監督 犬童一心
原作 大島弓子
出演 伊勢谷友介(日暮里さん)池脇千鶴(なりす)
リアルキッズの一人
『ジョゼと虎と魚たち』に心魅かれてからこのビデオを探していたのだけど、見たい!という一念は通じるものなのか?(笑)テレビの深夜放送で見ることができました。
『月とキャベツ』を見た時に似た感動を味わいました。
ある意味で究極の純愛映画です。笑
邦画って素敵だ♪
ある日、目が覚めたら80歳の老人が20歳の青年に戻っていた。
漫画が原作です。
このお年寄りの日暮里さんは単に20からの記憶をなくした、そういう見方が正しいのかもしれないけど、私はそうは思いたくない。
日暮里さんは外見はともかく、心は20の青年なんだと思いたい。
大学生の心、それも60年前の無骨で純粋な心を持つ青年。
現代人がなくしたかもしれない真摯で真面目な態度、何よりも澄んだ目。
演じる伊勢谷友介は当時の青年はこうであったろうという感じが出ていて、とても良いと思う。
白い絣の着物と角帽が似合いそう。
その日までは世をすねて偏屈でどうしようもなかった日暮里さんの元に、成り立てのヘルパーのなりすがやってきた。
彼女はいつも日暮里さんが大学の側で見かける憧れのマドンナにそっくりだった。
その人が毎日、自分の世話をしにやってきてくれる。
”これはきっと夢を見ているのだろうけど、なんて幸せな夢だろう”
日暮里さん曰く、「(夢よ覚めないで)身体が言うことをきかない、現実の自分は何か重い物(実際は高齢と病)を背負っているらしい。多分”布団”だと思うけど。。」
この台詞が可笑しい。
20に戻った日暮里さんはまだ発病していなくて屈託がない。
犬童さんの映画はどんな時にも深刻になり過ぎず、ユーモラスで噴出してしまう。
池脇千鶴さんのはちきれんばかりの若さと可愛いさ。
時折見せる芯の強そうな台詞回しはご愛嬌。(笑)
やっぱり上手にぬかづけ漬けています。美味しそう。
日暮里さんの姿の奥の誰かを見抜くような池脇さんの”目 ”には注目です。
漫才のリアルキッズの一人が不思議な役どころで出演。
この意外性にも笑えるのだけど。
「早く現実に気づけ、でないと周りの人を不幸にするで」
ここから結末に触れています。
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夢なのに、なんでなりすさんは毎日、家に帰るの?
結婚しよう!
私、幸せになるのが怖いんです。
心の奥から絞り出すように言う池脇さんの表情が忘れがたいです。
この頃、隣の子供は日暮里さんに、おじいさんにまた、遊ぼうと伝えてと言っていた。
子供には真実の日暮里さん(20歳の)が見えたのかな。
日暮里さんは自分が書いた年表を見つけて読んでしまい、これが夢か現実かを確かめるために・・・
池脇さん独特のあの歌うようなしみじみとしたナレーションで映画は終わります。
それにしても思い出すのは、あのドライブした日のことです。
日暮里さんは少し興奮して、にこにこ笑って手を振っていました。
>>でも、僕は素晴らしいと思うんです。
>>何もかも、本当に素晴らしいと思うんです。
現実には日暮里さんは20過ぎに発病し、結婚も就職も全てを諦め、
心臓が止まらないという事だけに気をつける人生を送らなければならなかった。
心臓止まらず、心臓止まらず。。。の文字の続く日暮里さんの書いた年表、備忘録。
長い彼の無為な人生が思いやられてやり切れない。
老いていく悲しさ。
でも、最後に彼はキラキラと金色に輝く海のような青春を悔いなく生きなおしたんだと思う。
なりすもまた、義理の弟への想いにけじめをつけた。
黄金色の海は言葉にならないくらい美しく、
青い空は澄んで。
いつまでも大切にしたい無垢な心。
爽やかな余韻が胸に残りました。