愛する大フィルがブルックナー「6番」を演奏するというので、矢も楯もたまらずフェスティバルホールに駆け付けた。新型コロナにより大フィル合唱団のレッスンも中止され、実に4か月ぶりの大阪である。
「6番」は、ブルックナーの交響曲の中にあって地味な存在で、演奏頻度は高くない。「3番」以降の7曲の中では録音も少なく、レコード全盛時代にはカイルベルト、クレンペラー、ヨッフムくらいしか手に入らなかったことを思い出す。
しかし、作品の魅惑は絶大で、特にはじめの2つの楽章の雄大さ、深遠さはブルックナーならではのものである。他のナンバーより人気の薄い要因は、充実しきった前半に対する後半の2つの楽章の比重が軽いことであろうが、スケルツォもフィナーレもそれぞれに魅力があり、もっと演奏されるべき作品であると思う。
わたし自身、「6番」を生で聴くのは、1984年の朝比奈&東響以来というから36年ぶり。東京文化会館の3階ライト側から見下ろしたステージ風景を今でも思い出す。メインのブルックナーも良かったけれど、前プロのハインリヒ・シフを独奏に迎えたドヴォルザークが胸躍る快演であった。
今回のマエストロは飯守泰次郎先生。
リハーサル3日目の後半より聴かせて頂いたが、その脱力の妙により、大フィルから、かつてない柔らかで、奥行きのあるサウンドを紡ぎ出してくださっているように思う。
ここぞというときにも、全く力みのない指揮をなさるので、オーケストラにも余分な力の入ることはない。その結果、力こぶを伴った演奏よりも、大きく、味わいのある音楽となっている。第2楽章では何度か「奇跡か!」と思われるような身震いする瞬間すらあった。
失礼ながら指揮は明瞭とは言い難い。しかし、それがオーケストラの自主性を引き出し、実に集中力に富んだアンサンブルを生み出した。やはり、大事なのは人間力なのである。
本日、午後3時よりの2日目は、より自由な演奏を展開してくださるであろう。今からとても楽しみだ。
※写真1枚目は、大フィルTwitterより転載しました。