであり,主体性がない。
自分の身を責め、自分の中に反省を見出して追求すること。

【真の原因追究】

たとえば、一般的なバグ対策は、バグを再現させプログラムの流れをトレースし、渡されたパラメータのチェックが抜けていたことに気付き、パラメータの正当性のチェックを追加する。その後、もう一度同じデータを流して、発生しなくなったことを確認し終了する。
多くの開発組織では、これでバグ対策したことになる。

「どうしてあの時、パラメータをチェックしなかったのか」ということの原因(真の原因*)を解明していない。
解明したのは発生の仕組みであって、バグの作り込み原因ではない。
バグ作り込みの真の原因は、パラメータをチェックするかどうかが、一人ひとりの判断に任されている組織の体制であり、その時点でエラーコードが決められていない作業の手順であり、さらに言えば、職場の文化で、「設計」を飛ばして、コーディングの作業に入ったと思われる。

不具合報告書にしても、反省会にしても、真の「失敗の原因」を掴んでいるかが問題になる。「原因」と言うのは、それが改善されれば症状が出ない。
しかしながら、真の「原因」が他にある場合、それに気付かなければ症状は改善しない。

「反省会」は、そこで提案された「改善案=本来は成功のパターン」が、単に「失敗のパターン」を裏返しただけのものか、真の「原因」に触れるものであるかどうかを議論する場でもある。

そうして、それが上手く行きそうだとすれば、何度も「成功のパターン」を繰り返し身に付けることが大切なことなのである。

*:真の原因追究に関して、5whyによる追究が効果的である。
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