生まれた時に37秒を息をしなかったことで全身に障害を抱えた23歳の女性を主人公に展開される異色作、映画「37セカンズ」を観てきました。
今回の映画は、NHKの朝のラジオ番組のゲストで監督のHIKARIさんがゲストで出ていて、そのインタビュー内容が記憶にあり、上映タイミングを逃す寸前で鑑賞できました。
内容は生まれた時に37秒呼吸が出来ず手足に障害を抱えた23歳の主人公女性の日常から生まれた冒険活劇。2016年にサンダンス映画祭とNHK主催の脚本ワークショップで選ばれ2019年に映画化に進んだ異色作で、ベルリン映画祭でパノラマ観客賞と国際アートシネマ連盟賞の2冠に輝いています。また、今回の脚本監督のHIKARIは、今回の作品が長編監督デビュー、本作でハリウッドも注目する新鋭女性監督です。
過保護の母を持つ主人公のユマは、友人の漫画家ユーチューバーのアシスタントして働いているのですが、実はゴーストライターで密かに漫画家として自立したいと思ってます。ある日公園でふと目に留まったエロ漫画を拾い原稿を出版社に持ち込みます。編集長からリアリティーがないと指摘されたユマは、そこから、ユマが知らなかった未体験ゾーンへと突き進んでいきます。
ウォンカーウエイ監督の思い起こさせる映像美、主人公の目線で追う昼と夜の世界、彼女を取り巻く様々な人々の感情など彼女の様々な体験が常識を越えて動き出す面白さ、そして彼女と母親の関係がドラマとして動き出す濃密なストーリー。どこをとっても飽きることのない完璧な仕上がりで、まさに一人の女性のキラキラとした青春活劇です。
ラジオでのインタビューでも述べられてましたが、監督自身が1981年に公開された松山善三監督によるサリドマイド児の典子を主人公に制作されたセミドキュメンタリー映画の「典子は今」の影響を受けたこともあり、今回の主人公に同じ障害を持つ、佳山明を抜擢し、母親役を演じた神野美鈴さんとの共同生活でよりリアリティーある作品に作り上げています。初めての演技で挑む明さんが障害者のリアルを体当たりで演じていて、そのすごさに心奪われます。そして出会いの人々を演じる俳優陣が彼女を中心に生き生きと楽しく演じているように思いました。
久しぶりに笑って泣いて、すごいなと思った日本映画、個人的には2020年キネマ旬報ベスト1です。ぜひ、劇場で体験してみてください。