たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

星組『鎌足-夢のまほろば、大和し美しー』_思い出し日記(4)

2020年06月12日 00時30分48秒 | 宝塚
2020年6月7日:星組『鎌足-夢のまほろば、大和し美しー』_思い出し日記(3) 

https://blog.goo.ne.jp/ahanben1339/e/8e1124d523d2620094961e41caa82a87

 断片的な備忘録、

 ナウオンステージから鎌足を演じた紅ゆずるさん、「鎌足を主役にした物語は今までになかった、『ベルサイユのばら』の裏が『スカーレット・ピンパーネル』ぐらい、中大兄皇子や入鹿を主役にした物語に登場する鎌足の裏を描いている、どう演じるのか考えたとき、子役から演じて時間軸と共に成長していくのはむずかしく面白い、15歳から病気で亡くまるまで演じることはめったにないので挑戦」。

 昨年5月25日のライブビューイングでは見逃した子ども時代。代々神祇官を務める中臣(なかとみ)の家に生まれたことを厭い、父より課せられた修業を抜け出して僧旻の学塾に行く鎌足は父と対立。鎌足の父・中臣御食子(なかとみのみけこ)を演じたのはれんれん(如月蓮さん)、おひげをつけて鎌足を叱り飛ばす姿は、二幕で薄幸の有間皇子(ありまのみこ)を演じたとは思えない太さがありました。見事な、全く違う二役の演じ分け、『AnotherWorld』で阿修羅を演じていたのはれんれんだと知った時、れんれんのことがすごく好きになったのですがこういう一生懸命さが素敵。入鹿の父・蘇我蝦夷(そがのえみし)を演じた輝咲玲央さんも専科の華形ひかるさん演じる入鹿の父親ということで、ひげをつけて、絶大な権力を手にしてさらに大きな権力を手にしていくために、子でさえも道具に過ぎなかった冷酷な父親像、お見事でした。入鹿が皇極天皇が皇位を継いだことに不満をもつ山背大兄王(やましろのおおえのきみ)を殺めたと知った時、入鹿はすでに後戻りすることのできない道に足を踏み入れてしまっていました。とめようとする父に対して入鹿は「そう仕向けたのはあなただ」と。真逆の人生を歩むことになった二組の親子の、それぞれのすれ違いも描かれた物語。

 「星々の話をしよう」、唐で学んだ学問を教える一樹千尋さん演じる僧旻(そうみん)先生、学塾の悪ガキたちはあくびしたり木管で肩を叩いたりしてちっとも話をきいていないのに先生はきいてくれていると思って一生懸命話してくれているやさしい先生、勝者の歴史をつくろうと不遜な笑みをもらす船史恵尺(ふねのふひとのえさか)に対して、鎌足の生涯の生き証人として温かい眼差しを注ぎつづける役所でした。

 これも書き留めておきたいエピソード、皇極天皇の皇位継承に不満をもち、入鹿に殺されることとなった、ひろ香祐さん演じる聖徳太子の子息・山背大兄王(やましろのおおえのきみ)と、紫月音寧さん演じる妻・春米女王(つきしねのひめみこ)。入鹿に殺される立ち回りの中で、皇位継承者としての立ち居振る舞いから父親と母親というところから男女がみえて全てをみせてほしいという要求が演出の生田先生と殺陣の栗原先生からあった、その要求にこたえようと、役作りのために今日の朝なにをしていたかというところから入鹿に殺されるまで何をしていたかを毎日発表しあっていたと。短い出番の中でその要求に見事にこたえることができていたと思います。お二人の立ち回り、いろいろな想いがこめられていると感じたので、こんな役作りが裏にあったのかと大きくうなづきました。二人の子どもの役を演じていたのはごめんなさい、どなかたわからないのですが父と母に次いで「残しておくわけにはいかない」と入鹿に殺されてしまう子役もほんの一瞬ですが見事でした。

 紅ゆずるさん、華形ひかるさん、梅田芸術劇場ドラマシティ公演時の終演後のスカイステージレポートでも「子ども時代が全ての始まりなので大劇場公演とちがい子役ではなく自分たちで演じていることがとても重要」と口をそろえて話しています。

 僧旻先生の学塾に遅れていくと悪ガキたちから「中臣の子か、お前のすわる席などない」といじめられる鎌足を「席がないならお前たちが出て行けばいい!」とかばってくれたのは少年の日の鞍作(くらつくり)、のちの蘇我入鹿でした。鞍作は腐敗した大和の政治を変えたい、生まれに囚われない唐を見習って自分が大臣になり、大和をよくしていきたいという高い志をもっていました。中臣という生まれから自分になりたいと願う鎌足を鞍作は励まし、自分が大臣になったら「新しい名をつけてやろう」と大きな夢を描くのでした。綺咲愛里さん演じる10歳の与志古を交えて三人で猿岩の前で肩を組みあい、「志、志~♪」と誓う三人。皇極天皇を守るため危い道を足を踏み入れてしまった入鹿は、いさめる鎌足に対して「鞍作はもういない」「俺にはもう近づくな」と血で染まってしまった自らの死を予感するかのようでした。月日は流れ、父・蝦夷の傀儡(くぐつ)として入鹿が大臣となったことで少年の日のでっかい夢はついえたのでした。雪組の『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』と通じるものがあります。足を踏み外した入鹿を討ったのは少年の日、へっぴりごしで弱い鎌足に入鹿が手ほどきをしてくれたまさにその弓。「教えてやろう、上から引き下ろせ、そうすれば十分な力が矢にかかる、そして狙いをさだめてひといきに放て!」、この時の鎌足の凛々しいことといったらないのですが、少年の日の入鹿の声が鎌足の耳元でリフレインする演出になっていてなんともせつない。「これでようやく終われる、鎌足お前の勝ちだ、だが鎌足お前はこれからだ、人を斬ったものは己が斬られるまで斬り続けなければならない」ということばを遺して入鹿は息絶えます。二幕では入鹿の言葉通り鎌足は次々と人を斬っていかなければならなくなるのでした。






 長くなってきていますが、これもオンデマンド配信で視聴。

 スカイステージデラックス、中大兄皇子を演じたせおっち(瀬央ゆりあさん)と退団しているしーらん(壱城あずささん)との熱い星男対談、入団して星組に配属されたせおっち、今では考えられないぐらいあまりにも不器用でやりたそうだけどできなかったそう。そんなせおっちをほっとけなくて、(せおっちいわく)「首根っこつかまえてとにかくやれと叱ってくれた」、
しーらん「あれができればこれができない」「レゴって呼ぶぞ」というと「ほんまやレゴや~ナイスネーミングセンス」と返したせおっち。
しーらん「壱城あずささんと美弥るりかさんの二人でせおを育てようの会をつくった」
せおっち「二人にもっとほめられたい一心でやった」
しーらん「せおっちを教えた熱い(太王四神記の)自主稽古を忘れない」「育てることを教えられた」「スカーレット・ピンパーネルでようやくせおらしさで出てきた、少しずつ脱皮していくのがみえた」「自分の意見を言えているのが嬉しかった」
せおっち「もがき続けた役なのでそう言ってもらえると嬉しい」
しーらん「退団を決めていたので大丈夫やな、これで紅さんを支えてくれるはずやと思った」、「『阿弖流為』で瀬央ゆりあここにありと存在感を示した」
せおっち「動かない芝居を学んだ、位が高い役なのでただ立っているだけでこわいぐらい心が動いて涙がでてきた、出番は少ないけど舞台に想いが残り続ける」「壱城さんが退団されると思わなかった」
しーらん「退団を決めていたので男役として伝えていけるものがたくさんある作品で神様ありがとうと思った」「『食聖』でやっと素のせおに近い役がやってきて生き生きと演じているのが嬉しかった」「こんな素直な子が成長しないわけがない」と。

こうして芸は受け継がれ続けてきているのだと胸あつになった対談でした。



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