クリント・イーストウッド監督の映画アメリカン・スナイパーを昨日、アカデミーの審査員気分で観賞してきました。
かつてのアメリカ映画の中でベトナム戦争をテーマにした数々の秀作が生まれました。今は、イラク戦争をテーマにした作品のハートロッカーなどに代表されるようにオスカー候補に毎年のように挙がってきます。
今回のアメリカン・スナイパーもそんな有力候補の一つでしたが、今回はタイミングを逸した結果だと感じます。ただし、イーストウッド監督は、決して賞などを望んではいなかったように思えます。それほどに、イラク戦争を描いた作品として、終止符を打ったのではと思うのです。
イラクで160名もの敵を殺した伝説の狙撃手・クリス・カイルの伝記を実写化した本作は、狙撃と言う単純かつ高度な技術を要する方法で敵を倒した男に焦点を当てたところが今までの戦争映画とは異なる点だと思います。
そして主人公カイルの国家に対する愛が9・11により芽生え、家族を持ったことで家族愛への板挟みとなり、戦友を失いその仇を取ることができる戦地への愛の3つの愛のはざまの中で矛盾を抱えながら戦う心の葛藤が緻密に描かれています。
そして伝説のスナイパーとして生きなければならない英雄としての宿命をラスト共に描き切っていて敵と味方を超えて戦争とは国家とは家族とはと観る人に問い続けているような作品でした。