ハンガリー映画でホロコーストで生き残った16歳の少女と42歳の医師の愛ある物語「この世界に残されて」を鑑賞
僕の映画におけるライフワークであるホロコーストをテーマにした作品の中で、今回の作品はかなりの異色作です。まずは、ホロコーストのその後を描いていること。そして今回の作品がハンガリー映画であることです。
舞台は第2次大戦後のハンガリー。両親と妹を失った16歳の少女クララと42歳の医師アルド。婦人科医のアルドの元にある日クララが診療に訪れます。寡黙な医師アルドにクララは自分と同じものを感じ取り、彼に近づこうとします。養母とうまく付き合えないクララをアルドは、養父となり二人の共同生活がスタート、しかし戦後ソ連の支配下におかれたハンガリーで二人の生活は容易ではなく、様々な障害が二人を取り込んでいきます。
今回の作品は、16歳の少女と42歳に男とに芽生えた恋心であっても決して禁断の恋を描いたものでもなく、また二人の置かれた状況が一変するような劇的な内容でもありません。さらに当時のハンガリーの置かれた政治的な状況を詳細に語るものでもないです。
ホロコーストの生き残りとなった二人の苦悩を二人の交わりの中で静か繊細に表現しています。お互いを慈しみ愛する二人から観る者の想像を超える幸福へと導いていきます。重いテーマをこれほどまでに切なさと美しさに包み込んだ作品はないと思います。クララの成長とアルドの深い愛をぜひ感じてほしいと思います。