久しぶりに夜空をじっくりと眺めてみました。
西の空には、三日月が今にも山にひっかりそうな、雲一つない
満天の星空。
集会所からは、明日の衣装付けの総練習の音。
静かな夜です。そして明日はいよいよオハケオロシの日。
この日は、小学校から帰ったらすぐ本浦の中浜に急いだものです。
牛鬼のかごがじっと座っていたからです。頭も毛も何もつけていない
ただのかごですが、胸がどきどきしました。
のぼり旗はすでに立てられていて、一気に特別な日がやってきたと
小さな胸は緊張しました。
おとながそわそわするものですから、子供なんてもう寝てられない。
早く寝よ!と言われながら興奮剤を飲んだように頭はお祭りでいっぱい。
おまけに旗がギィギィなるものですから、ますます頭は冴える。
ようやく布団が温まってきて、やがて夢の世界へと入るころには
どこかで牛鬼の笛が鳴っていました。
一年のうちで一番いい服を着せてもらい、遠くからびくびくしながら牛鬼を追い、
本浦の親戚でごちそうをいただく。
いつまでたっても変わって欲しくない、お祭りの風景。
わたしはこれが好きで、サラリーマンをやめて実家に帰ってきました。