6年ほど前にアメリカであるセミナーに参加していたときに、参加者の最年少である17歳の男の子と仲良くなりました。趣味は映画制作と催眠術。どちらも半端なくセンスがよく、今は映画制作の仕事をしていますが、おそらく私が経験した中で一番深い催眠に導いてくれた人です。言うことも発想も天才的で斬新でした。こんな17歳がいるからアメリカは面白い、と久しぶりの良き出会いに感謝していました(彼はカナダ人でしたが)。
しかし彼は、片方の耳が聞こえなかったのです。あまり人の顔を正面から見て話すような人ではなかったのですが、特にバランス感覚が悪いようにも見えず、あまり支障はないようでした。しかしそれを何とか治したいとは思っているようでした。
参加しているセミナーは神経言語プログラミング(NLP)という、言語による中枢神経等への作用を体系化したような学問の認定セミナーでした。教えるのは55歳の大ベテラン、その道では名前を知らない人はいないような人でした。自信過剰に見えるが、それが貫録ともとらえられるから周りが良しとしてしまうような人です。
そんな彼にセミナー中、17歳の少年が質問をしました。「僕は片耳が聴こえないんです。これがNLPで治ったら、NLPの効果を100%信じれます。なんとかなりませんか。」
驚くような返事が返ってきました。「こうやってなにかを治したら信じるという人は多いものだ。私は正しいものだと知っているし、別にあなたに信じてもらわなくてもいい。誰かに証明したくてやっているのではない。他のみんなも、こういういちゃもん相手にしなくていい」、と。
これはさすがにないだろう、と思ったのですが、さすがプロ、返事をさせる暇も与えず次の質問を受けてしまいました。これでは反論ができません。私も血が蒸発するような思いになりました。
そして休憩時間に入り、やはり一言いいたい、少年に対して謝ってもらいたい、と思って先生に話に行きました。そうすると少年が先に辿り着いて、二人で部屋の外に出て行ってしまいました。
気になって少し近づき、バレないように話を聞いてみました。やはり17歳だったわけですし、自分も怒ってはいましたが殴りかかったらやはり止めようと思いました。
しかし殴りかかる様子はありませんでした。怒鳴りすらせず、落ち着いているが力強い声でこう言っていました。
「別に治してほしいと言ったわけではない。しっかり自分で治してみせる。でも、あんな失礼なことを言われたのは生まれて初めてだ。そしてあなたに謝ってもらう必要もない。」
有名な先生に率直な意見を述べ、気持ちを抑え、怒っていても他人に聞こえないように配慮して場所を移し、自分でなんとかする決意を持ち、誤ってもらっても耳が治るわけでもないし意味がないと考えていた・・・私の脳内にはいろんな意味での感動が競い合っていたようでした。「おまえの勝ちだ・・・。」そう心の中で思いました。
もっとも、彼はそんなことで喜びはしませんが。
しかし彼は、片方の耳が聞こえなかったのです。あまり人の顔を正面から見て話すような人ではなかったのですが、特にバランス感覚が悪いようにも見えず、あまり支障はないようでした。しかしそれを何とか治したいとは思っているようでした。
参加しているセミナーは神経言語プログラミング(NLP)という、言語による中枢神経等への作用を体系化したような学問の認定セミナーでした。教えるのは55歳の大ベテラン、その道では名前を知らない人はいないような人でした。自信過剰に見えるが、それが貫録ともとらえられるから周りが良しとしてしまうような人です。
そんな彼にセミナー中、17歳の少年が質問をしました。「僕は片耳が聴こえないんです。これがNLPで治ったら、NLPの効果を100%信じれます。なんとかなりませんか。」
驚くような返事が返ってきました。「こうやってなにかを治したら信じるという人は多いものだ。私は正しいものだと知っているし、別にあなたに信じてもらわなくてもいい。誰かに証明したくてやっているのではない。他のみんなも、こういういちゃもん相手にしなくていい」、と。
これはさすがにないだろう、と思ったのですが、さすがプロ、返事をさせる暇も与えず次の質問を受けてしまいました。これでは反論ができません。私も血が蒸発するような思いになりました。
そして休憩時間に入り、やはり一言いいたい、少年に対して謝ってもらいたい、と思って先生に話に行きました。そうすると少年が先に辿り着いて、二人で部屋の外に出て行ってしまいました。
気になって少し近づき、バレないように話を聞いてみました。やはり17歳だったわけですし、自分も怒ってはいましたが殴りかかったらやはり止めようと思いました。
しかし殴りかかる様子はありませんでした。怒鳴りすらせず、落ち着いているが力強い声でこう言っていました。
「別に治してほしいと言ったわけではない。しっかり自分で治してみせる。でも、あんな失礼なことを言われたのは生まれて初めてだ。そしてあなたに謝ってもらう必要もない。」
有名な先生に率直な意見を述べ、気持ちを抑え、怒っていても他人に聞こえないように配慮して場所を移し、自分でなんとかする決意を持ち、誤ってもらっても耳が治るわけでもないし意味がないと考えていた・・・私の脳内にはいろんな意味での感動が競い合っていたようでした。「おまえの勝ちだ・・・。」そう心の中で思いました。
もっとも、彼はそんなことで喜びはしませんが。