映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は2011年のカンヌコンペティション招待作品で河瀬直美監督の「朱花の月」です。
奈良の奥飛鳥で木工作家として自分の居場所を見つけ出した拓未が、同級生だった加夜子と出会い、二入は愛し合うようになります。
加夜子には、同棲相手の編集者の恋人がいるのですが、加夜子は、密会を続けます。二人には、愛し合いながら添い遂げることができなかった祖父と祖母の過去があり、二人はその思いを遂げようと幸せな時を過ごします。しかし、加夜子が拓未の子を身ごもることで、幸せの日々に漣が起こり、やがて大きな渦へ変化していきます。
この作品のテーマは、万葉集にある男女を大和三山にたとえて、一人の女を二人の男が奪う合う古の物語。その和歌には、男女の情愛の永遠が描かれています。
静かに繰り広げられる情愛と過去と現在が飛鳥の郷で交錯し、幻想的に流れていく叙情的な世界が展開されていきます。ラスト迎える悲恋も自然の中に溶け込み儚くも美しく感じられました。