映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回はキネマ旬報ベスト・テンから「彼女の人生は間違いじゃない」です。
2011年に起こった日本大震災。今もなお、この震災をテーマにした作品があるのは、この震災が単なる地震災害だけにとどまらない問題を抱えているのように感じます。
今回の作品も、そうした問題を数多く抱えながら進むのですが、この作品の大きな特徴は、そこに暮らす人々の人間模様をつぶさに、また大袈裟に表現することなく進んでいく点です。
さよなら歌舞伎町やヴァイブレーターの廣木隆一監督が、震災後に妻を失い、汚染で農業が出来ず仕事をしない父にかわり役所勤めと週末にデリヘルのバイトで生計を支える主人公・金沢みゆきを中心に同僚や仮設住宅に住む人々の日常を絡ませながら被災者の人間模様を淡々と描いています。
登場する人物を演じる人々は、中堅から若手まで実力のある俳優陣で、演技力には定評がありながら、市井の人々の空気が漂い、その自然体の演技で驚かされます。
キネマ旬報ベスト・テン7位が証明するように、人間ドラマとての完成度も高く、監督の代表作2作のように風俗的な要素をうまく取り入れながら、震災という予想だにしない出来事が降りかかっても、生きる選択を選んでいる人々への静かな励ましを感じました。