侵略戦争正当化論を清算していない安倍談話浮き彫りに!
1932年1月8日『関東軍に賜りたる勅語』を直視せよ!
戦後70年談話/歴史の教訓胸に未来を拓こう 2015/8/15 4:00
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20150815-OYT1T50003.html
◆反省とお詫びの気持ち示した◆
先の大戦への反省を踏まえつつ、新たな日本の針路を明確に示したと前向きに評価できよう。戦後70年の安倍首相談話が閣議決定された。談話は、日本の行動を世界に発信する重要な意味を持つ。未来を語るうえで、歴史認識をきちんと提示することが、日本への国際社会の信頼と期待を高める。首相談話には、キーワードである「侵略」が明記された。
◆「侵略」明確化は妥当だ
「事変、侵略、戦争。いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争を解決する手段としては、もう二度と用いてはならない」との表現である。「先の大戦への深い悔悟の念と共に、我が国は、そう誓った」とも記している。首相が「侵略」を明確に認めたのは重要である。戦後50年の村山談話、戦後60年の小泉談話の見解を引き継いだものだ。
1931年の満州事変以後の旧日本軍の行動は侵略そのものである。自衛以外の戦争を禁じた28年の不戦条約にも違反する。特に、31年10月の関東軍による中国東北部・錦州攻撃は、民間人に対する無差別・無警告の空爆であり、ハーグ陸戦規則に反する。空爆は、上海、南京、重慶へと対象を拡大し、非戦闘員の死者を飛躍的に増大させた。一部の軍人の独走を許し、悲惨な戦争の発端を日本が作ったことを忘れてはなるまい。
ここに有識者懇談会・安倍談話・読売などのゴマカシ・デタラメ・大ウソが浮き彫りになります。
「一部の軍人の独走」論です。大ウソです。以下をご覧ください。天皇は「自衛の必要上」「東洋平和の基礎を確立し、「朕が信奇(人偏)に對へんことを期せよ」と「勅語」を与えているのです。
この天皇の勅語の誤りを認めたことの意味について、読売も、有識者懇談会も、安倍首相も沈黙です。黙殺です。「キーワードだけ入れておけ!」という安倍政権の思惑が浮き彫りになります!
山田朗「満洲事変と昭和天皇」
https://m-repo.lib.meiji.ac.jp/dspace/bitstream/10291/1524/1/sundaishigaku_108_(61).pdf
関東軍へ勅語(昭和7年1月8日)
曩ニ満洲ニ於テ事変ノ勃発スルヤ、自衛ノ必要上、関東軍ノ将兵ハ、果断神速、寡克ク衆ヲ制シ速ニ之ヲ芟討セリ。爾来艱苦ヲ凌キ祁寒ニ堪ヘ、各地ニ蜂起セル匪賊ヲ掃蕩シ、克ク警備ノ任ヲ完ウシ、或ハ嫩江・斎々哈爾地方ニ、或ハ遼西、錦州地方ニ氷雪ヲ衝キ、勇戦力闘、以テ其ノ禍根ヲ抜キテ、皇軍ノ威武ヲ中外ニ宣揚セリ。朕深ク其ノ忠烈ヲ嘉ス。汝将兵、益々堅忍自重、以テ東洋平和ノ基礎ヲ確立シ、朕カ信倚ニ対ヘムコトヲ期セヨ。
首相は記者会見で、「政治は歴史に謙虚でなければならない。政治的、外交的意図によって歴史が歪(ゆが)められるようなことは決してあってはならない」と語った。的を射た発言である。
「侵略」の客観的事実を認めることは、自虐史観ではないし、日本を貶(おとし)めることにもならない。むしろ国際社会の信頼を高め、「歴史修正主義」といった一部の疑念を晴らすことにもなろう。
談話では、「植民地支配」について、「永遠に訣別(けつべつ)し、すべての民族の自決の権利が尊重される世界にしなければならない」という表現で触れた。
談話は、国内外で犠牲になった人々に対し、「深く頭(こうべ)を垂れ、痛惜の念を表すとともに、永劫(えいごう)の、哀悼の誠を捧(ささ)げる」と記した。
ドイツ首脳の言葉を一部踏襲したもので、村山談話などの「お詫(わ)び」に相当する表現だ。首相の真剣な気持ちが十分に伝わる。
談話は、日本が先の大戦について「痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきた」として、村山談話などの見解に改めて言及した。さらに、「こうした歴代内閣の立場は、今後も、揺るぎないもの」と明記している。
言葉は躍っても、満州事変にまで至る経過と、満州事変に対する評価が誤っていたことの意味にまで言及していないことは、「誠の気持ち」が欠落していることを浮き彫りにしています。
◆女性の人権を尊重せよ
今回の表現では納得しない一部の近隣諸国もあろう。それでも、反省やお詫びに触れなくていい、ということにはなるまい。
「戦場の陰には、深く名誉と尊厳を傷つけられた女性たちがいたことも、忘れてはなりません」という談話では、被害者は納得できないのは当然です。それは主語が曖昧だからです。誰が何のために国際法に違反して「女性たち」の「深く名誉と尊厳」を傷つけたのか!曖昧だからです。他人事です。ここに先の「一部の軍人の独走」論と同じ主客転倒と本質が隠ぺいされていることが浮き彫りになります。
欧米諸国を含む国際社会全体に向けて、現在の日本の考え方を発信し、理解を広げることこそが大切な作業である。
その意味で、安倍談話が、戦後の日本に手を差し伸べた欧米や中国などに対する感謝の念を表明したことは妥当だろう。
「戦時下、多くの女性たちの尊厳や名誉が深く傷つけられた過去を、この胸に刻み続ける」との表現は、慰安婦を念頭に置いたもので、韓国への配慮だ。
談話が表明したように、「21世紀こそ、女性の人権が傷つけられることのない世紀とするため、世界をリードする」ことが、今、日本に求められている。
談話は、戦争とは何の関わりのない世代に「謝罪を続ける宿命を背負わせてはならない」とも強調している。
この問題に一定の区切りをつけて、子々孫々にまで謝罪行為を強いられないようにすることが大切である。中国や韓国にも、理解と自制を求めたい。
◆次世代の謝罪避けたい
首相は記者会見で、談話について「できるだけ多くの国民と共有できることを心掛けた」と語った。歴史認識を巡る様々な考えは、今回の談話で国内的にはかなり整理、集約できたと言えよう。
談話は、日本が今後進む方向性に関して、「国際秩序への挑戦者となってしまった過去」を胸に刻みつつ、自由、民主主義、人権といった価値を揺るぎないものとして堅持する、と誓った。「積極的平和主義」を掲げ、世界の平和と繁栄に貢献することが欠かせない。こうした日本の姿勢は、欧米や東南アジアの諸国から幅広く支持されている。「歴史の声」に耳を傾けつつ、日本の将来を切り拓(ひら)きたい。2015年08月15日03時02分 Copyright©TheYomiuriShimbun (引用ここまで)
「次世代の謝罪避けたい」のであれば、「深く頭を垂れ、痛惜の念を表すとともに、永劫の、哀悼の誠を捧げる」などという情緒言葉を散りばめるのではなく、また「政治は歴史に謙虚でなければならない。政治的、外交的意図によって歴史が歪められるようなことは決してあってはならない」というのであれば、「一部の軍人の独走を許し、悲惨な戦争の発端を日本が作った」などという誤った歴史観を清算することです。
しかも、「自由、民主主義、人権といった価値」「積極的平和主義」という対中脅威と敵視論に立つのではなく、憲法平和主義を活かした国際協調主義に立つべきです。満州事変にあたって、天皇が「東洋平和」を掲げていたことを忘れることはできません。安倍談話が、このことを隠ぺいして、いくら「美しい言葉」を散りばめても、行動が伴ってはじめて、国際社会が信頼するのだということを強調しておきます。