たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

『トスカーナの青い空』より_「ボッティチェッリの春」

2015年05月01日 21時25分28秒 | 本あれこれ
「花の都、フィレンツェ」とはあまりにも言い古されたことばだが、その昔といっても紀元前50年くらいというから相当なものであるが、もうすでにこの町は花の町と呼ばれるべくして生まれた。それよりもまた千年も前にこの近くのフィエゾレにはエルトリア人が住んでいて、古代ローマ人は彼らを追い出そうとして今のフィレンツェのちょうど共和国広場があるあたり一面の“花咲く野”に植民地を建設したのだ。フィレンツェの歴史はこうして始まる。

 それからおよそ1500年の時を経て、その花咲く野に花の女神と美の女神を描いた傑作が誕生した。それはサンドロ・ボッティチェッリの『プリマヴェーラ(春)』である。この『春』という題名はかのヴァザーリが勝手に命名したもので、画家自身はどういう題名を付したかは分かっていない。それどころかこの絵の主題がなんであるかさえ諸説粉々である。しかし、私としてはまあそれはどうでもよいではないかと、ただただこの絵の前に立って陶酔にひたるだけである。目の前のうまい料理をいただく前に材料は何かなどと探っていては、せっかくのものが冷めてしまったりまずくなってしまう。

 しかし、見れば見るほど美しさの影に隠れた神秘を感じるのは確かであり、それがまたこの絵の魅力なのだろう。たとえばビーナスやフローラ、三美神らの足元一面に咲き乱れる花々はいったいどんな花なのだろう。そんな興味を持ち始めたら、やはりいろいろ調べたくなるのも無理はない。幸いにしてレヴィ・ダンコーナという研究者がそれをやってくれた。彼によるとそこに描かれている植物は、アイリス、カーネーション、サフラン、野苺、バラ、ヒヤシンス、ヒロハノマンテマ、矢車草、ミルテそしてオレンジに月桂冠などだそうである。」

(篠利幸 文・写真『トスカーナの青い空』東京書籍、1995年発行より引用しています。)

「踊れトスカーナ」というイタリア映画を観た後、いつかトスカーナに行きたいという思いからこの本を買って20年近くが過ぎてしまったようです。先日文化村のミュージアムに行って久しぶりに思い出しました。この夢をかなえることはまだできていません。生きている間にかなうかな、かなえたい。今は海外に行くのおっかない感じだし、実情として無理ですがいつかは・・・。『エリザベート』の中の「私だけに」という曲で、シシィは、生きてさえいれば、と絶望の中から自我に目ざめて歌います。そんなこともつらつらと考えつつの、明日はイタリアデーになりそうです。急に暑くなりました。


トスカーナの青い空
篠 利幸
東京書籍

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