役所広司主演、告白の中島哲也監督の最新作。「渇き。」を観賞
初めに断っておきたいのですが、全編に暴力や性描写などあふれている作品です。生理的な問題ととして耐えられない人は観ないほうがいいと思います。
ただ、現実の世界に存在するであろう表裏一体の世界をここまで描ききり、エンターテーメントな空気をも取り込んだ作品は珍しいと感じました。
妻の不倫相手への傷害事件で刑事を退職し妻と離婚し自堕落な生活を送っている藤島にかつての別れた妻から娘の加奈子が失踪したとの電話が入ります。一人で加奈子を捜すことになった藤島は、彼女の身辺を探るうちに彼の知らない加奈子の正体が明らかになっていくもの。
加奈子の正体を示す現在と過去の交錯や、加奈子に関わるクラスメート、医者、刑事、やくざなど、その存在が強烈で、目を覆いたくなるようなシーンの連続ですが、音楽やアニメーション、カーアクションなど加わってスピード感のある展開がくぎ付けになります。
そして、よくぞここまで揃えたキャストの濃度。藤島を演じる役所広司のクソオヤジと今回スクリーンデビューを飾った加奈子役の小松菜奈の天使と悪魔を合わせもつ少女の演技に圧倒され、この二人にかかわる人間たちの狂乱振りに、ただただ絶句するばかりでした。
渇き。は、全員悪人の様相を呈しているのですが、今回の監督が描こうとした意図をサイトを通じて述べられています。中島監督がテーマとした父と子の愛憎劇を感じられたら、この映画はグロだけでは語れない作品となると思います。