岩木山を考える会 事務局日誌 

事務局長三浦章男の事務局日誌やイベントの案内、意見・記録の投稿

「第28回東北自然保護の集い」の報告「三陸の海と放射能汚染」(2)

2007-11-24 06:45:48 | Weblog
(今日の写真は「第28回東北自然保護の集い」1日目開会式の様子である。
お詫び:この報告はもっと早くすべきであった。原稿は既に書いていたのだが、「弘前公園有料化」についてのシリーズが先になってしまい、遅くなってしまった。
 なお、この報告は今月12日のブログを承けての続きである。関連性があるので、関心のある方は、是非12日のものを読んでから、これに目を通してほしい。)

 第一日目は、記念講演として1.「三陸の海と放射能汚染」というタイトルで、三陸の海を放射能から守る岩手の会事務局長の、永田文夫さん、2.「日本の天然林の現状」というタイトルで京都大学名誉教授の、河野昭一さんが、それぞれ60分ずつ講演した。

            1.「三陸の海と放射能汚染」

 「東北自然保護の集い」で、「三陸の海と放射能汚染」という反原発の運動が紹介されたのは初めてであり、画期的なことである。東北では、秋田、岩手、山形に原発がない。
  2006年版の理科年表によれば、世界の地震分布地図では、日本は全国が真っ黒になっている。つまり地震の巣のうえで、日本人は暮らしていることになる。その日本に、現在55基の原発がある。
 この7月破壊された柏崎刈羽原発は「豆腐の上の原発」、静岡の浜岡原発は「なまずの上の原発」、青森の六ケ所村の核処理施設と原発は「積み木細工の上の原発」なのだそうである。
 その六ケ所村の核処理施設から、太平洋の沖合3km、水深44mで、放射能を大量に含んだ排水が放出され、それが海流に乗って、三陸海岸に押し寄せてきているそうである。海草から通常の10倍のプルトニウムが最近検出されたとか、乳児死亡率が高いとか、オドロオドロしい事実が話された。このまま放置すれば、三陸の豊かな漁業資源はどうなるのか、政治家は事実を隠して、蓋をしている以上、市民が動きださないと事態は動かないことになる。
 当面、「放射能海洋放出規制法」の制定を求める運動を進める必要があるという、永田さんの話であった。
 それにしても、国際的な核の監視組織のIAEAでさえ、1986年の旧ソ連でのチェルノブイリ原発事故による人体への影響は、小児甲状腺ガンだけだと、他の多くのガンの発生との因果関係を拒否している。1989年、「ガイア仮説」で有名になったイギリスの科学者、ジェームス・ラプロックはいまや、原発こそ地球を救うとわめいているし、IPCCの中心的科学者、ステーブン・H・シュナイダーも原発推進論者として名高い。CO2などいくら努力しても、減少できないのは自明だから、いまに、原発建設の大合唱が世界的に、起こりそうである。「エントロピーの法則」通り、世界は、いよいよ「化石文明」の終焉を迎えている。

               2.「日本の天然林の現状」

 次の講演は河野昭一さんの「日本の天然林はいま」だった。パソコンの調子が悪く、集中できなかったが、日本の森が置かれている危機的状況はよく理解できた。日本には、1950年、森林の38%にあたる985万ha(日本の森林は約2600ha)の原生林があったが、52年後の2002年には、77%278万haに急減した。その中核となっている天然林を、いま林野庁は各地で伐採している。
 下北半島のヒバやブナ、北海道のブナ、秋田のスギ、他に各地のカツラ、ヒノキなどである。これらの材木は高価に売れるからに過ぎない。先日の森林管理局の現地検討会では、天然秋田スギでいえば、130万立方mの天然スギのうち、毎年3000立方m、10年で3万立方m伐採する予定だという。全国一背の高い秋田・水沢の天然スギは、高さ58mで、体積は40立方mメートルだから、毎年75本、10年で750本伐採という計算になる。
 この伐採は、民間業者に作業させるから、そのズサンな作業は森の生態系を致命的に傷める結果を招くと、河野さんは説明する。
 森の土壌層は「埋土種子集団」としてかけがえのないものだが、それをねこそぎにして、木を引きずっていく。河野さんは、ソーニング、つまり、切ってもいい場所と、そのままにしておく場所をしっかり決めることや、林床を決して傷めないことを、強く主張していた。要は、一時の金のために、かけがえのない日本の宝である天然木は伐採しないことにつきる。

 ■各県からの報告■

 講演の後、東北6県の各団体から、取り組みの報告があった。各県ともプリントを用意して配付していたが、なにしろ時間が5分と言われては、どうにもならない。
1年に1度集まる意味がこれではなくなってしまう。消化不良もひどかった。
 青森県「岩木山を考える会」から「岩木山に不法に蒔かれたコマクサについて」の報告があった。秋田駒ヶ岳からだれかが意図的に持ち込んだらしい。岩木山の固有の生態系を攬乱する危険が強い。県と協力して、07年9月、抜き取りを実施。8年以上のものも含め、110本ちかくを抜き取ったという。
 宮城県の「仙台のブナ林と水・自然を守る会」からは、[スギ人工林における林床広葉樹育成の試み」というプリントが配付され、説明があった。将来はスギと広葉樹の混交林を目指し、後白髪山南西斜面、標高800mの30年生のスギ林で実施している。笹刈りなどの作業は並のエネルギーではできない。ようやく成果がまたれるところである。
 福島からは、尾瀬国立公園が分離して設立されたこと、それに伴う観光客の激増や地元の思惑などの説明があった。大規模林道促進の動きもあること、ナラ枯れが会津まで来たことなど。
 山形からは、「出羽三山の自然を守る会」から「これでは山形県からクマが絶滅する、2006年に676頭を捕殺」というショッキングなタイトルのプリントが配付され、説明があった。
山形県では棲息数推定1500頭のうち、半数のクマが殺されたことになる。
 こうした問題は共通の議論になりうるので、時間がほしかったが、時間不足ではどうにもならない。

■「国有林内の天然林を環境省に移管し保全する改革に関する請願書」について■

 昨年、2006年に「国有林内の天然林を環境省に移管し保全する改革に関する請願書」が全国の自然保護団体に郵送された。宛て先は政府、代表世話人は河野昭一さんだった。
国有林の天然林は林野庁の管轄になっているから、その保全を要求するのは林野庁にすればスッキリする。なぜ環境省なのかもわからないし、入山禁止・規制措置撤廃など関係のない事項も羅列している。
 まず、岩木山を考える会からは「国有林内の天然林を環境省に移管し保全する改革に関する請願書」の署名用紙に記載されていることに関する質疑」が文書として、次のようなことが出された。
                    
・請願書の「一 誓願の趣旨」中の『…現在一部の山域で実施されているような「入山禁止・規制措置」は即刻撤廃し、誰もが登山や釣りをとおして身近に自然と親しむことができる、封印されることのない、開かけれた国有林保護政策が実施されることも重ねて強く要望します。』
・請願書の「二 誓願事項」中の『三、地元生活者による山菜採塔の伝統的権利を保障し、誰もが自然にふれあうことの出来る、国民に開かれた国有林保護政策を実施していただくこと。』については…

1. この部分に関しては天然林を環境省に移管するという誓願の趣旨から逸脱しているのではないか。
2. 無制限に入山を認めるべきだという意図がありありで、これだと簡単に商業主義と結びつき、自然を保護するという趣旨がないがしろにされるおそれがある。天然林を守れという時、入山を規制する地域が出てくるのは当然であり、すべて規制を撤廃するということは恣意的な側面を懸念させるものではないか。
 この「国有林内の天然林を環境省に移管し保全する改革に関する請願書」の署名用紙に記載されている文章については、4月に行われた本会の総会時に以上のような意見が出た。 その意見・要望に従い、会長名で誓願署名運動の主管に問い合わせたが、いまだに何の応答もない。』
 その報告後、まるで堰を切ったかのように、東北の他5団体から、この請願書の趣旨に対するクレームが続出した。これまで出なかったことが不思議なくらいであり、出たのは当然であろう。
 本会からの問い合わせにもまったく言及してくれなかったことは「遺憾」なことであろう。河野先生は参加されていたが、中心になっている所管団体からの参加が全くなかったこともおかしい話しである。        (この稿は明日に続く)