2024年10月2日(水)18時~東京宝塚劇場、
1月30日に中止となった公演の振替席。蒸し暑いなか、なんとか無事に観劇することができました。2階席なので階段をおりながら体のだるさを感じましたが転げ落ちることはありませんでした。劇場内、スタッフさんの多くが素顔に戻っていて明るい雰囲気、夢と希望を届けるキラキラの場所で辛気臭い顔隠しアイテムは怖いし似合わなすぎたので安心しました。
1階席にはだいもん、真彩ちゃん、べーちゃん、香取慎吾君、稲垣吾郎ちゃんがいたようです。終演後2階席から拍手する人達がいたのはそういうことでした。竹内将人さんもSNSへの投稿時間から観劇かぶっていたっぽい。客席、男性の姿も多くてこれまでと違う層が訪れるようになったのかなと思ったりしました。
大千穐楽まで11日、みなさま喉が相当疲れてきているようでしたがものすごい熱量でオーケストラの音色が頑張れとばかりにびんびんびんびん劇場の壁に響いていました。ドラムもトランペットも冴えわたっていて力強い響き。今さらですが役者さんたちとオーケストラとの掛け合いで舞台は成立していてこれぞ生の醍醐味。コロナ騒動のときの謎の黒い蓋がなくなって本当によかったです。直接のコミュニケーションが遮られていた間、舞台上のジェンヌさんたちもオケボックスも互いにそうとうやりづらくの大変だったろうと想像します。指揮者は演奏者たちをモニターでみるので微妙なずれが生じていると当時指揮者の方がブログに書かれていたし、謎の蓋がなくなった時なんのためにあったのか誰にもわからないと指揮者の方がツィートされていました。(国のコロナ専門家?たちのすすめたコロナ対策のほとんどが茶番で大きなマイナスの副作用、傷跡を残しました。)
加藤真美さんデザインの衣装、今回あらたに仕立てられたのでしょう、貴婦人たちの輪っかドレスが今まで以上に豪華で色目が素敵、生地から相当お金がかかっていると思われ、マリー・アントワネットのドレスの豪華さは娘役衣装の最高峰。雪組ならではの宮廷軍服に緑色が配されているのが美しいです。
ベルばらを観劇したのは2001年宙組『ベルサイユのばら2001フェルゼンとマリー・アントワネット編』以来で『フェルゼン編』は大浦みずきさんの全国ツアー公演を仙台までいって観劇したことが思い出されます。23年の歳月の間に二度パリとヴェルサイユ宮殿を訪れたのでその時の空気感も自ずと思い出されました。処刑が行われたコンコルド広場や広大なベルサイユ宮殿のアントワネットの彫像、寝室、セットに描かれている庭など。マリー・アントワネット展で展示されていた処刑台にのぼるとき履いていたとされる靴、幽閉されていたとき身につけていた粗末なシュミーズなども思い出されました。自由・平等・博愛をうたったフランス革命、近代市民革命の先駆けであるかのように教えられてきましたが最近の内科医の端くれさんのツィッタースペースで、自由と平等は同時に成立し得ないと話していて、国王と王妃をろくな裁判もせずギロチンにかけたなど狂気の歴史でそこはあらためて勉強しなおし。劇中でも2幕でベルナールがこの革命は失敗だったと言っています。自由と平等が成立していたら、『レ・ミゼラブル』は生まれなかったわけでフェルゼンが歌っているように自然の前には無に等しいような人間が血で血を争う闘いを繰り返すこの世の愚かしさ。フェルゼンものちに民衆の手で惨殺されることになるところまで原作では描かれたいたと記憶しています。
初演から50年の歴史の中で長い物語のどこを抽出して舞台にのせるのか、試行錯誤を繰り返しながら上演されてきていて、歌もあらたに加わり、原作に近づいているのか遠くなっているのかなんとも言えませんが、宝塚歌舞伎と言われる王道となった場面は継承しつつ、それぞれの人物像がよりわかりやすい脚本になったでしょうか。パリの社交界で留学してきたばかりのフェルゼンが嘲笑され孤立していたなかで王妃が声をかけて救ってくれたことがきっかけとなったというところがよく出ていると思いました。バスティーユの場面、出てこないのかと思ったら二幕でフェルゼンとジェロ―デルの回想シーンとして描かれていて終わるとフェルゼンが白薔薇を手向けるという演出。あーさのオスカルでこの場面がないのはあり得ないので、展開としては唐突感いなめないし、初演の安奈淳さんが椎間板ヘルニアになったという体にはきつい振付ですが外せませんね。アンドレとオスカルが天に召されていくところ、わかっているのにジェンヌさんたちがこうしてまたあらたに命を吹き込んで渾身で役を生きている姿に涙。
マリー・アントワネットが最期の時を過ごす牢獄の場面、BGMなく、しいんと静まりかえった中でロザリー、メルシー伯爵、フェルゼンと面会が進んでいくときの緊張感。実際にパリのアントワネットが幽閉されていたところ、わたしは行きませんでしたが暗くて寂しく壁には歴代の幽閉されていた人たちの名前が刻まれていて震えがくるそうです。そんなことを思いながら集中して観ていると涙。夢白ちゃんアントワネットが革命委員会に囚われの身となり衣装が簡素となっていくにつれ人として深く豊かになっていく過程の表現力が素晴らしい。ヒロイン候補として順当に経験を積み重ねてきてのトップ娘役、まどかちゃんの怪我により真風さんとのデュエットダンスのみ代役をつとめた時には凄まじい誹謗中傷が湧き起きっていましたが見事にはねのけてきました。物凄い努力をしてきているに違いありませんが、最高峰の役でその力が見事に開花。一幕のフェルゼンと出会ったあとの薔薇の幻想的なシーンのダンス、ピンクピンクピンクがよく似合って咲ちゃんと並んだ時の夢々しさよ。
咲ちゃんフェルゼン、男役の集大成、最高にかっこよく素敵でした。『蒼穹の昴』の咲ちゃんものすごくかっこいいですが、95期トップ揃い踏みに注目があつまりがちだった中でトップスターとして着実に力をつけて劇団を支える存在になってきていたのだとあらためて気づいた次第。『蒼穹の昴』を経て人としての懐の大きさ、愛情深さ、苦悩を見事に体現していて、マントを翻してスェーデンの宮廷を去っていくところ、馬車を走らせて王妃のもとへと駆けるところは王道ですが長い脚が映えていました。いかにかっこよく魅せられるか、男役としての最高峰、頭のてっぺんから足の指先までみえないところも含めて最後の最後まで咲ちゃんの男役としてのこだわり、培ってきた力が集約された場面。憧れの作品で退団できることの幸せ感が伝わってきました。真っ白な衣装も素敵でした。舞羽美海ちゃんが咲ちゃん、キキちゃんの同期と知った時はびっくり、10年前に退団しているので娘役さんは早いし、男役として生きてきた年月はすごいなと。フィナーレでロケットの終りから舞台に出続けて踊りっぱなし、赤い羽根をおろし、汗をふいてもらいと舞台上でみせる演出。夢白ちゃんとのデュエットダンスはなく、最後に大階段を降りてくるとき舞台上に雪組生の姿はなくおりきったところで客席と袖からから登場してくる演出、咲ちゃんのために書き下ろされた「セラビ・アデュー」、耳に残りやすくわたしはリズムとれませんでしたが盛り上がりますね。この後また再演されることがあってもこの曲はこの公演だけのものであってほしいような、またそうでないような。
音彩唯ちゃんのジャンヌ、華世京くんのベルナールの存在感が光っていました。ジェローデルが諏訪さきくんで彼女らしいとっても優しいジェローデル。縣千くんのアンドレ、オスカルへの愛おしさが溢れ出ていて『シティーハンター』で海坊主演じた人と同じとは思えない振り幅。わたしの中では風間柚乃くんと並んで生れついた役者顔。退団していく野々花ひまりちゃんのロザリー、王妃様にスープを飲んでいただきたい場面、娘役としての経験値をつんだ人ならではの細やかであったかいロザリー、2幕初めのダンスでフランス革命を表現したところではガンガン踊っていてフィナーレでは音彩唯ちゃんと並んで二番手のポジションでキラキラの笑顔、少年役でも力をみせてきた娘役さんの集大成。メルシー伯爵の汝鳥伶さん、昭和のベルばらから出演されてきていてオスカルのお父さんとメルシー伯爵を何十回演じてこられてきていることになるのでしょう、その場にいるだけで説得力ある存在感、大劇場では体調不良ということで数日休演、心配しましたが無事に復帰されて安堵しました。悠真倫さんのブイエ将軍、夏美ようさんのグスタフ三世、万里柚美さんのモンゼット公爵夫人、ベテランの力は舞台に厚みがでます。
東京公演、きびしい蒸し暑さと激しい寒暖差の中、休演者なく無事にきています。大千穐楽まで無事に公演できますように・・・。
なんとか無事に観劇できて心が満たされるひとときでした。星組はすっかり縁がなくなり次の予定はありませんがこうして観劇するとまたみたいなあってなりますね。唯一無二の世界です。
開演15分前にデザートを大急ぎでいただきました。栗の下に細やかにいろいろな味が詰まっていておいしかったです。食べ終わるとトアラセット一錠流し込み。