たんぽぽの心の旅のアルバム

旅日記・観劇日記・美術館めぐり・日々の想いなどを綴るブログでしたが、最近の投稿は長引くコロナ騒動からの気づきが中心です。

ミュージカル『モーツアルト』(1)

2014年11月28日 17時35分28秒 | ミュージカル・舞台・映画
ちょうど一年前は『レ・ミゼラブル』の凱旋公演大千秋楽を見届けたのと同じ11月27日、帝劇で『モーツアルト』を観劇しました。

一年前と自分の状況はすっかり変わりました。
クロをシロだと言っているものにクロだと認めさせるためのはかりしれない困難な道のりを歩み続けている中で、生きていくことは本当にむずかしいなとあらためて感じる舞台でした。
筋を丁寧に追って理解しようとしながら観ていたので、けっこう頭を使いました。
いろいろと思うものがあるので少しずつ書いてみようと思います。

『エリザベート』『レディベス』を創り上げたクンツェさん、リーヴァイさんの作品。
演出は小池修一郎さん。

ヴァルフガング・モーツアルト:井上芳雄
レオポルト(モールアルトの父);市村正親
ナンネール(モールアルトの姉):花總まり
コンスタンツェ(モールアルトの妻);平野綾
ヴァルトシュテッテン男爵夫人:香寿たつき
コロレド大司教:山口祐一郎
コンスタンツェの母:阿知波悟美
コロレドの部下:武岡惇一
シカネーダー(劇場の支配人):吉野圭吾


宝塚出身の方、『レ・ミゼラブル』や『レディベス』に出演されていた方々がたくさんいて、贅沢なキャスティングでレベルの高い舞台だったと思います。

井上さんを初めて観たのは、一路真輝さんが主演をつとめた2000年の東宝『エリザベート』初演のルドルフ役。
当時のパンフレットには、「東京芸術大学声楽科に在学中、応募者1000人のオーディションの中から選ばれた。180センチの長身とソフトで甘いマスク。期待感いっぱいの新人」と紹介されています。
それから『モーツアルト』など数々の舞台に出演されているのを知りながら、私が勉強と二人分労働の日々が数年にわたって続いたために観ることはありませんでした。
(有楽町界隈で井上さんらしき人を見かけたことはあります。2012年の『エリザベート』を観にいったとき、たまたま帝劇の楽屋前でもお見かけしました。エリザベート出演者の入り待ち・出待ちをしている女性に背をかがめて丁寧に話をされていました。)

2012年7月に『ルドルフ・ザ・ラストキス』を観劇したとき、堂々と帝劇を背負って主役をつとめる役者さんに成長されたんだと感慨深いものがありました。
そして今回の『モーツアルト』、5回目だそうですが、モーツアルトが夭逝したのと同じ35歳になったのでモーツアルト役をこれで卒業されるとのこと。わたしにとっては初観劇になります。
ルドルフとはキャラクターが違いますが、生きづらさを抱えているという意味で通じるものがあるように思いながら観ていました。すごくむずかしい役・・・。
これまでの井上さんの役者人生の積み重ねがそのまま、神様から与えらえた有り余る才能をもてあまし、周囲のおだてに弱く観ているものにもどかしさを感じさせる、神童と呼ばれた子供時代の影アマデと共に苦悩しながら生きるモーツアルト像にそのまま表現されていたと思います。
モーツアルトはスニーカーをはいて自在に舞台を飛び回る演出、井上さんの長い手足が映えていました。
常にモーツアルトの影のように一緒に舞台に登場するアマデはセリフも歌も一切ありませんが、子役ちゃん(女の子)の仕草と表情だけの演技も素晴らしかったです。


宝塚の雪組でエリザベートを演じた花總まりさんとルドルフを演じた香寿たつきさんが、同じこの舞台に立っているというのもなんとも感慨深いものがあります。

花總さん演じるナンネールは、弟がプリンス、自分はプリンセスと呼ばれ才能がありながら、女性であるが故に弟を陰で支えた役。大きな発散できるような見せ場も歌もなく、辛抱のいるむずかしい役です。
花總さんは金髪がよく似合っていて可愛らしく、10代の頃ははつらつとしている雰囲気をよく出されていたと思います。市村正親さん演じるモールアルトの父レオポルトと二人で歌う場面に、この舞台は、モーツアルト一家の葛藤の物語、親子の葛藤の物語でもあるんだと感じました。
花總さんがこういう役を演じられるのは初めてだと思いますが、よくこなされていると思います。モーツアルトがウィーンに行ってしまったあと、ピアノに向かう神童モーツアルトのお人形に目隠しをして歌う場面など、切なくてたまりません。


香寿たつきさんのヴァルトシュテッテン男爵夫人、豪華なドレスを美しく着こなされて、歌と演技の安定感は見事でした。5月にセレブレーション宝塚では長い髪を束ねて男役に戻っていたのはうそのよう。どの舞台でも安心して観ていられます。「星から降る金」のナンバーが心に残ります。


まだまだ書きたいですが今日はここまで。
写真は初日の囲み取材の様子、東宝の公式ツィッターより転用しています。