大フィルとのブルックナー9番、都響とのエルガー1番と、このところ、尾高マエストロの音楽に心を揺さぶられっぱなしであるが、今回の「戴冠ミサ」にも魂を奪われた。
ピアノとの合唱稽古、尾高マエストロの棒によるグローリアの天衣無縫さに、モーツァルトの微笑むのが見えたような気がした。その音楽の煌めきに、最初こそ対応しきれなかった大フィル合唱団も、歌い進めるうちに、波長を合わすことができた。その対応力に合唱団の成長を感じられたことは嬉しいものであった。
そして、昨夜のオーケストラ合わせ。モーツァルトの天才性に打ちのめされた。当時のザルツブルク宮廷礼拝堂の編成によるヴィオラを欠いた弦楽セクションは、実質、第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、と低弦(今回はチェロ+コントラバス)の三声しかない。しかし、その音楽の豊さ、雄弁さは、どうだろう。
そのオーケストレーションの天才性をまざまざと教えてくれる尾高マエストロと崔 文洙さんをトップに置く大フィルのなんという芳醇なサウンド! 感謝の言葉しかない。
わたしとしても、コロナ禍にあって、毎度「今日が最後かもしれない」との想いで、大阪に通い、渾身のレッスンを重ねてきた。オケ合わせ2日目となる今宵、そして本番と、大フィル合唱団は、マスク+ディスタンスというハンディキャップをものともせず、更に羽ばたいてくれることだろう。
緊急事態宣言発令を直前に控えた落ち着かない情勢ではあるが、否、そんな今だからこそ、聴衆の皆様にも、心の平安と歓びのため、会場に足をお運び頂き、モーツァルトの微笑みを感じて欲しい。