【社説①】:嘉手納降下訓練 米軍の身勝手許されぬ
『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説①】:嘉手納降下訓練 米軍の身勝手許されぬ
在日米軍が沖縄県の嘉手納基地で、パラシュート降下の夜間訓練を実施した。
防衛省、県、地元自治体の中止要請を無視しての強行であり、看過できない。
降下訓練は1996年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告で、伊江島補助飛行場(伊江村)に集約することで合意した。
市街地に囲まれた嘉手納での実施は、2007年の追加合意で「例外的な場合」に限っていた。
にもかかわらず、今年の嘉手納使用はすでに4回目だ。SACO合意後の年間回数としては最多となった。例外的ではなく、常態化させたい米軍の意図が透けよう。
SACO合意は沖縄の基地負担軽減が目的である。これに反する米軍の身勝手な対応を許してきた日本政府の責任も重い。
言うべきことを言ってこなかったのではないか。河野太郎防衛相は米側と閣僚レベルで協議する考えを示したが遅すぎる。
降下訓練で米兵が基地外に落下すれば、重大事故につながりかねない。沖縄復帰前の65年には、読谷(よみたん)村で女児がパラシュートで投下されたトレーラーに押しつぶされ、死亡した事故もあった。
それだけに沖縄では降下訓練への反発が根強い。
米軍は防衛省に対し、伊江島の気象、海象条件が悪くなる見込みだったことを理由に、嘉手納での実施を通告していた。
しかし、訓練のあった日、伊江島は晴天だったという。河野防衛相が「(今回の)天候は例外事由に当たらない」として、合意違反との認識を示したのは当然だ。
さらに日本側が不信感を募らせているのは、同じ日の昼間に伊江島でも降下訓練を実施していたからだ。悪天候で伊江島の訓練は中止されるはずではなかったのか。
この訓練で米兵2人が誤って米軍施設以外の畑などに降下したことで、嘉手納と伊江島の2カ所での同日実施が明らかになった。
つじつまの合わない説明には到底納得できない。
だが、在日米軍司令部は「2国間の協定に完全に準拠している」と主張している。米側が都合よく運用できる余地があるならば、見直して厳格化する必要があろう。
在沖縄米軍を巡っては今年8月、大型ヘリから窓が落下し、先月中旬には特殊作戦機から主脚の一部が落下するなど、航空機のトラブルが相次いでいる。
米軍に対しては装備の安全管理の徹底についても強く求めたい。
元稿:北海道新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】 2019年11月04日 05:00:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。