映画館で観れなかった作品をDVDで観るシリーズ。今回は、イギリスの巨匠ケン・ローチ監督のカンヌ映画祭パルムドール受賞作「わたしは、ダニエル・ブレイク」です。
最近高齢の男性を主人公にした人間ドラマが数多く生まれていますが、今回の主人公も介護の妻を看取り、自らも心臓を患った男が、福祉のシステム化により、不遇を味わう男が、シングルマザーの貧しい家族たちの触れ合いの中で弱者の代弁者として戦う姿を描いています。
ケン・ローチ監督は、イギリスで行われている福祉行政の民営化やシステム化により取り残された人々の課題を主人公のダニエルを通じて淡々と描いてます。そこはかとなく時間が流れ、最初は、パソコンが苦手な偏屈なオヤジのように思いましたが、彼は発する言葉に次第に共感を持ち、笑いの中に不遇を強いられている人々の代弁者として説得力を強めていきます。
終盤に起こす行動には誰もが拍手を送り、ラストのメッセージに人間としての生きるための最小限の尊厳を感じ涙にむせびました。
合理化が進む行政サービス。どの国にも当てはまることです。一方では、利便性をもっていますが、その利便性に戸惑う人々もいることも確かです。市民としての義務を果たしながらも、その利便性の恩恵を受けるこが出来ない市井の人々に光を当てることが真の行政サービスだと、この作品は静かに語っています。